「日本の個人番号カード」に思う
発行でトラブル続きだという日本の個人番号カード(マイナンバーカード)。
少し古い記事だが、こんなに使いこなしている国もあるという。
「(ワールドけいざい)税申告・投票…IDカード1枚 エストニア「電子政府」サービス
バルト3国のひとつのエストニアでは、税の申告や投票、会社の設立登録や薬局での薬 の受け取りが、一つのIDカードで済ませられる。日本の「マイナンバー制度」に似た、国民番号制度が定着しているためだ。政府は国外に住む外国人にもサービスを使えるようにし、企業誘致にいかそうとしている。
■労働時間短縮、GDP2%分の試算
首都タリンの薬局では、客が差し出したIDカードを読み取るだけですぐ に、医師が発行した電子処方箋(せん)と客に渡す薬が、薬剤師のパソコン画面に映し出された。薬剤師のマーラ・ニグラスさん(31)は「いちから情報入力の必要がある紙の処方箋に比べ、お客さんの待ち時間もずっと少なくて済む」と話す。いまは9割以上が、IDカードで済ませるという。
これも「電子政府」のサービスによるものだ。行政への申請手続きは電子化され、役所や公的機関、薬局や病院が必要な情報をやりとりできる。病院では患者が別の病院で受けた治療歴もすぐ調べられる。医師のクリスティーナ・ポルドさんは「別の病院にわざわざ問い合わせる必要はなくなった」と喜ぶ。
電子政府づくりは、1990年代後半に始まった。旧ソ連から独立を回復し、国の立て直しが本格化したころだ。ICチップ入りのIDカードは、2002年から。15歳以上は所持が義務づけられ、約9割の国民が持つ。政府のポータルサイトからは税金の申告や会社登録などの申請ができ、所得税の還付手続きは通常、数分で済むという。ICチップの情報を入れた携帯端末でも操作できる。
インターネット上で本人の意思を確認できる電子署名機能を活用して、05年には電子投票を始めた。昨年の議会選では投票した人の約3割が利用した。電子署名はインターネットバンキングや企業の電子契約書へのサインにも使われる。紙のやり取りが減り、労働時間が短縮されて、国内総生産(GDP)の2%分を別の仕事にまわせるとの試算もある。
■外国人も2日以内で起業
政府は14年12月、国外で暮らす外国人も電子政府サービスを使えるようにした。「電子住民」になれば、2日以内で必要な企業の設立登録ができるという。エストニアはEU加盟国で、欧州の共通通貨ユーロを使う。国外の起業家が現地で企業を設立すれば、28カ国が加盟するEU域内で取引がしやすくなる。
ITコンサルタントのスタニスラフ・ユリンさん(34)は、電子住民のひとり。EU域外のウクライナの首都キエフにいるが、昨年10月、エストニアでIT企業を起こした。「電子サービスで取引上の手続きが簡単。ウクライナは規制が厳しいから」と言う。
電子住民は2月の時点で約9千人、設立した企業は約340社にのぼり、年内に1500社を見込む。エストニアで、進出する起業家を支援する会社を開いた小森努さん(41)は、これまで日本から約10社の設立を支援したという。
政府は電子住民を増やそうと、現在は日本を含む約40カ国にある在外大使館での申請窓口を、年内に200カ国以上に増やす。現地で銀行口座を開くには、いまは原則、一度は本人がエストニアに行く必要があるが、この夏以降はネットだけでできるという。
新たなサービスを模索する動きもある。証券取引所に上場する企業の株主が電子住民なら、その企業の株主総会でネット投票ができるしくみをつくれないか。タリンで取引所を運営するナスダックは、実現に向けた試験を年内に始める。
国外へのオフィス移転や移住を考える人に、世界各地の生活情報などを提供するIT企業「テレポート」のステン・タムキビ最高経営責任者も「電子住民は、国際的にビジネスの機会を探す企業経営者も多い」と、客が増えていくことを期待する。
■データベースを分散 個人情報保護・サイバー攻撃防止
エストニアでも、政府の情報管理を懸念する声はあった。システム開発に携わったIT企業のサイバーネティカによれば、サイバー攻撃を受けたことは過去にあるが、個人情報の流出の大きな被害はないという。
システムには、役所など900以上の機関がつながる。一つの巨大なデータベースをつくらないのは、プライバシーを保護し、サイバー攻撃を防ぐため。各機関が管理する個人情報を、事前に決められた範囲のなかでやり取りするしくみという。医師が発行する処方箋を管理するセンターには、薬局は客のIDカードがあればアクセスできるが、政府でも関係がなければアクセスできない。
カードを持つ人はポータルサイトで、自分のどの情報をだれが閲覧したのかを確認でき、心当たりがなければ通報できる。個人番号は隠さない。カードと暗証番号がそろわないと、個人情報にはアクセスできないと理解されているからだ。
政府の最高情報責任者のタービー・コトカさん(36)は「人口に対して国土は広く、行政運営を効率化する必要があった。政府の取り組みに批判もあるが、やらないといつまでも(効率的な)電子化の世界に入れない」と説明する。(タリン=寺西和男)」(2016/03/27付「朝日新聞」p7より)
個人番号カードの是非については、色々な意見がある。しかし日本では既にスタートしている。だったら、より便利になるはず・・・だが、どっこいなかなかうまく行っていないようである。
3つほど例を挙げる。
先日、ある役所に手続きに行ったら、免許証と個人番号カードが必要だという。仕方なく両方を持って行ったら、個人番号カードに写真があるため、それで本人確認が出来るはずが、カードでは番号だけ見て、改めて免許証で本人確認をしていた。
個人番号カードは、免許証に代わって証明出来るはずだが、現場ではまだまだそれが分かっていないようで、全ては従来通り・・・・。
2つ目。ある市役所から、1年半前に亡くなった人宛に、ある請求書が届いた。その担当部門に「死者に請求書が来た」と電話すると、恐縮しながら「返信用封筒を送るので返送してくれ」とのこと。同じ市役所で、死亡届を出したのに、横のつながりはどうなっているのか?
亡くなった情報は、市役所内でコンピュータ上、共有されていないのか??
3つ目。ある市役所から、請求書が届き、少し期限を過ぎたら、矢の催促の電話。
先日、市役所から手紙が来て、「本来免除されるべき金額なので、手続きの書類を送るので、署名捺印して返送してくれ。今まで納入された金額を全額返金する」とのこと。
これも横のつながりが無かったせいか・・・
それにしても、市役所の対応のスピードは、通常のビジネスの世界とはかけ離れて遅い。全ての項目が細かく分かれて人に分散されており、他の人での代用がきかないようで、「担当者が居ないので分からない」となる。
こんな経験もある、死者への請求書を発行した部門のある担当者。本当に親身になって対応してくれ、我が家にとっては恩人とも言える人。その人が、“あまり熱心に対応したせいか?”他の部署に移ってしまった。
働き過ぎて、出る杭になったのでは?と心配したほど・・・
前大阪市長の橋下徹氏。あまり好きではないが、これらの役所の対応を見ていると、役所の職員に厳しかった橋下さんの姿勢に、今ごろ、拍手喝采をしたくなった。
ふと、我々の近くの役所でも、橋下さんのような首長が出て、果敢に改革してくれないかな・・・と思うこの頃。
個人番号カードが利用されて、役人の仕事が減っても、人員減とはならないだろう日本のお役人体質・・・。
自分もこの次に生まれてきたら、潰れる可能性のある会社ではなく、お役人を目指そう!?
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