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2016年3月26日 (土)

首相の憲法改定に向けたワナ「消費増税先送り」

今朝の朝日新聞のこんな記事を苦々しく読んだ。
首相、にらむ景気と選挙 消費増税先送り検討
 安倍晋三首相が、2017年4月に予定される消費税率引き上げの先送りも視野に入れはじめた。国内の景気や世界経済の情勢をなお見極める考えだが、夏の参院選を見すえ、「増税」が争点化するのを避ける狙いもありそうだ。ただ、一昨年に続き再び増税を見送れば、財政再建の道のりは極めて難しくなる。
 ■世界経済への懸念、念頭
 「リーマン・ショックとか大震災級の出来事は、いつ起こるか分からない。その事態がいつ起きようとも国民、経済をしっかりと守っていく」。首相は25日の参院予算委員会で、経済が減速することへの危機感をあらわにした。「経済政策の選択肢を誤ってはならない」とも強調した。
 政府が23日に発表した3月の月例経済報告は、国内の景気判断を5カ月ぶりに下方修正した。大きな原因の一つが、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費の低迷だ。期待した春闘でのベースアップも前年より小幅にとどまった。今後も消費が上向かず、4月以降の報告でさらに下方修正されるようなことがあれば、景気の後退感はますます強まることになる。
 増税先送りを判断した場合に備えて、政権は後ろ盾を得ようとする動きにも出始めている。首相の発案で始まった国際金融経済分析会合には、消費増税に批判的なノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授らを招待。スティグリッツ氏は世界経済について「16年はさらに弱体化する」といった懸念を示し、政権に対して消費増税延期や積極的な財政出動を求めた。
 首相は今後、月例経済報告や5月18日に発表される16年1~3月期のGDPの1次速報などを考慮。その上で、今夏の参院選を見すえ、5月26、27日の伊勢志摩サミット前後にも最終判断する可能性がある。
 自民党内からは「首相には増税を先送りした前例がある」(中堅議員)との声が上がる。首相は14年11月、消費税率10%への引き上げを15年10月から1年半延期すると発表。「大きな変更を行う以上、国民に信を問うべきだ」と訴えて衆院を解散し、14年12月の衆院選で与党で3分の2を上回る議席獲得につなげた。
 首相は今回も、消費増税を先送りした上で衆参同日選に踏み切り、「二匹目のドジョウ」を狙うのではないか――。与党内ではそんな観測が公然と語られる。首相が今夏の参院選で、憲法改正の発議に必要な3分の2以上の議席を改憲勢力で確保することに照準を定めているためだ。(相原亮、鯨岡仁)
 ■子育てや介護、財源に不安
 とはいえ、国と地方を合わせて、1千兆円超の借金を抱える日本の財政状況は先進国で最悪のレベルだ。
 政府は財政健全化の目標として「基礎的財政収支(プライマリーバランス)の20年度の黒字化」を掲げる。国や地方の予算で政策に使う経費を借金に頼らず、税収などでまかなえるかをみる指標だ。政府は主要7カ国(G7)の会議などで20年度に収支を黒字にすることを約束してきた。
 だが、内閣府の試算では、予定通り17年に増税しても20年度の収支は6.5兆円の赤字。仮に増税を再延期すれば税収は落ち込み、黒字化は絶望的だ。
 首相は14年11月に増税延期を表明した際、「財政再建の旗を降ろすことは決してない。17年4月に確実に消費税を引き上げる。20年度の財政健全化目標も堅持する」と語った。税収増の一部は子育てや介護など社会保障の充実策に充てられる予定で、増税が先送りされれば、こうした財源の手当てもできなくなる。
 自民党内の財政規律派や公明党には、予定通りの増税を求める声も根強い。公明党の山口那津男代表は23日のBSの番組で「安倍さんご自身が国民に約束した重みもある。決まっていることを軽々に変えるべきではない」と、釘を刺した。自民党の谷垣禎一幹事長も「(増税は)既定方針だ」と語る。(大津智義、南彰)」(
2016/03/26付「朝日新聞」p3より)

