« グレン・グールドの「トルコ行進曲」 | トップページ | 愛犬・メイ子の食欲が無い・・・ »

2015年10月12日 (月)

実家の空き家を「業者買取」で処分した話

今朝(2015/10/12)の朝日新聞に「税の現場から 空き家放置で「実質増税」」という記事があった。

税の現場から 空き家放置で「実質増税」
 神奈川県横須賀市の60代の男性はこの夏、8年前に親から相続して以来、ずっと空き家になっていた実家の処分に奔走した。放置すれば、空き家にかかる固定資産税が一気に上がる可能性が出てきたからだ。
 実家は築45年の木造2階建て。駅まで歩いて20分かかる。立地の悪さもあって借り手も、買い手もまったくつかなかった。壁面の塗装ははがれ、最近では隣家から荒れた庭木の苦情がくるようになっていた。
 そんな状態でも放置してきたのは、空き家でも立ってさえいれば税金が安く済んだから151012akiya だ。戸建ての住宅用地は、固定資産税を計算する際の課税標準額が土地の評価額の6分の1(200平方メートルを超えた分は3分の1)になる特例があるため、男性の実家の税金も年5万円ほどで済んでいた。
 だが、5月に「空き家対策特別措置法」が施行され、事情が変わった。倒壊の危険や衛生上の問題がある空き家を、市町村が「特定空き家」に認定し、持ち主に対して改善を迫るものだ。修理するなどして空き家をきれいな状態に保たないと、固定資産税の優遇措置を受けられず、「実質増税」になってしまう。
 「このままだと金食い虫になりかねない」と感じた男性は、懇意の不動産業者に頼み込み、なんとか空き家を数百万円で買い取ってもらった。ただ、その所得には、不動産を売った際の課税の取り決めによって80万円近い税金がかかることになった。
 「売れない、貸せない、税金ばかりかかる。親には申し訳ないが、三重苦のありがた迷惑な遺産でした」。男性はそう話す。・・・」(2015/10/12付「朝日新聞」p4より)

我が家でも、これと全く同じ経験をした。
我が家の実家の家は、お袋が骨折して入院し、老人ホームに入った後に亡くなって以来、住まなくなってもう4年になる。家財道具は処分した(ここ)。
さて今度は土地と家をどうするか・・・

幸いにも、家の近くに両親が懇意にして頂いた家があり、その人に庭の雑草取りを頼んでいたので、まだ廃屋までは行っていない。しかし、それは時間の問題。
売却すればそれで済むのだが、そう事は簡単に済まない。上の記事と同様、売れないのである。過疎化が進む田舎の家の辺りでは、150坪の土地と昭和15年に建った家を買う人はいないのである。

土地が売れないことは前々から聞いていた。それを前提にどうするか・・・。上に記事とよく似ているが、今日はそんな体験記である。

実家に帰る予定がないのに持ち続けていた場合、固定資産税だけでなく、「草取りをしなければ・・・」という精神的負担は簡単ではない。実家の隣の更地も、市から指示が来て、毎年の草取りが大変だと言うことを聞いた。やはりウワサは現実・・・

そんな背景を承知の上で、今回はタダでも良いから、とにかく引き取ってくれるところを探した。
Net経由や家の近くの不動産屋に、計12社に声を掛けた。Net経由で同報で査定依頼をした9社中、3社からは反応がなかった。
反応があった1社からの回答は、「現地を見てきた。当社は買取専門だが、この土地は買えない。買い手がいない。家を壊すのに100万はかかる。タダで貰っても、マイナス100万からのスタート。この辺りの土地は売れない。」という回答。
同じく大手の不動産会社からも、「現在この辺りの土地は200件以上売り出されており厳しい状況です。また、少子高齢化、都心回帰により郊外は空家問題も深刻になっております。現在100坪以上の土地は市場性が弱く60坪前後でご検討のお客様が多い状況です。買取業者であれば相場の7掛けが目安になりますが、ただ買取業者もニュータウン以外は積極的ではございません。」との回答。

