「日本のメディアは劣化している」
今朝の朝日新聞の「池上彰の新聞ななめ読み」が面白かった。
「(池上彰の新聞ななめ読み)首相動静 安倍氏は誰と食事した?
新聞を読み比べていると、新聞が書かない事実が見えてくることがあります。なぜ書かなかったのかと考えると、想像あるいは妄想が高まります。たとえば、安倍晋三首相の行動についてです。
新聞各社は、安倍首相の前日の行動を朝刊で掲載しています。各紙はどう書いているのか。
日本経済新聞のタイトルは「首相官邸」です。1月22日付の記事を見ると、「18時55分 大手町の読売新聞東京本社ビルで渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長ら」と記載されています。その後の安倍首相の行動は、「20時52分 富ケ谷の私邸着」となっていますから、首相は渡辺会長らと会食したのでしょうか。その記載がありません。
一国の総理が、特定の新聞社に赴き、社内で会食する。費用は誰が出したのでしょうか。読売新聞は、安倍首相を食事に呼ぶような借りがあるのでしょうか……、などと妄想をたくましくしてしまいます。
いやいや、仲の良い2人が食事をしただけ、ということもあるでしょうから、妄想はやめておきます。
*
ところが、同日付の毎日新聞の「首相日々」を見ると、出席者は他にもいたようです。
渡辺会長の他に「今井環NHKエンタープライズ社長、評論家の屋山太郎氏らと会食」となっています。やはり会食だったのですね。屋山氏は評論家ですから、首相との会食は取材を兼ねていることも考えられますが、今井氏は元NHK政治部記者でニュースキャスターも務めていました。取材現場を離れて久しいですから、これは友人としての会食でしょうか。
では、会場を提供した読売新聞はどう書いているのでしょうか。こちらは「安倍首相の一日」。
「東京・大手町の読売新聞東京本社ビル。渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長・主筆、清原武彦産経新聞社相談役、芹川洋一日本経済新聞社論説委員長らと会食」
読売新聞は、渡辺会長が「主筆」でもあると書いています。会長というと、経営の責任者のイメージが強いですが、主筆は、その新聞の論調を決める責任者。読売新聞の論調を決める責任者が、首相と会食する。首相としては、読売新聞に自分の主張を理解してほしいという思いがあっての会食でしょうか。それとも渡辺会長が首相にアドバイスをしたのでしょうか。
いやいや、考え過ぎかも。単に友人同士の気楽な食事会だったのかもしれませんから。
* ここで気になったのが、日本経済新聞社の論説委員長が加わっていたこと。この事実が、日経新聞には書いてなかったからです。日経新聞の読者に自社の論説委員長が首相と会食したことを知られたくなかったからでしょうか。
いやいや、ここでも私の妄想が高じただけかも。単にスペースの都合で入らなかっただけでしょうか。
安倍首相としては、日経新聞の社説を担当する人に、自分の立場を理解してもらいたかったのでしょう。
さて、誰が芹川委員長を会食に呼んだのでしょうか。渡辺会長か、それとも安倍首相が、芹川さんも呼んでよと頼んだのか。おっと、勝手な想像は慎まねば。
会食には産経新聞社の相談役も加わっていたのですね。読売新聞と産経新聞の幹部が安倍首相と仲がいいということが、この記述から見えてきます。
さて、朝日新聞は、誰と会っていたと書いているのか。こちらは「首相動静」です。
「渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長、橋本五郎・読売新聞東京本社特別編集委員、今井環・NHKエンタープライズ社長、清原武彦・産経新聞相談役、ジャーナリスト・後藤謙次氏、芹川洋一・日本経済新聞論説委員長、早野透・桜美林大教授、評論家・屋山太郎氏と食事」
朝日新聞の記述によって、会食参加者の顔ぶれが判明しました。記事はこうでなくてはいけません。
と思ったら、翌日の紙面に、早野氏は同席していなかったという訂正が掲載されました。事実確認はむずかしいものですね。」(2016/01/29付「朝日新聞」p17より)
こんな指摘を読むまでもなく、日本のメディアはどうしてしまったのか・・・
今朝(2016/01/29)AM8:15頃の「テレビ朝日」「羽鳥慎一モーニングショー」で、昨日の甘利経済再生相の「政治とカネ」にまつわる辞任に関し、コメンテーターの玉川徹氏がこんな発言をしていた。
