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2016年4月15日 (金)

「放送法遵守を求める視聴者の会」のTBS批判

先日の朝日新聞の社説。
TBS批判 まっとうな言論活動か
 TBSテレビが先週、「弊社スポンサーへの圧力を公言した団体の声明について」と題するコメントを発表した。
 この団体は、「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」というグループだ。TBSの報道が放送法に反すると主張し、スポンサーへの「国民的な注意喚起運動」を準備するとしている。
 TBSのコメントは、次のような要旨を表明している。
 「多様な意見を紹介し、権力をチェックするという報道機関の使命を認識し、自律的に公平・公正な番組作りをしている」
 「スポンサーに圧力をかけるなどと公言していることは、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦である」
 放送法の目的は、表現の自由を確保し、健全な民主主義の発達に役立てることにある。コメントは、その趣旨にもかなった妥当な見解である。
 声明を出した団体は、昨秋からTBS批判を続けている。安保関連法制の報道時間を独自に計り、法制への反対部分が長かったとして政治的公平性を欠くと主張している。
 しかし、政権が進める法制を検証し、疑問や問題点を指摘するのは報道機関の使命だ。とりわけ安保法のように国民の関心が強い問題について、政権の主張と異なる様々な意見や批判を丁寧に報じるのは当然だ。
 テレビ局への圧力という問題をめぐっては、昨年6月、自民党議員の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」などとの発言があった。政治権力による威圧であり、論外の発想だ。
 一方、視聴者が言論で番組を批判するのは自由だ。テレビ局は謙虚に耳を傾けなくてはいけない。だが、この団体は、放送法を一方的に解釈して組織的に働きかけようとしている。
 TBSの「誠意ある回答」がなければ、「違法報道による社会的な負の影響」への「加担」を防ぐ提言書をスポンサーに送ると通告。ネットでボランティアを募り、企業の対応によっては「さらに必要な行動をとる」とも予告する。これは見過ごせない圧力である。
 番組を批判する方法は様々あり、放送倫理・番組向上機構(BPO)も機能している。にもかかわらず、放送局の収入源を揺さぶって報道姿勢を変えさせようというのでは、まっとうな言論活動とはいえない。
 もし自律した放送局が公正な報道と権力監視を続けられなくなれば、被害者は国民だ。「知る権利」を担う重い責務を、メディアは改めて確認したい。」(
2016/04/13付「朝日新聞」社説より)

原文を読んでみた。
視聴者の会の「TBS 社による重大かつ明白な放送法 4 条違反と思料される件に関する声明」は(ここ)にあるが、あまりに冗長なので、調査結果を下記に転記すると・・・

「検討対象は、報道番組に限らずバラエティー番組も含め、24時間、安保関連法案が話題に上った全番組で、日付は平成27年9月13日日曜から20日日曜までの8日間である。
同期間におけるTBSの安保関連報道時間は13時間52分44秒、ストレートな事実報道と言えるのはその内7.3%、それ以外は何らかの意味での賛否の色のついた報道とみなされるので、それを全て「賛成」「反対」「どちらでもない」に分けて検証した。
その結果、「どちらでもない」を入れた場合、「どちらでもない」が53%、「賛成」が7%、「反対」が40%であった。「どちらでもない」を外すと、賛否バランスは賛成15%、反対85%である。時間に換算すると、賛成報道は58分17秒、反対報道は5時間12分であった。」

