囲碁界初 井山、七冠独占
今日の新聞はどこも。囲碁界初、井山が七冠独占したことを伝えていた。
これは歴史的な事件らしいので、記しておきたい。
「井山、七冠独占 囲碁界初
囲碁の井山裕太名人(26)=六冠=が20日、前人未到の七冠独占を決めた。名人、棋聖、本因坊、王座、天元、碁聖の六冠に加え、最後に残った十段のタイトル奪取に成功。1976年に七大タイトル戦がそろった日本プロ碁界の歴史に金字塔を打ち立てた。 日本棋院(東京都千代田区)で打たれた第54期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第4局で、挑戦者の井山名人は伊田篤史十段(22)に163手までで黒番中押し勝ち。3勝1敗でシリーズを制し、4期ぶり3度目の十段獲得を決めた。
井山名人は、史上初の六冠となった2013年3月から七冠に挑んできた。一昨年12月には四冠に後退するなど、足踏みが続いたが、昨年からは、出場したすべての七大タイトル戦で防衛または奪取を続け、3年越しで全冠を同時期に獲得した。
生涯を通じて通算で七冠を制覇する「グランドスラム」でさえも、井山名人を含め、趙治勲(ちょうちくん)二十五世本因坊(59)と張栩(ちょうう)九段(36)の計3人しか達成していない。井山名人が六冠になるまで、複数のタイトルを同時に保持した記録は、09年の張九段の五冠が最多。将棋界では羽生善治名人(45)が96年、25歳のときに七冠を独占した。(伊藤衆生)
■力出し切れた
井山名人の話 いまの自分の力は出し切れた。ここ数年は(七冠を)ずっと期待していただいていたので達成することができてうれしい。まだまだ未熟と感じることが多いので少しでもレベルアップしていきたい。」(2016/04/21付「朝日新聞」p1より)
「七冠、際立つ逆転力 十段奪取の井山、視線は「世界一」へ 囲碁
井山裕太名人(26)が、圧倒的な強さと驚異的な逆転力で囲碁七大タイトルを独占した。この1年でつくった公式戦24連勝、七大タイトル戦18局負けなしも偉大な記録。国内で無敵といえる域にまで達した第一人者は、「世界一」という目標に向け、決意を新たにした。
20日午後5時21分。伊田篤史十段(22)が投了し、井山名人の勝利が決まると対局室は報道陣であふれかえった。集まった報道陣は30社約120人。記者会見に臨んだ井山名人は「なかなか囲碁という競技でこれだけ注目していただけることはない。囲碁そのものを知っていただく機会にできたら」。熊本などでの地震の被災者への気遣いを見せ、「大変な思いをされている方が多い。素直に七冠を喜べる状況ではないが、少しでもいいニュースとして受け取っていただけたらうれしい」と語った。
「究極の目標」に掲げ、3年前から歩んだ七冠への道。井山名人は「プロになったときや20歳で名人になったときでも考えたことはなかった。六冠になって芽生えた目標。昨日の自分より成長したい、だから目指してきた」と振り返る。 一昨年末、六冠から四冠にまで後退したとき、「さすがに(七冠は)無理かと思った」。それが昨年夏ごろから「棋士人生で一番いい状態」と感じる絶好調の波に乗った。会見で「こういう結果になったのはまだ信じられない」と話した。
最近の七大タイトル戦の結果が抜きんでた実力を物語る。昨夏の碁聖戦第3、4局を制して防衛を決めてから、名人戦、王座戦、天元戦、棋聖戦と4タイトル連続のストレート勝ち。14日の十段戦第3局では黒星を喫したが、タイトル戦で18局連続の勝利を収め、昨年11月までに公式戦24連勝も記録した。同じ年に六つのタイトル戦に出場した経験のある小林光一名誉名人(63)は「全冠達成はあり得ないと思っていた。いまの井山さんは神がかっている」と驚きを隠さない。