予想通りの展開。
それで、土地カンがあるであろう地元の不動産会社へ電話してみた。仲介会社が2社「探している人がいるので・・」と話を聞いてくれた。その2社は、結局同じ建売業者で、いちおう現地を見に行ってくれたものの、「今回は見合わせる」との回答。
その窮地を救ってくれたのが、ある建設会社。そこが「業者買取」で買ってくれるという。ただし買った時の1/10の値段。でも“現況で”買ってくれる・・・と言う。

そこにNetで投げかけていた、少し遠い会社から電話。現地を見に行ってから「買いたい」と言い出した。するとこちらも少し欲が出てくる。値段を若干高くしてくれると言うので・・・。
それで、「ここに決定!」としたまでは良かったが、その会社が法務局の公図を見に行ったら、何と実家の土地と道路との間に、第三者の土地が挟まっており、結果として「道路に2m以上面していないので、家が建てられず、無価値の土地なので買えない」と言ってきた。
これにはビックリ・・・
送って貰った公図を見ると、確かに家の道路側、側溝部分が、道幅を広げるために削られて分泌されており、それが第三者の名義になっている。つまりその側溝部分の移転登記がされていない。本来市に登記を移すべきはずのものが、放置されている。しかも登記は昭和19年。しかも、それは我が家だけでなく、道の両側の家がそれぞれ分筆されている。

不動産屋は「その土地をこちらで買って、全体として道路に面する形にならない限り買えない」の一点張り。仕方がないので、Netで調べると、何とか細い部分の土地所有者の家が分かった。
図々しく電話をかけると、登記されている人はとっくの昔に亡くなっている。その息子は認知症があり、現在は入院中とか。
不動産屋にそれを言うと、移転登記は非常に困難だという。まず相続手続きが必要だが、相続される人が認知症では、例えうまく相続されたとしても売買が成立せず、その息子が後見人になっても、土地の処分、すなわち財産の売却なので、そう簡単には行かない・・・・

さて困った。道路に面していないとは思わなかった。昔この家を親父が買ったときは、家が建っている状態で買ったため、その辺りは考えていなかった模様・・・

それにしても、「そもそも論」では“少しヘン”。市に供出したはずの道路用地。それを、市が登記をサボったおかげで、供出した土地所有者が家の建て替えが出来なくなる?そんなバカな・・・。
そもそも、その道路に面した並びの家は、現に家の建て替えをしている。少なくても、建築確認が降りないことはないはず。そんないい加減な土地は、田舎に行けばゴマンとあるはず・・・。
不動産屋にそれを言うと、「この土地は無価値」と言い放った前言をひるがえして、「確かに建築確認は下りるかも知れないが、当社としては、買う人の事も考え、まっさらでないと買えない」とのこと。「値段は言い値でよいから」という当方の申し入れにもかかわらず、結局、その会社は降りてしまった。

さて、前に「1/10の値段なら、現況で買う」と言ってくれた会社に、恥を忍んで電話。すべてを話す。するとさすが社長さん。「いいですよ。ビジネスですから。ウチの事務所の前も、個人名の土地になっている」との事。
道路に面して、側溝部分が細く第三者の名義になっている、という話に関しては、「それらの問題を解決するのが我々の仕事ですから」。そして止めた業者については、「肝っ玉の小さい人だな。まだ若い人だね」と、その不動産屋を知っている風・・・
結局、最初のその会社に買って貰うことにした。

とにかく買ってくれる会社が見つかって、有り難かった。
仲介業者は、まず我々売り主が土地を更地にして、話はそれからだという。更地にするのには200万円かかる。それを自分で行って、もし売れなければ、自分が丸損。よって「現況」で買ってくれることが我々にとって絶対条件。この会社はそれを飲んでくれただけで充分。

