安保法「違憲」訴訟の行方
先日の朝日新聞に、安保法の訴訟の行方についての記事が載っていた。
「安保法「違憲」訴訟、行方は~抽象的訴え「対象外」~裁判所、4件を門前払い
9月に成立した安全保障関連法を「憲法違反だ」と訴える裁判の提訴が相次いでいる。憲法学者らも大規模な集団提訴を準備中だ。いずれ司法を舞台に本格的な論争が始まるが、裁判所が憲法判断を示すには高いハードルがある。
東京地裁は11日までに、安保法の廃止や違憲であることの確認を求める訴訟を少なくとも4件退けた。いずれも口頭弁論すら開かれなかった。このうち初とみられる訴訟の判決が2件、10月8日にあった。松山市の男性が「安保法は憲法9条に違反し無効だ」と訴えた訴訟では、地裁は「法律が憲法に適合するかの判断を抽象的に求めるものであり、審判対象にならない」とした。男性は控訴したが東京高裁は今月11日、控訴を棄却した。
裁判所は、法律が違憲かどうかを判断する「違憲審査権」を持つ。だが、具体的に損害を受けたなどの理由がなければ、中身を審理せずに退ける「門前払い」となってしまう。判例では、「抽象的に法律の違憲性を問うことはできない」とされているからだ。
では、どんな訴訟なら裁判所が安保法の憲法判断をすることになるのか。
専門家が挙げるのは、自衛隊員が訴える訴訟だ。安保法に基づく派遣命令を受けたり、この命令を拒否して処分を受けたりしたことを理由に「9条に反する」として、取り消しを求めることが想定される。ただ、自衛隊員がこうした訴訟を現実に起こせるのか、という問題がある。
直接の当事者以外ではどうか。「安保法によって憲法が保障する『平和的生存権』が侵害され、精神的苦痛を受けた」と国に慰謝料を求めるとともに、違憲であることの確認を求める方法がある。 こうした主張を盛り込んだ訴訟は、2003年の自衛隊のイラク派遣をめぐり、東京や大阪など全国各地の11地裁で起こされた。だが、「原告の権利が具体的に侵害されたとは言えない」として、ほとんどが憲法との関係に触れずに退けられた。
唯一、二審の名古屋高裁判決は08年、原告の敗訴としながらも、「憲法9条に反する活動を含んでいる」と指摘し、注目された。結論は国の勝訴だったため、国は上告できず、判決はそのまま確定した。当時の福田康夫首相は、法的に拘束力を持たない「傍論」だとして派遣を続けた。
傍論とは、判決の中で結論を導くのに直接関連のない部分のことだ。あるベテラン裁判官は「傍論を抑制する裁判官は多いが、やむにやまれない思いで書く人もいる。安保法訴訟でも傍論で違憲と指摘することはあり得る」とみる。ただ、傍論ではない憲法判断を得るには、イラク派遣の判決でも示されたような「具体的な権利侵害がない」という判例を乗り越える主張を組み立てる必要がある。
■「平和的生存権、侵害」 提訴準備の学者ら、違い強調
安保法制をめぐり、集団提訴の準備を進めている憲法学者の小林節・慶大名誉教授は「安保法の成立で、戦後初めて明確に平和的生存権が侵害された」と、これまでの同様の訴訟との違いを強調する。学者やジャーナリスト、俳優など著名人100人の原告団と、元裁判官を含む1千人にものぼる弁護団を結成する予定。安保法施行後の来年4月以降に提訴するという。
中身の審理に入ったとしても、「高度に政治的な問題には司法判断を下さない」とする「統治行為論」と呼ばれる壁がある。小林氏は「最終的に厳しい判断になるとしても、訴訟を通じて『戦争法は違憲だ』と訴え続けることで、世論の喚起にもつながる」と話す。 (山本亮介、千葉雄高)
◆キーワード
<違憲審査権> 憲法81条は最高裁について「法律が憲法に適合するか否かを最終的に決定する権限がある」と定めており、最高裁は「憲法の番人」とも呼ばれる。ただし判例では、権力分立の観点から、国会の裁量の範囲に属するものや、高度に政治的な行為は、審査していない。また、具体的な事件を離れて抽象的に法律の合憲性を判断する根拠はないとされ、法律に伴う具体的な損害や行政処分を受けた者が訴えなければ違憲性は判断されない。戦後、最高裁が法律を違憲とした判決はわずか9件しかない。」(2015/11/12付「朝日新聞」p38より)
この記事には、いくつかのキーワードがある。
「法律が憲法に適合するかの判断を抽象的に求めるものであり、審判対象にならない」
「高度に政治的な問題には司法判断を下さない」とする「統治行為論」
(判例では、権力分立の観点から、国会の裁量の範囲に属するものや、高度に政治的な行為は、審査していない。)
戦後、最高裁が法律を違憲とした判決はわずか9件しかない。
1票の格差の裁判といい、どう考えても、日本に置いて「違憲審査権」が行使されているようには思えない。
我々が学校で教わった「三権分立」。それをいつ教えているのだろう・・・と調べてみると、どうやら小学校6年生で教えているらしい。
しかし、それは建前であって、実際は行政権が圧倒的な権力を持っているのが現実。自分の感じるところ、日本における権力構造は、行政:8割、立法:2割、司法:0割では??
WOWOWドラマ「予告犯 -THE PAIN-」(ここ)ではないが、裁判所も所詮、メンツの世界。
長い歴史を辿っても、構造的に政府の言いなり、検察の求刑のオウム返しの構造になってしまっているので、一人や二人の判決での造反があっても、とても歯が立たない。とても司法の風土は変わらない。
唯一、国民が“教科書的に”期待したいのは司法だが、まあ無理な願望かも・・・
まあ、白けながらも、裁判の行方を追い、ミャンマーのような、選挙での改革を目指すしかないのだが、でも、彼の民主党でさえ、分裂の話がチラチラ・・・
選挙で変化を期待するにしても、投票相手がいないのでは、それも無理・・・
嗚呼・・・
| 0
コメント
本当に 嗚呼、、です。気持ちの悪い団体が気炎を挙げて憲法を改悪しようとしています。福島、東北のことは無いものにし、原発のコントロールは出来ていないのに国民にも 外国にも嘘をついています。偏った本を並べるな、といいながら 一方では日本礼賛の本を並べることはいいというのでしょうか。自民党の草案でみる憲法になってしまったら 個人として尊重されるべき私たちの権利はなくなり 人(というのは代替可能な人という定義)になってしまう、と聞きました。
でも希望は持ち続けようと思います。できることをささやかでもやっていこうと思います。毎月19日は国会前へ、3日にはアベ政治許さないを掲揚、何か集会をみつけては参加をします。本当のことを知るために隠さず取材報道してくれるメディアを応援します。
エムズの片割れさまからもいろいろ教えていただきます。嗚呼、、私はただ一点、孫たちの世代に顔向けができないという思いなんです。
【エムズの片割れより】
昨夜のパリのテロ。
「だから日本でも戒厳令は必要だ」なんて、なるのでしょうか・・・!?
少なくとも、アベ君は「日本も積極的に関与する」と言っているようで、怖いですね。
投稿: エムエス | 2015年11月14日 (土) 00:14