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2016年3月24日 (木)

高3の生徒名簿が自衛隊に提供されている

先日の朝日新聞のこんな記事が気になった。知らなかった・・・
名簿提供、割れる自治体 自衛官勧誘、「高3情報」渡すか閲覧か
 自衛官の勧誘に生かすため、高校3年生らの名前や住所など個人情報を提供するよう自衛隊側が自治体に求めていることについて、自治体の対応が割れている。住民基本台帳を自衛隊側に閲覧してもらうにとどめるか、自治体が紙などにまとめた名簿を提供するか。名簿提供には、法的根拠のあいまいさや個人情報保護上の問題を指摘する声もある。
 防衛省によると、自衛官の募集対象となる18~26歳のうち、主に高校卒業予定者の情報を毎年、自治体から得てきた。住民基本台帳に載っている名前と生年月日、住所、性別を、自衛隊の地方協力本部(地本)の職員が閲覧し、書き写す方法が以前から一般的だった。
 2013年度以降は、自衛官募集への協力について以前から都道府県向けに出してきた大臣通知に、紙などで「名簿」を出すことを求める項目を入れ、各市町村への周知を求めている。閲覧では転記ミスが起こり、人件費もかかるという理由だ。
 同省のまとめでは、14年度は全国約1700の市区町村のうち、「閲覧」で対応したのは半数強の957。うち558自治体は、名簿提供の依頼を自衛隊側から直接、受けたものの応じなかった。
 一方、名簿を提供したのは4割弱の634自治体で、前年度より69増えた。07年の同様の調査では2割強だった。残る約1割は同省側が情報提供を求めていないなどの自治体という。
 自衛隊側は名簿提供の法的根拠として二つを挙げる。
 一つは、自衛官募集に関する一部事務を知事や市町村長が行うと定めた自衛隊法97条。もう一つは、自衛官募集に必要な時は防衛相が自治体に「資料の提出を求めることができる」とする同法施行令120条だ。同省人材育成課の担当者は「名簿提供は自治体の義務でなく、あくまで防衛省が協力を依頼する事項だと整理している」と話す。

 ■提供派「関係深い」 閲覧派「根拠弱い」
 自衛隊の施設がある地域では、名簿提供に協力的な自治体が目立つ。陸上自衛隊の駐屯地がある鹿児島県霧島市は、10年以上前から紙で名簿を提供している。市の担当者は、自衛隊法97条を根拠に挙げた上で「駐屯地が近く、ふだんから関わりも深いから協力している」と説明した。
 陸自が駐屯する兵庫県伊丹市は、12年からCD-Rに名簿を入力して提供してきた。「阪神大震災の時に災害派遣でお世話になった。できる限りの協力をしたい」と担当者。13年度からCD-Rと紙を出す同県姫路市の担当者は「提供の内容は住民基本台帳の閲覧と同じ」と説明する。
 長野市は市内に駐屯地はないが、高校3年生の名簿を紙で提供している。市の個人情報保護条例に「国などへの情報提供は相当な理由がある場合、認められる」とあり、自衛隊法を根拠に「相当な理由がある」と判断した。
 一方、朝霞駐屯地がある埼玉県朝霞市。昨年1月に提供の依頼があったが、閲覧にとどめた。住民基本台帳法が定めた「閲覧」の規定に沿ったという。
 福岡市も閲覧での対応を続ける。市の条例で、住民基本台帳の情報を提供する条件を「法令等に定めがある時」としており、「自衛隊法施行令の『資料の提出を求めることができる』との表現では根拠としては弱い」と担当課は話す。
 個人情報の問題を検討する諮問機関に意見を聴く自治体もあるが、判断はばらばらだ。高知県南国市の審議会は14年、閲覧も提供も自衛隊が得る内容は変わらないなどとして「提供は問題ない」。一方、11年の福岡県古賀市の審議会答申は「提供しないことが適当」。法令の解釈が不明確というのが理由だ。審議会の会長は「なぜ(国が)統一方針を出さなかったのか」と審議で指摘した。
 沖縄県では41市町村の大半が名簿の提供をしていない。その一つ、北谷(ちゃたん)町の野国昌春町長は「自衛隊をめぐる住民感情への配慮が提供を断る一因」と話す。太平洋戦争での沖縄戦で「軍民一体」の地上戦が展開されたため、今でも住民の自衛隊への反発が強いという事情がある。

 ■<考論>「目的外利用」で違法
 甲南大学法科大学院の園田寿教授(情報問題)の話 自衛官募集のために住民基本台帳の情報を自治体が紙などで提供するのは法的根拠がない。住民基本台帳法で禁止する「個人情報の目的外利用」にあたり、違法だ。提供の根拠として国が挙げている自衛隊法施行令120条(防衛大臣は自衛官などの募集に関し、知事や市町村長に必要な資料の提出を求めることができる)で想定されるのは、適齢者数などの統計的な資料だろう。個人情報を扱う規定は同法にも施行令にもなく、これらを根拠に提供を求めるのは拡大解釈だ。
 ■<考論>判断尊重、運用も妥当
 新潟大学の鈴木正朝教授(情報法)の話 自衛隊法やその施行令など根拠があり、防衛相が住民基本台帳の情報提供を依頼し、自治体が応じるのは適法だ。住民基本台帳法に「提供」の規定がないことで違法とは言えない。提供の判断は自治体に委ねられ、各自治体の個人情報保護条例に照らして行われる。提供に応じない自治体もあるが、国はその判断を尊重しており、運用も妥当だ。

