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2016年1月11日 (月)

「ほめ言葉という薪を焚く」

今日、カミさんと少し遠い南大沢まで買い物で足を伸ばした。
その車中、「褒める」ということで、今朝の「朝日新聞」の「天声人語」の話になった。

「(天声人語)ほめ言葉という薪を焚く
 イタリアものの珠玉のエッセーで知られる故・須賀敦子さんが、最初に留学した先はフランスだった。だが言葉はいっこう上達しなかったそうだ。ものを言うのがこわくて、寮の電話が鳴ると誰か出てくれないかとあたりを見回した。
それがイタリアへ行くと、2カ月で日常に不便のない程度に操れるようになった。理由の一端を、仏では言葉をけなされ、伊ではほめられたからではないか、と回想している。
まず下宿先の家族が、須賀さんが口にする一語一語に驚き喜んでくれた。食事のとき、ひとつ新しい表現をおぼえるたびに、ブラーヴァ(うまい)と歓声があがった。「私はほんとうに自分がブラーヴァなのだろうと信じこんでしまい、イタリア語がすきになり上達が早かった」。
そんな話を、元日の紙面で読んだ「ほめる達人」の記事に思い出した。目の前の小さな価値を見つけることを大切にし、短所も前向きにとらえる。おべんちゃらとも、おだてあげとも違う、ほめ上手の達人検定が、じわりと人気なのだという。
叱って導くのも大切だろう。だが叱られてばかりだと自己肯定感は低くなりがちだ。それでなくても、なじる、けなすといったネガティブな言葉が飛び交うとげとげしい時代である。
きょうは成人の日。若い世代が「どうせ駄目」「どうせ無理」と自分を縛ってしまうようでは悲しい。須賀さんの心に明かりをともしたような、ほめ言葉という薪(まき)を惜しまず焚(た)きたいものだ。この温かさに元手はかからない。」(
2016/01/11付「朝日新聞」「天声人語」より)

この記事で話の出ている元旦の「ほめる達人」の記事を読んでいなかったので、Netで読んだ。

「「ダメ」では人は動かない 日本ほめる達人協会のスゴ技
 ほんのちょっと見方を変えれば、短所は長所になる。「ほめる達人」(ほめ達)に目覚めたきっかけは、あるアルバイト店員の変化だった。

覆面調査でダメ出し
 一般社団法人「日本ほめる達人協会」理事長の西村貴好(たかよし)さん(47)は2005年、客を装って接客態度などを調べる覆面調査を請け負う会社を創業した。依頼は飲食店や美容室、車のディーラーなどから。20個良い点を見つけると、悪い点はその5倍見つかった。悪い点は証拠をつけて、「設備はきれいなのに接客は殿様商売」などとダメ出しをした。
 正確に伝えれば喜んでもらえると思い、報告書には長所も短所もすべて記したが、反応は芳しくない。「ここまできついことを書くんか」と眉をひそめる依頼主も。報告書の効果は乏しく、歯がゆさが募った。
 創業から2年半が過ぎたころ、焼き鳥チェーンの店舗の調査依頼が舞い込んだ。調査スタッフの評価は厳しい指摘が並んだ。自らもこの店舗を利用したことがあるが、そこまで悪い印象はない。試しに悪い点はそぎ落とし、良い点に焦点を当てた。
 一人のアルバイト女性について、報告書にこう記した。
 「食材の産地について答えられないことは厨房(ちゅうぼう)に確認し、回答した。誠実な対応に好感が持てました」
 知識不足を指摘するのではなく確認に走ったことを前向きにとらえ、「丁寧な仕事ぶり」と評したのだ。店では動きが鈍いとされていた女性は自信を持ち、仕事にスピード感が出て、新人の教育係になった。失敗を重ねたから教え方はうまい。系列店の100人以上の中で最優秀アルバイトに選ばれた。周りも活気づき、店の売り上げも伸びた。
 これを機にダメ出しは封印して、「ほめる覆面調査」に方向を転換。良い点はすべて報告書に書き込み、悪い点はすぐに直せて波及効果が大きそうな1、2個に絞って伝えるようにすると、ほかにも業績アップにつながる事例が続いた。
 ほめることの効果をもっと生かせないか――。そんなころ、友人と後輩の自殺の報が相次いで届いた。壁にぶつかり追い詰められた人にとって、ほめ言葉は「心のエアバッグ」になるのではないか、と考えた。
 「ほめ達」を名乗り、10年に「ほめ達」検定を開始。翌11年に協会を設立し、「ほめ達」を広める旅に足を踏み出した。

