大物・週3日登庁の石原都知事と、小物・舛添都知事の違い
今朝の朝日新聞にこんな記事があった。
「(THE HUFFINGTON POST)舛添知事たたきの功罪
医療ガバナンス研究所理事長・上昌広(かみまさひろ)さん
政治資金の私的流用などの問題を巡り、東京都の舛添要一知事への批判が強まっている。
「このような振る舞いは慎んでもらいたいと思う。また、政治家としての責任はとっていただきたい。ただ、同時に舛添知事を、このような理由でたたくことが、果たして納税者の利益になるのかは疑問を感じる」。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広さんは「『政治家・舛添要一』を正確に評価するために 厚労相時代の功績を振り返る」(18日)でそう訴える。
舛添氏が政治家として卓越した能力を持っていると、上さんは評価する。特に厚労相時代、日本医師会や官僚といった「抵抗勢力」と闘って成し遂げた医学部の定員増が際だった業績だと指摘。医療への社会的関心が高まっていたことに加え、舛添氏は「誠実に勤務する姿」によって部下の信頼を得たのだという。
上さんは「舛添たたきをすることは簡単だ。果たして、それだけでいいのか、納税者の皆さん、ぜひ、考えて頂きたい」と問う。(中野渉)」(2016/05/24付「朝日新聞」p12より)
世の中、桝添外し一辺倒。実は自分もそのうちの一人なのだが、上に記事を読みながら、同じように御神輿を担ぐのでは面白くない。桝添知事の足を引っ張るのではなく、押す記事はないかと探したら、こんな記事(ここ)が見つかった。
「ひらきなおれ!舛添要一
渡辺輝人 弁護士(京都弁護士会所属)2016年5月20日
舛添要一・東京都知事が、海外出張時の宿泊費の無駄遣い問題に始まり、公用車の乱用、都知事立候補時の政党助成金の流用、都知事就任後の政治資金の不適切な使用など様々な問題で追及されています。6月初旬からは東京都議会も始まるので、いよいよ、針のむしろに座ることになりそうですね。筆者は、舛添氏を擁護するつもりは全くなく、指摘されている問題が事実なら辞任止むなしか、と思います。しかし、舛添バッシングがここまで盛り上がった経過についてはどうにも納得いかない部分があり、他の事例との均衡から、いくつか指摘したいと思います。
「やりたい放題」は石原都政時代から
都知事の海外出張時の豪遊は以前から問題になっており、筆者が知っている限り、もっとも度が過ぎていたのは石原慎太郎氏が都知事だった時代です。当時、しんぶん赤旗は一生懸命追及していましたが、社会全体での問題にはついになりませんでした。石原氏の豪遊っぷりに比べると、舛添氏のなんてセコイくらいだと思います(だから許されるということではありません)。
【たとえば、2001年6月11~21日に行ったガラパゴス諸島(エクアドル)の視察。石原知事と二人の特別秘書など計8人で出張し、総額1444万円を支出しました。
~中略~
石原知事らは、エクアドル政府主催の昼食会などに出席した後、13日にガラパゴス諸島に入り、翌14日から18日まで4泊5日で、小型クルーザーと「ホテル並みの施設」(旅行会社ホームページ)を備える大型クルーズ船「サンタクルス」号で、ガラパゴス諸島を周回しました。
出典:2006年11月16日しんぶん赤旗「石原東京都知事 税金使った“海外旅行”豪遊 1回平均2000万円」】
公用車の乱用についても、確かに、別荘くらい自分の車で行けよ、恥を知れ、と思うわけですが、これも週3日しか都庁に来なかった石原慎太郎氏に比べると都庁に出勤するだけマシなんじゃないかとすら思えます(だから許されるわけではありません)。
舛添氏を追及するのであれば、一緒に、石原慎太郎氏の数々の所行も追及すべきなんじゃないかなと思います。法律と違い、政治責任に時効はありませんので。
政党助成金の流用は立候補時から指摘されていた
舛添氏の新党改革時代の政党助成金等の不正な流用についても、政治資金オンブズマンの活動で有名な上脇博之・神戸学院大学教授が、2014年2月の都知事選前の時期からずっと指摘していたことです(下記記事参照)。ドリル優子こと小渕優子氏の件などをみても、選挙前に指摘されていた「政治と金」問題は、当選すると“みそぎが済む”のが政権与党界隈の考え方のように思えるので、舛添氏にだけ潔白を求めるのが突出してみえます。なのでドリル氏や下村博文氏についてももっと突いてはどうでしょうか。そういえば、安倍首相の献金禁止企業からの政治献金問題や、地球13週分のガソリン代の問題もいつのまにかどこかへ行ってしまいましたね。後者についてはつい1ヶ月半ほど前の話で、支援者に対する利益供与の可能性すら指摘されている(週刊朝日2016.4.13)だけに、本来は捨て置けない問題のはずです。ガソリーヌ山尾こと民進党の山尾志桜里議員が、秘書を追及する、と言った記者会見の続報がいつまで経っても出てこないことも合わせ、丹念な報道が求められます。