そして、このように要望している。
「◆TBSへの要望
1.この度の当会の調査結果に対して、放送法第4条の二及び四を遵守していると考えるか否か。遵守しているとの判断ならば、その根拠を明確に示すこと。
2.放送法第4条の二及び四に抵触したことを認めるのであれば、その責任を明確にし、再発を防止するため直ちに全社的な対応を取ること。
よく言われるように放送法第4条が「倫理規定」であるのならば、その「倫理」をこれだけ守れていない以上、視聴者、スポンサー企業に対し、法的、社会的責任を自らとることを強く要求する。
3.責任の取り方として、以下の対応を求める。
(1)第三者による調査・改善委員会の設置。人選については多様な立場の専門家で構成し、対立する見解を持った構成員を最低限保証すること。「お友達委員会」であってはならない。
(2)調査においては、安保報道全期間とし、放送法第4条に抵触する「違法性」の所在を自ら明確にすること。
(3)原因究明と再発防止のための具体的方針を明らかにすること。
*とりわけ、個別の番組、また放映曜日によっても多数の制作会社、人員が関わっているにも関わらず、なぜここまで局全体の論調が統一されてしまうのか、その構造的原因を明らかにすること。それができない限り再発を防げないと当会は考える。
(4)経営陣が辞任を含めた明確な形で引責すること。

以上に関して、取り組みの方向性を明示した「誠意ある」回答を4月8日までに発出するよう要望する。

BPO=(放送倫理・番組向上機構)への要望
1.この度当会が明らかにした時期の、安全保障法制をめぐるTBSの報道について、放送法第4条の二及び四に鑑みた違法性を確認すること。
2. 原因を究明し、再発防止のための具体的な勧告を出すこと。
BPOから誠意ある回答がない場合、予てからその存在に疑問の声があるBPOの実態について、当会として調査を開始し、国民にとってより納得のいく形の、真の第三者委員会の設立を目指す。

スポンサー企業への働きかけ
当会は、日本経済を支える優良な多数のスポンサー企業に対して圧力行動をとりたくはない。
しかし、TBSが上記要望に対して4月8日までに「誠意ある」回答を発出しなかった場合、一定の形式や節度を重視しつつも、国民的なスポンサー運動の展開を検討せざるを得ない。その場合は以下の手順をとるであろうことをここに予告する。
1、当該番組のスポンサー企業各社に対して調査報告を送付。
2.スポンサー企業が問題の所在を確認し、自らの判断により適切に対処することで、違法報道による社会的な負の影響(ネガティブ・インパクト)にスポンサー企業自身が加担するリスクを防ぎ、社会的責務・株主に対する責務をより良く果たせるよう提言書を添付。
3.放送事業者とスポンサー企業が協同して果たすべき社会的責任について、広く国民的な注意喚起運動を開始する。

国会への要望
放送制度の抜本的な見直しについて、以下の項目に関する検討、議論を要望する。
1.放送事業者、政府双方からの独立性を確保し、多様な国民の意識を反映した放送監督制度の確立。現状では、政府機関の、しかも独任制の大臣が監督処罰権限を持つために、実効性ある規制が言論・表現の自由の観点から困難であるという構造的問題がある。監督機関の独立化によりこれを解消すべきだ。
2.電波停止より手前の、現実的に適用可能な処分の新設。「金銭的制裁」など。アメリカ、イギリス、フランス等の規制機関には金銭制裁が存在する。
3.「電波オークション」導入の検討。現在、テレビ局全体の電波利用料負担は総計で34億4700万円。それに対し営業収益は3兆円を超える。電波の“仕入れコスト”は、営業収益のわずか0.1%ということになる。電波オークションの導入は、価値に見合った電波使用料の適正化と共に、事業者の入れ替わりを原理的に可能にすることで、既存の放送授業者が信頼性を維持向上する動機付けとなる。(電波オークションを行っていない国はOECD加盟34カ国中3カ国だけ、先進国では日本だけである。) 以上」(ここより)

それに対し、TBSの回答は、・・・
弊社スポンサーへの圧力を公言した団体の声明について
                 2016年4月6日
                 株式会社 TBS テレビ
弊社は、少数派を含めた多様な意見を紹介し、権力に行き過ぎがないかをチェックするという報道機関の使命を認識し、自律的に公平・公正な番組作りを行っております。放送法に違反しているとはまったく考えておりません。
今般、「放送法遵守を求める視聴者の会」が見解の相違を理由に弊社番組のスポンサーに圧力をかけるなどと公言していることは、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦であり、看過できない行為であると言わざるを得ません。
弊社は、今後も放送法を尊重し、国民の知る権利に応えるとともに、愛される番組作りに、一層努力を傾けて参ります。」(
ここより)