言うまでもなく、土地の処分には仲介と業者買取があるが、仲介だと後々面倒が起こる可能性がある。「井戸があるとは思わなかった」とか・・・。それに対して、業者買取は、前提が「プロが見て買ったのでしょう」ということで、瑕疵担保責任は免除されるという。つまり売買契約と同時に、一切の後腐れが無い。安くなるが、これが最大のメリット。

かくして、胃が痛くなる交渉の毎日だったが、何とか処分出来た。ちょうど1ヶ月前である。

振り返ると、
・実家に戻って住む気が無いのであれば、一日も早い処分が必要。日々土地価は下がっている。
・「空き家対策特別措置法」のこともあり、これから益々“地方の実家”の空き家と土地が不動産市場に溢れてくるので、市場はだぶつき、相場はどんどん下がる。
・ただ「持っているだけ」は、税金と草取りに悩まされるだけで、何のメリットもない。
・土地カンのある実家に近いベテラン不動産屋に、「業者買取」で頼む。
・値段は言い値で良しとする。とにかく「現況で売れる」ことが絶対条件。
・買った時の値段よりも安い値段で売ったので、売却損が出たことになり、税金はゼロ。確定申告も不要とのこと。まあ、購入の時の契約書も、安く売った売却の時の契約書もあるので、もし税務署が何か言ってきたら、幾らでも説明は出来る。

両親が半世紀近く住んだ家。それなりに処分に抵抗もある。しかし廃屋になって「お化け屋敷」になる事よりも、新しい家が出来て、新たらしい人が住むことの方が、よっぽど供養になると思う。
今回は弟が言い出して処分することになったが、今朝の新聞を読んで、「やっぱりそうか・・・」と、早々に処分して良かったと思った次第である。

(関連記事)
3軒分の実家の遺品を30万円で整理した話 

151012orenobed <付録>「ボケて(bokete)」より

|

« グレン・グールドの「トルコ行進曲」 | トップページ | 愛犬・メイ子の食欲が無い・・・ »

コメント

まさに、うちの実家も同じ状況に置かれています。入院中の父が他界して三週間後、庭の手入れ中の母が心筋梗塞で亡くなりました。
干しっぱなしの洗濯物、お昼に食べようと思っていた昨晩のおかず、畑に植えようと思って買った苗。。。私の心の喪失感は今でも癒せません。
少しずつ片付けをしているうちに、もう半年がゆうに過ぎてしまいました。
信頼できる不動産屋さんに「住まないのであれば一日でも早く処分を。ご両親がせっかく残してくれた財産ですから」と言われました。
わかっています。わかっていますがここは私の育った家です。両親が私を育ててくれた家です。母が亡くなった庭です。。。
そんな思いで毎週草取り、枝切り、遺品整理に労力を費やしています。
誰もが経験する節目、世間の皆さんはどうしているのだろう、気持ちの区切りをどうやってつけているのだろう、そんな思いで何度も何度も検索し『エムズの片割れ』さんに巡り合うことができました。
雑草だらけの庭に咲く、今年限りであろう綺麗な花を写真に収め、泣き出しそうな気持に踏ん切りを付ける道しるべを見せてもらったような気がします。

長文になり、またセンチな吐露になってしまい大変失礼いたしました。

『エムズの片割れ』さんが最後に結んでいた文面、私にもそんな気持ちが訪れるよう、乗り切っていこうと思います。

ありがとうございました。

【エムズの片割れより】
それはご愁傷さまでした。
先日(2017/06/04付)も書きましたが、実家を売って2年弱。その家は、今や草ボウボウで庭にも入れない状態。でも、もう他人のもの。評論すら出来ない立場・・・
でも処分の結果、肩の荷がおりて良かったと思っています。
早く心の整理が出来ることを祈念しています。

投稿: タカビ | 2017年6月17日 (土) 18:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« グレン・グールドの「トルコ行進曲」 | トップページ | 愛犬・メイ子の食欲が無い・・・ »