「業績」と「評判」
人事異動の4月である。先日のこんな記事が気になった。
「人事に見る「評判」の実体 (高原豪久氏の経営者ブログ)
4月は多くの会社で人事異動があり、新しい仲間と出会う季節でもあります。社内で初対面の人と一緒に仕事をするときには、「この人はどんな人なのだろうか」と思うこともあります。楽しみでもあり、不安でもあります。
さて、人事コンサルタント業界では「企業の人事は評価ではなく評判で決まる」と言うそうです。これは業績を抜群に上げても評判が芳しくないと抜擢(てき)は慎重にすべきだということでしょう。我が社でも、業績は良いのに評判はもう一つだったり、評判は良いのに業績が上がらなかったりと、その内容は必ずしも一致しません。
定量評価は業績基準や数値目標を達成すれば高まりますが、定性的である評判は主観的イメージの累積であり、その観点では、商品ブランドである「ムーニー」や「ソフィ」といったものと同じです。そしてこれも同様に評判は長い時間をかけて築かれるものですので、一旦落とすと再び高めるにはこれまでかけた分より多くの時間がかかることを覚悟しなければなりません。
しかし一旦、相当高い評判を確立することができれば、些細(ささい)なことではビクともしないほど盤石になります。そして評価と評判は相互に密接に関係していて、評価が評判を作り、そして評判が評価を高めます。評価はあくまで賞与などの短期的な指標として使いますが、評判は昇格や昇進を検討する際にはより重要視します。
これは決して人事制度のダブルスタンダードではなく、短期的処遇には評価を、長期的処遇には評判という短期と長期の指標を組み合わせた一つの整合性をもっています。
それでは評判の実体とはなんでしょうか。「業績をあげた人には報酬で報い、徳ある人材にはより高い地位を与えよ」という古くからの人事の原則があります。難しいのは「徳」をどう判断するかです。業績は定量的に評価できますが、「徳」は人望やカリスマ性、胆力のようなものであり、可視化できるものではありません。
それでは、評判はどうやって作られるのでしょうか。
評判というのは、ある人が別の人に下した評価そのものではありません。これもSNSなどを用いた口コミマーケティングと同じで、その人以外の第三者に伝えられて初めて評判となるのです。その時、受け手が同じ意見や別のルートから同じような話を聞いていたら、その評判は良い内容でも悪い内容でも、より一層強化され拡散されるそうです。ということは組織で最も身近なメンバーが、評判の形成について最も影響力のある存在だということですね。
そして評判の内容も良いものよりも悪いものの方が圧倒的に多く話されますし、「悪事千里を走る」という諺(ことわざ)もあるように、驚くほど一気に拡散します。話す方も聞く方も、他人についての悪い話の方が人間は本能的にインセンティブが働くようです(苦笑)。従って、悪い評判はすぐにできますが、良い評判を作るのはなかなか難しいのです。
評判の悪い人の特徴は、(1)自信過剰のナルシスト(2)自分のことは棚に上げる評論家(3)自分の立場をわきまえず空気を読まないマイペース、が代表です。
逆に評判の良い人はその反対の特徴を持っています。つまり、(1)他者への理解からなるきめ細かい配慮が十分にできる人(2)労をいとわない有言実行・率先垂範ができる人、そして(3)自身の組織内での立場と責任を理解し、一番に担うべき本質的な役割を果たせる人、です。
だからといって、意識して評判を上げようと思い、周囲を気にして、周りに合わせるだけでは評判は決して上がりません。
評判を高める行為とは周囲に合わせる行為ではなく、主体的・能動的に周囲に働きかける行為です。先述した評判の良い人の3つの特徴にあるように、自身と周囲との相互の役割に合致した言動ができるかどうかです。リーダーが単に部下の顔色ばかり伺っていては信頼を得ることなど決してできません。同様に、若いからと言って浅薄な自己主張ばかりで周囲の意見も聞けないようではチームで仕事はできません。
