NHK「障害者20万人の虐殺」~ドイツ70年目の真実
何気なく見出した録画番組で、ショックを受ける事がある。この番組も、さっき何気なく見出したのだが、終わってみて、心に何かがズシンと響いた。
NHK ETV特集「それはホロコーストの"リハーサル"だった~障害者虐殺70年目の真実~」(2015/11/07放送)を見た。
NHKの解説には、こうある。
「それはホロコーストの"リハーサル"だった
~障害者虐殺70年目の真実~
600万人以上のユダヤ人犠牲者を出し、「人類史上、最大の悲劇」として語り継がれてきたナチス・ドイツによるホロコースト。しかし、ユダヤ人大虐殺の前段に、いわば“リハーサル”として、およそ20万人ものドイツ人の精神障害者や知的障害者、回復の見込みがないとされた病人たちがガス室などで殺害されたことについては、表だって語られてこなかった。
終戦から70年もの年月がたった今、ようやく事実に向き合う動きが始まっている。きっかけの一つは5年前、ドイツ精神医学精神療法神経学会が長年の沈黙を破り、過去に患者の殺害に大きく関わったとして謝罪したこと。学会は事実究明のために専門家を入れた国際委員会を設置、いかにして医師たちが“自発的に”殺人に関わるようになったのかなどを報告書にまとめ、この秋発表する。
番組では、こうした暗い歴史を背負う現場を、日本の障害者運動をリードしてきた藤井克徳さん(自身は視覚障害)が訪ねる。ホロコーストの“リハーサル”はどうして起きたのか、そして止めようとする人たちはいなかったのか・・・。
資料や遺族の証言などから、時空を超えていま、問いかけられていることを考える。」(ここより)
何がショックだったのか・・・
「ホロコーストが始まる数年前から、精神病院にガス室が作られ、回復の見込みがないとされた病人や精神障がい者が殺されていた。」
彼らは生きる価値がないとされ、殺害には多くの医療者がかかわっていた。」
「第三者による調査委員会の報告書がこの秋、まとまりました。明らかになったのは、医師たちがナチスに強制されたわけではなかった、という事実でした。」
「ダーウィンの種の起源。強い者が生き残り、弱い者は淘汰されていくという自然界の摂理を説いたものでした。これを人間にもあてはめ、劣等な人間は淘汰されるとしたのが、社会ダーウィニズムでした。こうした思想は、優秀な遺伝的素質を持つ人間だけを残していこうとする優生学と結びつき、世界中に広がります。」
ヒトラーが台頭し、ユダヤ人迫害と同時に、遺伝病や障がい者を無くすことを目的とした法律も整備。遺伝病の子孫を予防する法律「断種法」。
ドイツ精神医学研究所のユーリンの言葉。「ヒトラーのおかげで、30年間私たちが夢みてきた優生思想が実現された。」
そして実行されて行く・・・
「大勢の医療者、近隣の住民たち、たくさんの人が気付いていながら止められなかった殺害・・・。」
そんな中、ある人が声を挙げる。ミュンスターの司教フォン・ガーレンだった。
1941年夏、教会の説教の中で、「行われていることは障害者を救済する恵みの死ではなく、たんなる殺害だ」と明言した。その原稿は、信者たちの手で拡散されて行った。
「貧しい人 病人 非生産的人な人 いて当たり前だ。
私たちは 他者から生産的であると認められた時だけ、生きる権利があるというのか
非生産的な市民を殺してもいいとの原則ができ 実行されるならば 我々が老いて弱った時 我々も殺されるだろう
非生産的な市民を殺してよいとするならば いま 弱者として標的にされている精神病者だけでなく 非生産的な人 病人 傷病兵 仕事で体が不自由になった人すべて 老いて弱った時の 私たち全てを殺すことが許されるだろう 」
司教の説教からわずか20日後、1941年8月24日、ヒトラーはT作戦の中止を命令。
「このことで分かるのは、市民として勇気を出して公然と声を上がれば、政府の行動を阻止する余地があったということです。ナチスのような政権も国民の感情をとても気にしていたのです。」
1942年、ユダヤ人の虐殺が始まる。この時に、障がい者殺害で培ったノウハウを活かして大規模殺害を実行・・・。
プッシュマンさん(62)は語る。