いくら何でも、安倍さん、それは無いでしょう!? こんな目的は・・・
「首相は14年11月、消費税率10%への引き上げを15年10月から1年半延期すると発表。「大きな変更を行う以上、国民に信を問うべきだ」と訴えて衆院を解散し、14年12月の衆院選で与党で3分の2を上回る議席獲得につなげた。
 首相は今回も、消費増税を先送りした上で衆参同日選に踏み切り、「二匹目のドジョウ」を狙うのではないか――。与党内ではそんな観測が公然と語られる。首相が今夏の参院選で、憲法改正の発議に必要な3分の2以上の議席を改憲勢力で確保することに照準を定めているためだ。」

今回も、着々と準備が進んでいる。
わざわざノーベル経済学賞受賞者を米国から呼んで、増税延期をするべきだと言わせたり、ムード作りが着々と進んでいる。
そしてまた「大きな変更を行う以上、国民に信を問うべきだ」と訴えて衆院を解散する。争点は「増税を延期したが、良いですか?」
国民は「税は安い方が良い」とばかりに自民党に投票。すると、またまた自民党議席が増え、「国民の支持を得た政権だ」とばかりに、憲法改定に突き進む・・・。

こんなだまし討ちが2度も行われ、税負担の軽減というニンジンによって、国民はそれを許しそうなのだ。
増税の真の目的を踏みにじり、自分たちのアベノ何とかという施策の失敗を逆に利用し、増税先送りというポピュリズムをお手玉に取って、悲願の憲法改定に突き進む首相。
それを止められそうにない国民。

もっともっとマスコミは、「増税先送りとパックになった衆院選は、憲法改定へのワナ」だということを、国民に伝えなければいけないのではないか?
そんな思いをもって読んだ今朝の記事であった。

160326babaa <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

昨日、『田勢康弘の週刊ニュース新書』を見ていまして、
ゲストの田原総一朗氏も「わざわざノーベル経済学賞受賞者を呼んで、
増税延期をするべきだと言わせたり、ムード作りが着々と進んでいる」と
コメントしていました。
その上で田勢氏も田原氏も「(安倍政権の内は)増税はしない」と見ています。
そもそも、増税を2度も延期して、その意義が問われても
「増税延期を批判する人はまずいない」と見ているようです。

憲法改正ですが、憲法『解釈』改正した時点で憲法改正はやらなくても大丈夫だそうですね。
しかし、それでも憲法改正をやろうとしているのは、
名を残したいからだと田原氏は見解を示しています。

マスコミに関しても「完全に委縮してしまっている」だそうです。
最近はマスコミの幹部が連日、与党の首脳らと会食することがありますが、
以前なら信じられないことです。
マスコミは「政治の監視役」という役割があるからです。
それなのに政権にベッタリだと、その存在意義が完全に問われてしまいます。
その上、新聞に軽減税率導入が決まった途端、
新聞は消費増税などの批判を一気に縮めていきました。
田原氏は「大変なげかわしい」とのこと。
また、高市総務大臣の「電波停止」発言にしても、
「言ってはならないこと」と痛烈に批判していました。

【エムズの片割れより】
まさに何から何まで、田原氏の言う通りだと思います。
バレているのに政権の支持率は高いまま・・・。国民はちゃんと考えているのでしょうか?

投稿: マッノ | 2016年3月27日 (日) 11:55

9日の読売に軽減税率の線引きについてのことが載っていました。
例えば、水だと、ミネラルウォーターは8%ですが、水道水は飲食用以外にも使うので10%だそうです。
氷も保冷に使うのならば10%。
調味料は、みりん風調味料なら8%、みりんや料理酒は「酒」になるので10%。
詳しい内容は、国税庁が今週中にサイトで公開するそうです。
でも、やっぱり水道水こそ軽減税率を導入すべきだと思いますが・・・


余談ですが、先日視聴した『田勢康弘の週刊ニュース新書』の最後で、
田勢氏は「明治期には清廉で貧しい政治家が何人もいた。今は誰も見当たらない。
そういう政治家が3人でもいれば、国民の政治の見方が全然違うのに」とも仰っていました。

【エムズの片割れより】
今、「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれたホセ・ムヒカ前 ウルグアイ大統領が来日していますね。
この人が話題になるほど、そのような人を日本の国民は渇望しているのですが・・・

投稿: マッノ | 2016年4月10日 (日) 11:54

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