歴代・テレビのニュースキャスター
今朝の朝日新聞にこんな記事があった。
「(文化の扉)ニュースキャスター 哲学や志まで、伝え方に個性
この春、報道番組の“顔”が相次いで交代します。キャスターという立場はアナウンサーとは何が違い、記憶に残るキャスターたちは役割や伝え方にどんな特徴があったのでしょうか。
キャスターとは、そもそも何者なのか。「言葉は定着したが、その定義ははっきりしない」。『ニュースキャスターたちの24時間』の著者で自身もキャスター経験がある嶌信彦さん(73)は指摘する。 広くは番組における進行役。だが、解説やコメントを加えるかどうか、ニュースの価値の判断にどの程度関わるかは人や番組によって異なる。米国では「アンカー(マン)」と呼ばれ、編集長の役割を担うのが一般的だという。
日本でキャスターの先駆けとされるのは、1962年に始まったTBS系「ニュースコープ」の田(でん)英夫。それまでは新聞記事のような原稿をアナウンサーが顔を出さずに読み上げるニュースが主流だったが、田のにこやかな顔が画面いっぱいに広がった。
だがその6年後、田は降板。ベトナム戦争報道などをめぐって政治圧力があったと自著に記した。
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キャスター像を変えた番組の一つが、85年開始のテレビ朝日系「ニュースステーション」。午後10時の新設枠に、クイズや歌番組の印象が強い久米宏を抜擢(ばってき)した。
ディレクター、デスクとして12年携わったテレ朝番組審査室長の朝本香織さん(59)は「瞬発力と集中力がすごい。上から目線でなく、視聴者の代わりに疑問を提示したり感想を言ったりする姿勢はずっと変わらなかった」と話す。
久米はよく「自分はキャスターでなく司会者」と語っていた。打ち合わせでニュースの取り上げ方に意見することはほとんどなく、コメントについても事前の調整はあまりなかったという。
一方、85年の日航機墜落事故の特集で犠牲者数と同じ520足の靴を並べるなどテレビ的な見せ方にこだわった。巨人の優勝で丸刈りになるなど様々な試みは賛否を呼び、視聴率は時に20%を超えた。
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この3月。辛口とも評されたベテランキャスターが次々と姿を消した。
最後の出演で「報道ステーション」の古舘伊知郎は「開けっぴろげに昔よりも色んな発言が出来なくなりつつある空気」に懸念を示し、「NEWS23」の岸井成格(しげただ)は「真実を伝える、権力を監視する」というジャーナリズムの姿勢を貫く重要性を強調した。「クローズアップ現代」の国谷裕子(くにやひろこ)は23年を振り返り、「複雑化し見えにくくなっている現代」において伝えることの難しさをにじませた。
テレビと政治権力とのせめぎ合いは繰り返され、緊張関係が高まっている。一方、報道と情報番組の境界線はあいまいになり、キャスターのあり方や求められる役割はさらに多様化している。
数々のキャスターを取材した嶌さんは「ニュースが多く、時代が大きく変わる時。どんな形であれ、自分なりの哲学や志、ぶれない軸を持ち、信頼できる言葉を発してほしい」と話す。(佐藤美鈴)
■ものの見方、問われる現代 元NHKキャスター・磯村尚徳さん
「ニュースセンター9時」の初代キャスターを、1974年から3年務めました。
私の考えるキャスターとは「編集長であり発表者」。元々おしゃべりでしたが、原稿を読むのではなく、自分の言葉で語るようにしました。最初はとちりもするし、そのたびにおわびもする。NHKらしくなく、視聴者から拒絶もされた。ただ、得意の国際ニュースも重なり、少しずつ視聴率は上がっていきました。
政治→経済→社会と固定化されていたニュースの順番を変え、「その時の一番を」と長嶋茂雄選手の現役引退をトップにしたこともあります。より身近に感じてもらうため「ひとこと余計ですが」「私事で恐縮ですが」といった言い回しもよく使いました。
情報があふれる現代は、よりものの見方が問われる。今こそ、私の目標だった米国のエド・マローのような名キャスターを見たいですね。」(2016/04/03付「朝日新聞」p26より)
言うまでもなく、NHK、TBS、テレビ朝日のキャスターがこの春変わるが、時宜を得た記事である。
このリストを見ると、知っているキャスターと知らなかったキャスターとがいる。
先日書いた田英夫氏は、自分も多感な学生時期でもあったので、良く覚えているが、NHKの磯村尚徳氏のことも良く覚えている。落ち着いた話しぶりは、聞いていて安心感があった。久米宏も、キャラキャラしたキャラクターであり、黒柳徹子との「ザ・ベストテン」の司会を降板してのキャスター就任だったので、話を聞いた時は違和感があり、これも良く覚えている。
実は、それ以外のキャスターは良く覚えていない。つまり見ていなかったのだ。
そして改めて、櫻井よしこ氏が、前はキャスターだったのだと認識した。そう言えば、そうだったな・・・
テレビは国民に影響が大きいだけに、政権も気にする。そして、都合が悪いキャスターには、放送会社に圧力をかける。田英夫氏もそうだったように、決して新しい現象ではない。
しかし、民主国家としては、あまりに残念。
NHK会長、日銀総裁、内閣法制局長官など、政権は自分に都合の良い人事をやりたい放題。
そして今、国民を洗脳すべく、新聞だけでなくテレビという大メディアをも乗っ取ろうとしている。
これからは、テレビの報道番組も、よくよく吟味しながら見るようにしたいものだ。
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