上意下達の企業文化と個人の防衛法
先日の日経新聞にこんな記事があった。
「VW排ガス不正 私はこう見る「異議許さぬ社風が原因」
元GM副会長 ボブ・ラッツ氏
独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正では、強いトップの要求に部下が逆らえない独特の企業文化も背景にあったとされている。東芝の会計不祥事もトップの指示が引き金で、ガバナンスのあり方は日本企業も避けては通れない問題だ。元ゼネラル・モーターズ(GM)副会長で長く自動車メーカーの経営に関わってきたボブ・ラッツ氏に話を聞いた。
――経営者の視点から見てなぜこうした不正が起きたと考えますか。
「過去にも自動車メーカーは色々な批判にさらされてきた。だが、GMの点火スイッチやトヨタ自動車の加速の問題はある種の技術的ミスが原因だ。VWは違う。誰かが意図を持ち、窒素酸化物(NOx)の排出量を欺こうとした。オーナー一族の(元社長の)ピエヒ氏が強い権力を持ち、誰も異議を唱えられない企業文化が不正を生んだ」
「私も過去にピエヒ氏とは会ったことがあるが、彼はやりたいと思ったことは部下に命じてその通りに実現するタイプの人間だ。部下はクビになりたくないので『できません』とは言えない。実はGMも過去にVWと同様のディーゼルエンジンを作ろうとしたがうまくいかず、私はできないと言う技術者を叱責していた。今思えばVWの技術者が上に本当のことを言っていなかったということだろう」
――米欧で異なる環境規制に対応するためだったとの見方もあります。
「米欧、そして日本で規制基準が異なるのは事実だ。3地域それぞれの規制に見合った車をつくるために開発コストが膨らんでいるという問題はある。だがどの地域にもそこに根ざした官僚機構はあるものでそれが統合されるはずもない。規制の差異を不正の理由にあげるのは間違っている。フォード・モーターもGMも、米国ではディーゼル車に力を入れないという選択をしている」
「ディーゼルが悪い技術だとは思わない。ただ、今の米規制で誰もが買える手ごろな価格のディーゼル乗用車をつくるのはほぼ不可能だ。規制をパスするには車の内部に小さな化学工場を構えるくらいの技術的な対応がいる。それにかかるコストは数千ドル規模にのぼる」
――新トップの下、企業体質は変えられますか。
「ミュラー新社長は内部昇格だ。本来であれば外部の人材を招く方が良かったと思う。会社が構造的な問題に陥ってしまった場合は、外の人を活用したほうが再建がうまくいく。ただ、今のVWを切り盛りできる人材は見つけられないと思う。会社を隠し事のない誠実で開かれたものにし、従業員をひとつにまとめるのは大変な作業だ」
「新社長は迅速に、かつ強い意志を持ってこれまでの企業文化を変える努力をしないといけない。ウソや違法行為があれば放置せずにすぐに取り除かないといけない。リーダーが率先して変化を示せば、そうした行動がやがて口づてに社内中に広がり、会社が良い方向に向かうだろう」
――再建策はどう見ますか。事業の売却なども選択肢になるのでは。
「そういう記事が散見されるが、例えば高級車の『ランボルギーニ』部門を売っても対価はせいぜい8億ユーロだろうし『ブガッティ』も3億~4億ユーロ程度だ。VWが必要としているのはもっと巨額のお金だ。リコール(無償の回収・修理)や訴訟で300億ユーロから500億ユーロの費用がかかると考えると、一部部門を売却したところで大きな助けにはならない」(ニューヨーク=中西豊紀)」(2015/12/09付「日経新聞」p7より)
軍隊ほどではないが、どんな企業や組織にも「上意下達(じょういかたつ)」の文化はある。上司の命令に対し、部下が動かなければ、組織は動かない。しかし、それは程度問題。誰もが眉をひそめるような指示内容であれば、動く方も仕方なく「最小限」の動きになる。
それは上司の責任の取り方も背景にある。指示を出した上司が結果責任を取る姿勢なら、部下も思いきって動ける。しかしそれは少数派。ほとんどの上司は、逃げる。保身から責任を部下に押し付ける。それが普通・・・
今日の新聞に、ブラック企業と指弾されたワタミのトップが、白旗を揚げて自らの責任を認めた、とある。遅きに失する。
VWもトップがどれほど関与していたかは知らないが、企業ぐるみの違法行為であることは確からしい。
一方、東芝の場合は、「忖度(そんたく)」という言葉が似合っている。いわゆる「あうんの呼吸」というヤツだ。実は今の日本の政治もまったく同じで、総理の意向がすべて。周囲は首相の意向を忖度して動いている。これが目を覆う惨状であることは、周知のこと。
上のVWと同じ「トップの要求に部下が逆らえない独特の企業文化」だと言われている東芝も、今朝の日経では、「テレビは国内販売も大幅に見直す方針で、テレビやパソコンの開発拠点がある青梅事業所(東京都青梅市)も今後の活用方法について検討する。国内家電量販店での販売撤退や青梅事業所の閉鎖に踏み切れば、国内テレビメーカーとして老舗の名門企業がテレビから完全撤退することになる。」とまで書かれている。REGZAが消える??
上意下達で崩壊した「亀山モデル」もその代表例だが、このように、大きな、絶対に揺るがないと思われていたものが簡単に瓦解していく現代社会。
今の若者は、そんな社会で、何をもって安定した生活を得るのか? 企業は決して個人を守ってはくれない。だから個人で自らを守るしかない。国家資格など、公認の実力の鎧で自己を守るしか方法は無いのか・・・
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コメント
わたし、現役頃は、極めて能無しの下ッ端公務員でした…
アレコレあって、体調不安定で下痢や不整脈・狭心痛など等で苦しんでいました、
今だって能無しのことは同じですが…が、開放感のなか、日々楽しく暮らし得ています、
体調が激変し、今では冬でも素足で平気、下痢も風邪も関係ない、狭心痛が消え不整脈もほとんどなくなった、
VWは、上から下まで体調不全な方等が多いのではないでしょうかねぇ~、
あぁ、このブログを知って、日々の楽しさが又々増えました、
ブログ中の音楽を片端から聴いていますが…今朝は、2010・06・03にアップの「ドンナ・ドンナ」に気持ちが大きく傾きました、
さっそく、楽譜を探し⇒尺八譜に採取しました、
“コレは”と、思うと、と、趣味の尺八で吹いてみなくなってしまうのです、
【エムズの片割れより】
病気や体調不良は、ほとんどの原因がストレスなのでしょうね。
自分も退職したら、不整脈の薬を止めてみようかな・・・
投稿: 隠居波平 | 2015年12月11日 (金) 07:08