父の3つ下の叔母がてんかんのため、殺された。17歳だった。しかし最近まで、叔母が存在していたことさえ知らなかった。父は一度も妹のことを話題にしなかった。
家族も差別意識が全くなくはなかったのは悲しい・・・
「叔母が殺されたことは私にとってとても悲しいことです。でも、私が本当に悲しいのは叔母の死ではなく、家族がずっと沈黙を続けてきたことなんです。それが今でも私は悲しくて仕方がないのです。ヘルガおばさんの尊厳を取り戻し、人びとの記憶に残していきたいのです。」
そして新聞広告に、あるメッセージを載せた。亡き叔母にあてたメッセージ。
「ヘルガ・オルトレップ
あなたはナチスのいいなりになった協力者によって殺された
そして家族によっても黙殺された
わたしはあなたを忘れない
あなたの姪 ギーゼラより」
Netでこの番組をみるには下記。
http://www.dailymotion.com/video/x3cy1xd
日本で現在進んでいる戦争への道に対し、我々に何か啓示を与える番組のような気がした。
声を挙げる大切さ・・・
先日のパリでの同時多発テロ。
フランスの大統領は、もはや戦争状態だと宣言。
そしてISに対する世界中の報復。そして憎しみが憎しみを呼び、泥沼化して行く・・・
先の安保法制の成立でも、「日本は戦争なんか・・・」とタカを括っていた人が、目の前に、日本も戦争に巻き込まれる恐れが現実化してきたことに、おののいている・・・。
戦後70年と言っても、戦争は過去のことではない。そう思い知らされる、最近の世界の動きであり、また番組である。
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コメント
エムズ様 今朝の朝日新聞の38面の囲み記事、読まれましたか。教育委員とやらになった銀座の画廊の副社長の長谷川智恵子氏の発言です。妊娠初期に障害がわかったら生むのをやめさせないと、予算も莫大になるし、育てる家族も大変だろうというという発言です。
この人は高年齢になって身体が不自由になったら自分で迷惑を掛けないように死んでいくつもりなのでしょうか。人間はいろいろな人がいて
持ちつ持たれつで生活する動物だと思うのですが、人間に成長していない人が教育委員などになっていいのでしょうか。障害を持つ人を慈しみ大切にする心のない人が人の上に立ってはいけません。神様のような優しい純真な障害者の心を一度のぞけば良いのにと思います。かって
石原慎太郎氏が「こいつらに人間の感情があるのか」と言うような事を言っているのを聞いた事があります。狂った社会を作るのはこういう人たちです。今朝の記事にはショックを覚えました。
【エムズの片割れより】
読みました。まさにこの記事と同じ話ですね。
長谷川委員は、娘さんが3人いるとのことですが、もし障がい者だったら、生まれる前に殺したんでしょうかね?
そして、自分が老いて障がい者になり、介護保険で「大変な予算」を使う立場になった時、どう言い訳をするのか・・・
「障がい者は、存在する価値が無い」と言う教育委員のいる茨城の教育界。誰が人選したのでしょう・・・。
そして茨城の障害のある子どものために、長谷川委員は何をしてくれるのでしょう・・・。まさか、かつてのドイツのように「死ね」とは言わないでしょうね・・・。
投稿: 白萩 | 2015年11月19日 (木) 13:26
優性思想に基ずく他民族への非人間的な迫害は731部隊による生体実験、九州大学・捕虜解剖事件など私たちの歴史にも起こったことです。民族排外主義を同じ根っこにした苦い歴史です。
70数年前全体が狂気に流され 個人の反対や抵抗がほとんど無力にも見えた時代にあの「日中戦争」の戦陣で「中国人 捕虜」の「試し切り=虐殺」を直前まで逡巡したうえで拒否し 当然 凄惨なリンチを受けながら耐えた人がいました。戦後40年余のちに出された渡辺 良三さんの歌集[小さな抵抗]を息をつめて読んでいます。私ならどうする?何ができる?という「問い」を聴きながら。
【エムズの片割れより】
ヒトラーのドイツは、日本にとって決して他人事ではなく、日本軍も同じような事をしていたと、再々認識しています。
投稿: todo | 2015年11月20日 (金) 23:05