■「ほめ達」続々、2万3千人
 検定は、入門者向けの3級から上級者向けの1級まである。合格者は「ほめ達」の認定証がもらえる。
 昨年12月下旬。千葉県銚子市であった3級検定に40人ほどが集まった。西村さんは、目の前の小さな価値を見つける大切さ、短所も前向きにとらえるという極意を説いた。ダメ出しの達人だったからこそ説得力がある。隣り合った人同士でほめ合うワークショップもはさんで約3時間。検定試験を受ければ、3級は全員が合格できる。
160111homeru  当初は手探りだった。「ほめる=おべんちゃら」という誤解もあり、定員150人の会場に受験者13人という日も。コツコツ続け、口コミで受験者は増えた。「身の回りの検定合格者が機転の利いた言葉を上手に繰り出し、すてきだったから」といった動機が目立つようになった。
 「ほめ達」の普及に共感する各地の合格者が支部を作り、人生に変化を感じるようになったという体験談も寄せられた。認定証を見せれば商品を割引する協賛企業も出てきた。講演やセミナーも増え、昨年は検定を含めて210回、人前に立った。子育て中の父母や介護の現場で働く人たちからも声がかかる。
 「ほめ達」という生き方を選んで強く感じるのは、「人を幸せにする人がもっと幸せになる」ということ。こんな例えをしばしば使う。
 シャンパンタワーの最上段のグラスが自分の心で、それが満たされれば幸せが周囲に行き渡るようになる。循環がよくなると協力する人が出てきて、注ぐシャンパンが枯れることはない――。
 検定を始めて間もなく6年になる。全国に広がった「ほめ達」は、2万3千人を超えた。
 「暗闇の中ではダイヤモンドも石ころ。ろうそくの明かりをともし、普段は見えていない価値に気づける人をこれからも増やしていきたい」(兼田徳幸)」(
2016/01/01付「朝日新聞」より)

話は飛ぶが、今月の日経「私の履歴書」は、小椋佳氏。もう40年近い“付き合い”になるが、まさに秘話の連続・・・
その中にこんな事が出て来た。

小椋佳(4) 中の下 有象無象が褒められた 小学校の授業後「お歌上手ね」
・・・黒門小学校では、クラス替えということがなかった。従って6年間全く同じクラスメートで過ごした。一方、担任の先生はよく替わった。小幡、野口、米田、柿沼の4先生に教わった。・・・・。
 柿沼先生は理科系の先生なのに格別に音楽が好きだった。クラスで器楽バンドを組ませ、放課後演奏の練習をさせた。柿沼先生は歌も大好きで、クラス全体を合唱団と見立て、毎朝の始業の前と一日の授業の終わりには必ず何らかの曲を合唱させた。
 どの先生の時だったか、私たち3組担任の先生が風邪か何かで休み、その日一日は1組の稲葉先生という女性教師が代わって私たち3組を受け持つことになった。その一日の中のある時間、稲葉先生はクラス全員一人一人独唱をする授業とした。「おせどの おせどの たけやぶは すずめの ねんねの おやどです」という同じ一節を五十数人が順番に歌った。
 その授業が終わった後、稲葉先生がつかつかと私の傍に来て、「カンダコウジ君、お歌上手ね」と言ってくれた。褒められるという覚えがおよそなかった私である。この一言は私の心に強烈に残った。・・・(作詩・作曲家)」(
2016/01/05付「日経新聞」「私の履歴書~小椋佳」より)

子どもの頃の、先生のひと言で、それからの人生が大きく変わることがある。
小椋佳氏の作曲家、歌手として業績も、このようなことが背景にあったのかも知れない。

同様に、NHKラジオ深夜便で、色々な人の話を聞いていると、アーティストや学者など、その道を極めた人が、その道に進むことになったキッカケが、小学校時代の先生からのひと言であった例は、非常に多く聞く。

自分は、褒める事が苦手だが、車の中では、カミさんの「孫だけは褒めて育てたいね」という話になった。
新しい命は、無限の可能性があるだけに、自分を肯定できる人生を歩んでほしいもの・・・。

それにしても、今朝の天声人語の「ほめ言葉という薪を焚く」題は、うまい!

(関連記事)
「褒めるコツ」・・・ 
「教育というのはいいところをもっと褒めること」 

160111nekokan <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

「褒められると人は伸びる」と言うことを、この年になって改めて「痛感」しています。

 現役の時、生徒に【おべんちゃら】は言いたくなくて、「褒めるに値するときだけ」褒めてきました。私が「よし」と言うと生徒の顔が輝いたことを知っていますが、今思えば、もっと褒めても良かったな、と思います。

 お孫さんは、是非。しっかり褒めて育てて下さい。

【エムズの片割れより】
真に褒める状況に無い時に、褒めると、悲惨な結果となります。回りで見ていても見苦しい・・・。だから「誰もが認める褒める状況」に褒めるのが自分にとって無難・・・でした。
要は、どこで線を引くか・・・
自分も、あらゆる状況で、もっと基準を低くしておくべきだったと、今では思っています。 

投稿: Tamakist | 2016年1月12日 (火) 10:00

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