自由奔放さが、井山流。盤上に「打ちたい手」を打って勝ち続ける。果敢に仕掛けて中盤に優勢を築くこともあれば、じっくり構えて戦うこともある。最近は過激とも評されるほどに攻撃力が増した。際立ったのが、まれに苦戦に陥ったときに見せる逆転力だ。昨秋以降、負けが決定的とみられた局面から、何度も勝負をひっくり返した。 悲願を達成したいま、国内に次の目標はあるのか。「七冠は最終ゴールではない。将棋の羽生善治名人のように七冠達成から20年経ってもタイトルを持ち続けるのが理想」
三大タイトル(名人、棋聖、本因坊)の独占や通算七冠制覇を初めて達成した棋士、趙治勲二十五世本因坊(59)は「圧倒的な強さの井山さんが七冠を達成したのは当然。次はもう世界戦しかない」という。
日本は、中国や韓国に世界戦優勝の実績で大きく後れをとっている。タイトル防衛戦に追われる井山名人が世界戦に出る機会は限られるが、日本の頂点を極めた第一人者は、「いい状態と思えるときに思う存分、世界で戦いたい。少ないチャンスの中ですが、もっと結果を残したい」と意気込む。
そして再び「究極」という言葉を口にした。
「究極は、この世界で一番になることですから」。それは、小学生の頃に抱いた夢、そのものだ。(伊藤衆生)
■独創性と結果の両立、すごい 羽生・将棋名人
ここ数年、ずっと七冠をめざす状況の中、気力、体力、精神力を維持し続けての偉業達成に心から敬意を表します。
私が将棋の七冠になったのは1996年。対局が終わった直後はあまり実感がなかったのですが、一つの大きな目標を達成できたという意味でほっとしましたし、反響の大きさもひしひしと感じました。
井山さんは、ひとが思いつかないような手を打てる棋士。その独創的なところと結果とを両立させるのはほんとに難しいのですが、それができるのはすごい。
井山さんとは20歳のころから対談などでいろんな話をしています。いつ見ても精神的にぶれない、メンタルが安定しているなと感じます。年数を積んで、というのではなく、あの若さであの安定感は信じられない。私が七冠になったときでも日によってコンディションは違っていて、一方的に負けてしまった対局もある。でも井山さんは(第2局まで)ずっと連勝を続けていた。持って生まれたものがあるのではないかと見ています。囲碁の大きな歴史が現在進行形でつくられている姿を、同じ棋士として誇りに思います。」(2016/04/21付「朝日新聞」p37より)
「七冠、井山の強さとは 囲碁
囲碁界で初めて七冠独占を達成した井山裕太名人。圧倒的な才能の特徴と強さの秘密を、囲碁愛好家でもある脳科学者の茂木健一郎さん、井山名人と頂上対決を繰り返す高尾紳路九段に分析してもらった。
■「部分」超えた「全体」見抜く 脳科学者・茂木健一郎さん
井山名人による七冠の偉業に興奮を覚えた。七冠達成に必要なのは、何よりも脳の前頭葉の集中力。タイトル戦を次々とこなして集中を切らさないそのスタミナは驚異的だ。
将棋では羽生善治名人が七冠を達成している。脳の使い方から言えば囲碁は「別種目」。井山名人の七冠は、脳の新しい可能性を示したと言える。
囲碁は盤面が広い。「部分」を超えた「全体」を見るのが大切で、難しい。ある部分だけをとれば最良の手が、全体から見るとそうとは限らない。そこを見抜く力がなければ、トップに立ち続けることはできない。
先日、人工知能が人間のプロ棋士を破った際、囲碁の「常識」を破った打ち手が話題になった。部分的には不利に見えるが、盤面全体から見ると実は有利な手を人工知能が打ち、関係者を驚かせたのである。
井山名人の打ち手はとらわれず、柔軟である。時に「意外」とされる井山名人の棋譜は、部分を超えた全体の利益を図っているとも言える。
今や「人工知能に匹敵する」というのは、褒め言葉かもしれない。井山名人ならば、最強の人工知能にも勝てるかもしれないと、期待が膨らんでしまう。
囲碁は、日本で近代的な発展を迎え、世界的な広がりを持つ。先日の人工知能と人間の対決のネット中継でも、外国人棋士が日本語由来の用語を連発した。
井山名人の七冠達成は、囲碁界における偉業であると同時に、世界的なインパクトを持つニュース。井山七冠に、今後も、人間の脳の新しい可能性を見せていただきたい。(寄稿)
*