「説明はするが大臣は続けるんだろうなと、新聞やテレビなどのメディアはそういう風にしか捉えていなかった。それはメディア側の劣化だと思う。今回もこのような大きな事を報じるのは週刊文春。週刊文春は立派。ジャーナリズムをちゃんとやっているから。一方、新聞やテレビはそれをやっているのか? 果たしているのはいつも雑誌じゃないですか。そう言う意味で、劣化を感じる。
大臣を止めたんだからこれでいいじゃないかと、これをそのまま見逃してしまうようだと、国会も劣化しているだろうし、新聞やテレビも劣化しているだろうし、これでいいと国民が言ったら、国民の劣化でもある。だからここはしっかりやらなければいけないと思う。」
現在の日本では、「劣化」という言葉がピッタリだ。
国民を“扇動する”新聞の、政権との癒着は目に余る。何もかもが劣化している。
それらを見抜くことが出来ずに、投票している我々国民が一番劣化しているのではないか・・・、と思いつつ、読み、そして聞いた。
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コメント
全く同感。当然「物質的」なものは全て「劣化」するが「精神的」伝統的価値観・倫理観の「劣化」は 近年、特に政治経済界の「リーダー」達に顕著である。リーダー自らが「カネの亡者」になって「法」のきわどい隙間を歩く、刑務所の塀の上を歩く様では 社会全体が「正せる」訳はない。情けないの一語である。
明治維新以降、 政府は一貫して「言論・メデイア」を抑圧して軍部勢力に依り、文民統制を歪めて我々国民を「原爆」に依る悲惨な「敗戦の窮地」に立たさた。 再度挙国一致の窮地に立たされるまで リーダーに使命感なく、我々国民も黙っているのであろうか。日本は上から下まで「儲ける」ことしか考えぬ世の中になってしまった。
【エムズの片割れより】
甘利大臣の辞任も、誰かが「首相へ迷惑をかけないため、と言っているが、国民の迷惑に目が行っていない」と言っていました。
政治家が、国民よりも自分の持論を実現するために動く今の日本の社会は、明らかに劣化していますね。
かといって、**さんを首相に・・・という人が浮かばないのが、悲惨・・・
投稿: 後藤一成 | 2016年1月30日 (土) 14:21
「ゲスの極み」と言った山東昭子議員の顔、テレビで観て、この厚顔こそが「ゲスの極み」と多くの人が思ったと思います。議員に正邪の感覚が無くなってきているのでしょうね。精神の劣化をひしひしと感じます。山東議員は前にも不祥事をすっぱ抜かれて謝っていたはずです。ますます厚顔になってきていますね。嘆かわしい事です。
【エムズの片割れより】
まだ現役なんですね・・・
投稿: 白萩 | 2016年1月30日 (土) 18:52
新聞の軽減税率導入を主導したのは読売の渡邊会長だったそうですね。
この方の影響力はどこまであるのやら・・・
軽減税率を導入しているところのほぼ全部の国で電気・ガス・水道にも導入しているそうです。
この手の話が(今のところ)ないのは日本だけです。
電気・ガス・水道よりも新聞が大事って・・・
税金のやり方が下手というかなんというか・・・
それに、軽減税率ですから、むしろ「適用品目の税率を下げろ」という声があってもおかしくありません。
以前にも申しましたように、今回の軽減税率は実質8%維持ですから。
新聞だって軽減税率に一生懸命なら「税率を下げろ」と言ってきてもいいのに、
そういうことは一切ありません。
完全にだんまりしているというか。
【エムズの片割れより】
まさに、政権による新聞社(マスコミ)の買収ですよね。日本、ここに極まれり・・・!
投稿: マッノ | 2016年2月 4日 (木) 23:17
新聞も適用なら、本も適用で無いと不公平ですよね。
軽減税率を適用しているところは新聞も本も適用していますから。
日本は変なところで細かく厳格ですからね・・・
新聞も適用は週2回以上で宅配限定。明らかに夕刊紙は不利です。
ちなみに機関紙でも自民党のは週1回ですので、適用外です。
自分たちで決めたことなのに、自分とこの機関紙は適用外とは、なんたるオチ・・・
変なところで細かく厳格は復興予算もそのようで。
実際に使おうとする際、正しく使われるか細かい審査をするそうです。
その結果、承認されるまでに時間がかかり、事業の進捗に影響が出るそうで。
こういうものは、まずバラまき覚悟でドバっと出すのです。
そして、ある程度復興したところで審査するのです。
そこで不適切な使い方と分かれば、予算の返還を求めればいいのです。
街を素早く元に戻すには出し惜しみをしてはいけません。
【エムズの片割れより】
なるほど・・・。
それにしても、高石総務相の「電波停止」発言など、ひどい状況になりました。
投稿: マッノ | 2016年2月 7日 (日) 11:36