上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場
「新党改革」(舛添要一代表)の借入金2億5000万円の違法返済問題
「新党改革」(舛添要一・代表)のマネーロンダリングにおける「グローバルネットワーク研究会」(舛添・代表)の重要な役割
甘利明・前大臣はどこへ行ったのか
不正な献金の話で言えば、最近ニュースになった話題で圧倒的にどす黒いのは甘利明氏の献金問題で、元検察官の複数の弁護士から、甘利氏やその秘書があっせん利得罪に問われる可能性すら指摘されています(拙稿「朝日・毎日は甘利氏の疑惑追及を幕引きしないと信じる」参照)。この件は、政治家が自分で集めたお金のセコイ流用の話ではなく、ワイロ性すら想定される話なので、問題の質がずっしりと重くなります。当の甘利氏は、国会には出てこない一方で、地元では元気に活動している、という指摘も一部にあり(日刊ゲンダイ「国会サボリの甘利氏も真っ青 地元で“落選させる会”が発足」)、舛添氏に対する疑惑と比べても、捨て置けない問題なのではないかと思います。
オリンピック招致の2億円問題は都議会でも追及されるべきでは
6月初旬には、東京都議会が開催されるようです。今の展開だと、火だるまになった舛添都知事が、その前後に辞任に追い込まれる可能性もあり得るように思います。しかし、それで脇に追いやられてしまう可能性があるのが、2020年の東京オリンピック招致に絡む2億円の「コンサル料」問題です。
この「コンサル料」については、フランスで捜査当局が捜査に乗り出す一方で、日本ではJOC(日本オリンピック委員会)竹田恒和会長が、すでに存在しないと報道されているコンサル会社相手の守秘義務を楯に契約書の公開を拒否する法的には奇妙な展開の中で、主務大臣である馳文科大臣が早々に火消しを始めており(2016.5.17産経「東京五輪 馳文科相「核心に触れる情報必要だった」 コンサル料の妥当性強調」)、日本政府がこの問題を深める気がないのは明らかでしょう。
この点、「コンサル料」を支出したオリンピック招致委員会は東京都とJOCが中心になって結成されていたところ、東京都は、平成24年度、平成25年度に合計して33億円余の税金をオリンピック招致につぎ込んでいると思われ(東京都のHP:PDFなので注意)、25年度については使用途が「テクニカル・プレゼンテーション IOC総会での最終プレゼンテーション等」とされています。使用途として示されている時期が、「コンサル料」の支払いの時期と一致しているのです。この2億円の「コンサル料」については、出所が一向に明らかにならない点も含め、不自然な点が多すぎます。都民の税金が万一「コンサル料」に使われていないか、または、関連する他の不正な用途に使われていないか、都知事・都議会を挙げてチェックすべきと筆者は思うのです。オリンピック開催となれば、都民の税金のみならず、多額の国税が投入される祭典となるわけで、“言い出しっぺ”である都知事・都議会の責務は重大です。ところが、舛添氏のカネの問題で6月議会が紛糾すれば、この件がどこかへ吹き飛んでしまう可能性は大いにあるでしょう。
ひらきなおれ!舛添要一さん!
このような諸処の事情を鑑みると、舛添氏があっさり辞任する展開は、好ましくないように思います。まずは自身の疑惑について説明責任を果たしつつ、「政治と金」問題の先達たちに「貴方たちも同じ穴の狢じゃないか。何で私だけ火だるまなんだ」と開き直り、“ガソリンに火をつけて回る” のが、公平・正義の観点から重要と思います。オリンピック招致を巡る問題は、舛添氏就任前の問題であるだけに、本来的には追及しやすい立場のはずです。辞めるのであれば、せめて「コンサル料」に関する都の見解を明らかにしてからにして頂きたいと思います。まかり間違っても、舛添氏辞任と参院選で、オリンピック招致の問題が何やらうやむやになる超絶展開だけは止めて頂きたいと思います。」(ここより)
読んでいて、何とも小気味よい。
指摘していることは、公正に読める。
その他に、下の記事(ここ)が痛快だ。
「舛添より酷かった石原慎太郎都知事時代の贅沢三昧、登庁も週3日! それでも石原が批判されなかった理由(2016.05.09)
・・・・・・
さらに言えば、舛添都知事は「湯河原へ行っているときに大地震が起きたら指揮がとれないだろ!」と糾弾されているが、実は、石原氏にいたっては、都知事でありながら登庁すらせずに、たびたび“行方不明”になっていたという。
「サン毎」は04年1月25日号で石原氏の「勤務実態」についても追及しているのだが、入手した公文書によれば、石原氏の“出勤”は週平均でわずか3日程度。また、公用車の運転日誌によれば、登庁日も自宅を出るのはだいたい午前10〜11時ごろだったという。