もぎ・けんいちろう 1962年生まれ。理化学研究所などを経てソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。一昨年の名人戦では井山名人の対局を観戦した。」(2016/04/21付「朝日新聞」p38より)
先日、囲碁好きだった兄貴の所に行ったら、4月中旬に、囲碁界で快挙が起こるから見て居れ、と言う。聞くと、井出さんという名人が、七冠の一歩手前まで来ているという。
それから新聞の記事を注意していたら、先日1敗して連勝は止まったものの、昨日七冠を達成したというニュースが流れていた。
実は、自分は囲碁も将棋出来ない。前にどこかに書いたが、囲碁は、兄貴に「老後の楽しみとして覚えておけ」と言われ、昔NHK学園で習ったことがある。しかし、すぐに挫折。
将棋もそうだが、自分には、その才は全く無い。とうにあきらめている。
しかし、家族からの影響で、ニュースだけはたまに見る。
だから、そもそも将棋の七冠も囲碁の七冠も、どんな戦いでの七冠なのかは知らない。
しかしそれが、とてつもないスゴイことだと言うことだけは分かる。
20年前に羽生さんが将棋の七冠を取った時、そのままずっと七冠を持ち続けるとばかり思っていた。しかし、そんな甘い世界ではなかった。
それにしても、若いということは武器。羽生さんも井出さんも、どちらも20代での勝利。
先日、人工知能が囲碁の世界的な名人を破ったと聞いたが、世界の進歩は凄まじい。
さてさて、我々シルバー族は、どれだけこれらの進歩を見届けられるか・・・
今日は、ウチの2歳半になる孫が、お試し幼稚園に一人でバスに乗って行ったとか・・・
いやはやその成長ぶりにはビックリ。先日、やっと歩いた! 自分を指さして「**ちゃん」と言った!とジジ・ババは、はしゃいでいたが、子どもたちの可能性は無限・・・
あまり関係無いけど、今日の“記念すべきニュース”2つである。
| 0
コメント
私も囲碁はやらないので、今回の快挙は新聞やテレビのニュースで知っただけですが、NHKがこの快挙にあわせて急遽再放送した番組「プロフェッショナル仕事の流儀―-井山7冠達成SP囲碁棋士井山裕太」(4/25放送、オリジナルは昨年井山さんが6冠達成のとき放送したもので、それに多少手を加えて放送)を観てみました。エムズさんと同じように、私も将棋界の羽生さんが20年前に7冠達成をしたときの世間の熱狂ぶりを思い出しました。羽生さんの場合は、7冠達成の、たしか2ヶ月ぐらい後の棋聖聖戦で1冠を失い、7冠独占は2ヶ月しか続きませんでした。エムズさんは、「20年前に羽生さんが将棋の七冠を取った時、そのままずっと七冠を持ち続けるとばかり思っていた」と書かれていますが、7冠を保持続けることがいかに難しいか、単純計算で考えてみましょう。将棋界の(1年間の)最高勝率はだいたい8割ぐらいなんですね(直近の、2015年度の最高勝率は0.769でした)。7冠達成のあと、次々と防衛戦(将棋の場合なら、名人、棋聖、棋王、竜王、王座、王位、王将)を戦う必要があり、勝率8割で戦ったとしても、7冠を1年間防衛する確率は、0.8×0.8×・・・×0.8 =0.8の7乗≒0.2097・・と2割ぐらいなんですね。逆に言うと、保持に失敗する確率は8割にも達することになるんです。1冠でも防衛に失敗すると、7冠復帰の可能性は早くても翌年、その間挑戦者になるための予選がさらに加わるので、ますます難しくなる。天才羽生さんといえども、7冠を失ってから、2度と7冠には返り咲くことはありませんでした。囲碁界のことはよく知らない私ですが、井山さんがどのくらい7冠独占を続けられるのか、興味をもってみています。
【エムズの片割れより】
なるほど、そういう計算になりますか・・・
自分は、相撲の横綱のような感覚で捉えていました。つまり、もう「敵無し」に強いので、ずっと勝ち続ける・・・
でも、その難しさは、その後の羽生さんのタイトルが物語っていますね。
投稿: KeiichiKoda | 2016年4月30日 (土) 13:28