 ◆キーワード
 <自衛官募集と住民情報> 各都道府県にある自衛隊地方協力本部(地本)が自治体から得た情報の多くは、募集の案内の郵送などに利用される。高校新卒者らを中心に募集する「一般曹候補生」の15年度の応募は前年度より約6千人減って約2万5千人。現在の募集区分になった07年度以降では、東日本大震災時の自衛隊の活動が注目されて最多となった11年度のほぼ半数。」(
2016/03/22付「朝日新聞」p39より)

知らなかった・・・。自分だけかも知れないが・・・
自衛官に応募するかどうかは、一般企業と同じで、応募者の自由。それなのに、自衛隊だけは、名簿という個人情報が、自衛隊に提供され、それによって機械的に勧誘が行われているという。これが一般企業だったらどうか? 名簿を片手に、無差別に安価に勧誘できる・・・。こんなバカなことはない。しかし自衛隊だけは特別だという。

そもそも、住民基本台帳の情報は何のためにあるのか? 一般的に頭に浮かぶのは、紙の情報からコンピュータの情報への転換だろう。それが、まさか、自衛隊の募集に直結しているとは、国民はどこまで知っているのか?
上の「「目的外利用」で違法」という考え方が常識だろう。

先に、防衛大の任官拒否が話題になった。
防大生の任官拒否、倍増 今春47人、雇用改善など影響
 幹部自衛官を養成する防衛大学校(神奈川県横須賀市)を今春卒業する419人のうち47人が、自衛官に任官しない意向を示していることがわかった。昨年の任官拒否者25人のほぼ2倍だ。防衛省は民間の雇用状況改善が理由とみるが、関係者の間には「安全保障関連法の影響も完全には否定できない」との声もある。
 任官拒否者は東日本大震災翌年の2012年に4人まで減少したが、以後は徐々に増加した。今年の47人は1992年以降で最多。91年はバブル景気と、湾岸戦争をめぐる自衛隊海外派遣の議論が重なった時期で、過去最多の94人だった。うち約10人が「湾岸戦争の影響」を理由に挙げたという。
 防衛大の学生は特別職の国家公務員で、授業料はかからない。卒業後は、陸海空の自衛官として幹部候補生学校に入校する。防衛大の今年の卒業式は21日にあるが、防衛大は任官しない意向の学生の説得を続ける予定という。
 防衛省関係者は任官拒否の増加について「大卒の就職状況が良くなり、防衛大になじめなかった人が流出しているのでは」とみる。一方で「大きくはないとは思うが、安保法制の影響はゼロとは言えない」とも話した。
 12年には任官拒否者に学費相当額を返納させる自衛隊法改正案が国会に提出されたが、成立しなかった。(福井悠介)」(
2016/03/20付「朝日新聞」より)

この原因を、就職状況が良くなったから、と捉えるのは、あまりにノー天気。明らかに安保法制の影響だろう。
70年近くに及ぶ自衛隊の専守防衛の考え方が、一内閣の解釈で、世界中の紛争に巻き込まれて、他国のために死ぬ可能性が出て来た現在、入学したときの動機とは明らかに状況が変わっている。もし責めるなら、任官拒否の防大生ではなく、安倍内閣だろう。

じわりじわりと、世の中が変わっている。確実に変わってきている。
ベルギーのテロ事件や、米トランプ氏の暴言も含めて、世界中が良くない方向に向かっている。せめて日本は・・・と思いたいが、どっこい、そう甘くはないのである。

160324jigoku <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

「防人(さきもり)に行くは誰が背と問ふ人を見るが羨(とも)しさ物思いもせず」万葉の時代から兵士となっていく夫を悲しいと思っている妻がいたのですね。高校の万葉集の時間にこの歌を習った時、私の恋した人が防大に進学するとは思ってもいませんでした。その人の事は60年経ってもまだ悲しみとともに思い出します。人間はなぜ人間を殺すのでしょうか。資源の取り合いが戦争の始まりと言いますが、そればかりでは無いような気がします。戦争をゲームのように考えている人がいて、駒を動かす様に人間同士を戦わせているのだと思います。もし神がいるのならそういう悪人を何故なくさないのか無信心の私は思います。先の大戦で日本を壊滅状態にした人が戦後また総理となり、その孫がまた同じ過ちを繰り返えそうとしています。血筋なのでしょうか。

【エムズの片割れより】
戦争に駆り立てるエネルギーは、自分は先の日本陸軍のように、「男のメンツ」のような気がします。
軍人のつまらないメンツのために、国民が死んで行く。
ひるがえって、今の日本は、政治家のメンツ、政治家の自己顕示欲によって、国民が戦争に巻き込まれていくような気がします。

投稿: 白萩 | 2016年3月24日 (木) 21:51

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