企業の相談役でも石原氏よりは“出勤”しているのでは?と思えるサボりっぷりだが、しかも問題は、知事日程表にしばしば登場する「庁外」なる文言だ。これは、知事の動向を職員たちが把握していない日を指す。つまり“動静不明”なわけだが、これが資料に記された1年間7カ月の期間で、なんと110日も数えられたという。
つまり、今、舛添批判のひとつとなっている「都知事が緊急時に連絡がつかない」という問題についても、石原氏はその“先駆者”と言えるのだ。いや、一応湯河原の別荘にいることが分かっている舛添都知事と比較してみると、職員らが行く先を把握していなかったという石原氏のケースは「危機管理」の観点から見ても、よっぽどトンデモだろう。
では、なぜ、目を爛々とか輝かせて舛添都知事を追及しているマスコミがあの時、石原都知事の問題を徹底追及しなかったのか。それは、石原批判が多くのメディアにとって“タブー”だからだ。
ご存知のとおり、石原氏は芥川賞選考委員まで務めた大作家であり、国会議員引退後、都知事になるまでは、保守論客として活躍していたため、マスコミ各社との関係が非常に深い。読売、産経、日本テレビ、フジテレビは幹部が石原べったり、「週刊文春」「週刊新潮」「週刊ポスト」「週刊現代」も作家タブーで批判はご法度。テレビ朝日も石原プロモーションとの関係が深いため手が出せない。
批判できるのは、せいぜい、朝日新聞、毎日新聞、共同通信、TBSくらいなのだが、こうしたメディアも橋下徹前大阪市長をめぐって起きた構図と同じで、少しでも批判しようものなら、会見で吊るし上げられ、取材から排除されるため、どんどん沈黙するようになっていった。
その結果、石原都知事はどんな贅沢三昧、公私混同をしても、ほとんど追及を受けることなく、むしろそれが前例となって、豪華な外遊が舛添都知事に引き継がれてしまったのである。
にもかかわらず、舛添都知事だけが、マスコミから徹底批判されているのは、今の都知事にタブーになる要素がまったくないからだ。それどころか、安倍政権の顔色を伺っているマスコミからしてみれば、舛添都知事は叩きやすい相手なのだという。
・・・・
舛添都知事の不正を暴くのは意味のあることだが、「マスコミもやる時はやるじゃないか」などと騙されてはいけない。強大な権力やコワモテ政治家には萎縮して何も言えず、お墨付きをもらった“ザコ”は血祭りにする。情けないことに、これが日本のメディアの現状なのである。(宮島みつや)」(ここより)
石原都知事は、1999年~2012年まで4選。つまり週3日出勤など、何をしても、都民は支持したという事。(なお、都知事の勤務時間は“決まっていない”そうだ。~2016/05/26TV朝日「羽鳥モーニングショー」による)
会社でもそうだが、誰も上の地位になるほど、自分の時間が無くなるもの。それが都のトップという最上位の立場でも、自分の時間を確保したというのは、まあ大物というか、公私混同の極みというか、言語を絶する。
上の記事のように、喝破することが出来るのは、Netの記事ならでは・・・
それに、今回指摘されているような“些細な!?”ことは、誰でもやっている事のような気がする。
誰も、たたけばホコリが出る。今度は、文春を向こうに回して、新潮あたりが、もっと大物の政治家をつかまえて、徹底的に調べれば、必ずドジは見つかる。
それが首相だったら、もと面白い。
おっと、日本のマスコミは“強大な権力やコワモテ政治家には萎縮して何も言え”なかったんだっけ・・・
新聞もテレビも総動員でお祭りをしている。それに国民が乗っかって・・・
これも、マスコミによる国民の扇動、と捉えると、何か背筋が寒い。クワバラクワバラ・・・
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コメント
結局、上に立つ人って、そんなもんですよ・・・
https://www.nhk-ep.co.jp/topics/eizonoseiki-premium-160516/
http://www.nhk.or.jp/bs-blog/2000/244988.html
今度はこういう感じで放送しますかw
さて、どんな出来になっているのかな?
【エムズの片割れより】
また新たらしい情報をありがとうございました。
投稿: マッノ | 2016年5月25日 (水) 23:01
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160611-00000001-pseven-ent
そりゃあ、街頭インタビューだと、時と場所によっては偏るのが当たり前です。
ですが、無理してでもバランスを取ろうとするから・・・
根源はやっぱり「自主規制」でしょうね・・・
【エムズの片割れより】
自分で判断するとしても、色々な材料は欲しい・・・。当家も朝日だけでなく、読売も読むべきなのですがね・・・
NHKニュースも例の会長の就任から、「ご用番組」と化してしまった。困ったモノ・・・
投稿: マッノ | 2016年6月12日 (日) 21:17