尿1滴でがん診断、「線虫」の嗅覚で実現
先日の「日経gooday」にこんな記事があった。
「尿1滴でがん診断、「線虫」の嗅覚で実現
九州大学などの研究グループは、「線虫」と呼ばれる生物を使って、微量の尿からがんを高感度に検出できることを明らかにした。さまざまな種類のがんを、早期の段階で高精度かつ安価に検出することにつながるという。
今回の手法は、次のような利点を併せ持つ「画期的な技術」(九州大学)とする。(1)尿1滴で検査でき、苦痛を伴わない。(2)尿の採取に当たって食事制限は不要で、通常の健康診断などで採取した尿を使える。(3)診断結果が出るまでの時間は、約1時間半と短い。(4)1検体あたり数百円以下のコストで検査できる。(5)多くのがんを1度に検出できる。今回の実験では、対象とした10数種類のがんをすべて検出でき、その中には早期発見が難しい膵臓がんも含まれた。(6)ステージ0または1の早期がんや、従来手法では見つけられなかったがんも検出できる。(7)検出感度は95.8%と高い。
今回の成果は、九州大学 大学院 理学研究院 味覚・嗅覚センサ研究開発センター 助教の広津崇亮氏、伊万里有田共立病院 外科部長の園田英人氏、九州大学大学院 医学研究院 消化器・総合外科 教授の前原喜彦氏の共同グループによるもの。2015年3月11日(米国時間)に、米国オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
線虫の嗅覚は「犬並み」
がん患者は特有の匂いを発することが知られている。「がん探知犬」が研究されているのはそのためだ。研究グループは今回、この匂いを識別する生物として「C.elegans」と呼ぶ線虫に着目した。線虫は嗅覚に優れた生物で、犬と同等の約1200種の嗅覚受容体を持つという。
研究グループはまず、がん細胞の培養液に対する線虫の反応を調べた。この結果、がん細胞の培養液に対して誘引行動(引き寄せられる行動)を示すことが分かった。この行動は、正常細胞の培養液に対しては見られず、嗅覚異常を引き起こさせた線虫(変異体)では見られなかった。すなわち、がん細胞に特有の分泌物の匂いに線虫が反応していると考えられた。さらに、がん患者のがん組織と正常組織を比べると、がん組織の方を好むことが分かった。
次に、人間由来の試料に対する線虫の反応を調べた。試料には血液に比べて検査が容易な尿を選択し、がん患者の尿20検体と健常者の尿10検体について、線虫の反応を調べた。その結果、すべてのがん患者の尿に誘引行動を示し、すべての健常者の尿には忌避行動を示した。
がん患者の尿に対する誘引行動は、嗅覚神経を破壊した線虫では起こらなかった。加えて、線虫の嗅覚神経は、がん患者の尿に対して有意に強く反応した。これらの結果から、線虫は尿中のがんの匂いを感じていると考えられるという。ステージ1のがんにも反応したことから、早期がんを発見できる可能性も示唆された。
感度96%、特異度95%
研究グループは以上の結果に基づき、線虫の嗅覚を活用したがん診断テストの精度を調べた。具体的には242検体(がん患者が24、健常者が218)の尿について、線虫の反応を調べた。
この結果、がん患者24例中23例が陽性を示し、健常者218例中207例が陰性を示した。すなわち、感度(がん患者をがんと診断できる確率)は95.8%、特異度(健常者を健常者と診断できる確率)は95.0%だった。同じ被験者について同時に検査した他の腫瘍マーカーに比べると、感度が圧倒的に高かったという。
がん患者24例中5例については、尿採取時点にはがんが判明しておらず、2年後の線虫嗅覚テストの時点までに判明した。また、がん患者24例中12例はステージ0または1の早期がんで、すべて陽性だったという。
がん種の特定にも道
今回の手法では、現状ではがんの種類を特定できない。この点についても既に、特定のがんにだけ反応しない線虫株を作製することに成功している。これを使えば例えば、野生型線虫が誘引行動を示し、大腸がんには反応しない線虫株が誘引行動を示さない場合には、大腸がんだと診断できるという。
今回の研究を主導した九州大学 味覚・嗅覚センサ研究開発センターは、2014年7月に応用医療センシング部門を設立。線虫嗅覚によるがん診断テスト「n-nose」の基盤技術の開発と実用化に向けた取り組みを始めている。また、センター全部門が協力し、匂いによるがん検知のデバイス化も行う計画。n-noseの自動化とシステム化については、日立製作所およびJOHNANと共同で、早期の社会実装を目指して研究開発を進める。(2015/3/18 大下 淳一=「日経デジタルヘルス」ここより)
この記事はなかなか面白い。
先日、テレビのニュースでもこの話を聞いた記憶がある。線虫とは、回虫のようないわゆる人間の寄生虫。それが何とガンを嗅ぎ分けるのだという。
冗談かと思ったが、記事を読むと大真面目なのだ・・・
もう死語となった回虫。昔は子どものお腹によく居た。それは普通の光景だった。しかしもう過去の話。
しかし改めてNetで回虫の項を見ると、メスは最大で35センチもあるという。それが人間の体内に居ると思っただけで、ゾッとする。
しかし、前に記事を書いたが(ここ)、藤田紘一郎氏は、自分の体内に回虫を飼っているという。
アレルギー防止に良いのだそうだ。
医学の進歩というと、すぐに薬の開発を思い浮かべるが、このような生物の利用は、何とも“場違い”な気がして面白い。
だからと言って、自分が虫にガンを見付けてもらいたいか・・・というと、それはゴメン・・・
「知らぬが仏」が一番・・・
でも、幾ら相手が線虫でも、早期発見で治るのであれば、それに越したことはない。
いやいやそれより、12歳と歳を取ったとはいえ、我が家の愛犬・メイ子は、散歩の時に、他の犬のションベンのあとをいつも嗅いでいる。そう、これは自分のガンを見付けるための涙ぐましい“訓練”なのだ!?
まあ自分のガンは、メイ子に見付けて貰うことにしよう・・・
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