そして評判を向上させるポイントは次の3つです。
(1)他者への十分な配慮ができるようになるために、一人一人に対する関心を持って、個々人を十分に尊重すること。
(2)有言実行、率先垂範して評判を高めるために、高い目標に立ち向かい、これを達成する試練を乗り越えること。対して要領ばかりがよくて、途中のプロセスに汗をかくことなく、楽をして成果を出そうとする人は絶対に良い評判は築けません。
そして(3)本質的な役割を理解し、最優先で実行するために徹底して事前準備を行うことです。
例えば管理職が立場として部下をほめたり叱ったり、これを最初から簡単にできる人はまずいません。特にマネジャーという中間管理職は大変難しいポジションだと思います。もちろん部下とのコミュニケーションが不可欠です。納得しあった相互の信頼関係のもとに密接に連動して、職場内訓練(OJT)で育成しながら業績を上げなければなりません。その役割を見事に演じ切るのは至難の業です。
ですからマネジャークラスの評判は、すべての階層のなかで最も大きく分かれています。役者の世界では役作りといいますが、我々ビジネスパーソンの世界でも事前準備が非常に重要ですよね。すなわち、自身の役割を正しく理解し、うまく演じられるように必死に勉強し、訓練し、試行錯誤をくり返す中で自分自身の型にしていく必要があります。
私自身も実感していますが、いろいろな役割において、うまく成果に結び付けられるかどうかは、自分がどれくらい真剣にその役を勉強し、どれくらい真剣に役作りをやれているかにかかっています。
高原豪久(たかはら・たかひさ)1961年7月生まれ。愛媛県出身。創業者で父の慶一朗氏から2001年に、39歳の若さで社長のバトンタッチを受ける。創業者である先代社長慶一朗氏が盤石にした生理用品、子供用紙おむつなど国内の事業基盤を継承。2代目としてアジアなど新興国を中心とするグローバル化をけん引し、P&Gやキンバリー・クラーク、花王など巨大企業を相手に、互角以上の戦いを演じる企業へと導いた。」(2015/04/02付「日経新聞」「経営者ブログ」より)
氏がここで言う「評価」は、自分的には「業績」と言い換えたい。「評価」は「評判」をも含む全体を指しているように思えるので・・・
自分は既に現役をほぼ引退しているので、あまり関係は無いが、上の記事は、現役サラリーマンに取っては非常に参考になるのではないか・・・
それにしても、上の記事には、キツイ言葉が並ぶ・・・
「企業の人事は評価ではなく評判で決まる」
「短期的処遇には評価を、長期的処遇には評判と・・・」
「業績をあげた人には報酬で報い、徳ある人材にはより高い地位を与えよ」
振り返ってみると、自分も、少しは「業績(評価)」を上げたことがあったかも知れないが、「評判」が良かったとは思えない。これは自信を持って言える!!
人の評判というものは、そう変わるものではない。評判が良い人は、誰もがそう思う。逆に評判が悪い人は誰からも評判が悪い。
これは学歴とかはまったく関係が無い。人間性の問題なので・・・
ふと、Kさんという人を思い出した。自分より数年後輩だった彼は、会議などで「あれは誰だ?」と皆に思わせるような存在感を発揮した。後年、彼は工場長(従業員2000人の)になった。決して一流大学の出身ではなかったが、誰もが「まあそうだろうな」と思った。
評判は、それなりの地位を与える。
でも「評判」は、果たして努力で為せるワザか? 自分はどうもそれは天性のような気がする。先に書いたように、人柄、人間性の問題では・・・??
4月から新たな地位でスタートした人も多い。不遇を嘆く人もいる。しかし、周囲の人は見ている。そして“評判”は必ず次のステップを与える。
良い評判がにじみ出てくる人・・・。自分もそんな人間になれれば良かったのだが、自分にはムリだった。今更、やり直しも出来ず・・・
せめて若い人には、「徳ある人」を目指して欲しいものである。
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