あまりに冗長でバカバカしい議論なので、マジメに読む気もしなかったが、TBSの回答は妥当。これでよい。

それにしても、安倍政権の批判をすると、「経営陣が辞任を含めた明確な形で引責すること」が必要なのだそうだ。これではまさに独裁国家。報道管制をする北朝鮮、中国と同じではないか・・・

そもそも「放送法遵守を求める視聴者の会」となどんな団体か?と、Wikiを見たら、これがまた凄まじいダラダラとした宣伝記事。
Wikiからも「この記事は広告・宣伝活動のような記述内容になっています。ウィキペディアの方針に沿った中立的な観点の記述内容に、この記事を修正してください。」と指摘されている。とても読む気がしない。しかしそこに記されている人たちの肩書きはたいしたもの・・・
しかし、Wikiがこのように、団体の宣伝に使われているのは許し難い。

ともあれ、これらの動きは、6月に自民党の大西英男衆院議員が「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番。日本を過つ企業に広告料を支払うなんてとんでもないと、(文化人の方は)経団連などに働きかけしてほしい」と語ったが、上の声明は、この大西議員の考え方が、単なる一議員の“失言”などではなく、団体として本格的な活動が始まった、という事らしく、ビックリ。
でもTBSの「相手にしない」「取り合わない」という姿勢に、ホッとしながら読んだ記事であった。

150415rotenn <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

こんなことをやっている団体があるのですね。恐ろしいことです。
我々国民がきちんと監視しないと北朝鮮や中国と同じになってしまいますね。
最近ホント冗談とは思えなくなってきました。

投稿: 常念坊 | 2016年4月16日 (土) 18:29

昔「ばかやろう解散」と言うのがありましたが、高市大臣の発言、甘利大臣の金銭授受などバカヤロウ発言よりひどいのに、自民党には全くの反省姿勢が見られない。こんな事が当たり前になっている政治家のゆるみ、これでは日本の民主主義が危うい。戦後やっと手に入れた民主主義が少しずつ消えて行くような気がします。歯止めをかけるのが選挙でしかないのでしょうか。国民はもっと怒っても良いと思います。その先鋒がマスコミであるべきなのに、マスコミにその気概がない。マスコミは中庸が良いと言う方が居られますが、中庸とは何なのかわかりません。悪いことは悪いのです。国民の権利を奪うものにもっと敏感になるべきだと私は思います。

【エムズの片割れより】
政権の暴走を止められるのが、唯一“地震”とは、何とも情けないことです。

投稿: 白萩 | 2016年4月20日 (水) 23:14

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160420-00000032-asahi-int
世界的に見ても、日本の報道の自由はどんどんと狭くなりつつあるようで・・・

それにしても熊本の地震、これまでの結果、震度7が2回。
本当に怖い・・・

【エムズの片割れより】
日本の実態は、海外の目を通さないと評価できない、という現実・・・

投稿: マッノ | 2016年4月20日 (水) 23:19

震災報道に関してこんな記事が。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160419-00000022-zdn_mkt-bus_all
確かに、被災者が頑張ってる姿って中々報道されませんよね・・・
「復旧」の時点では、まだマスコミも取り上げてくるのですが、
「復興」になってきた途端に「被害も無くなってきたからいいや」みたいに取り上げなくなりますよね・・・
被害ばっかり伝えても、「もうお腹いっぱい」という人もいるでしょうし・・・

【エムズの片割れより】
なかなか面白い記事でした。

投稿: マッノ | 2016年4月21日 (木) 22:53

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