「医薬分業」について考える
だいぶん前の記事だが、「医薬分業」について、どうも気になる。
「医薬分業、問われる意義 機能不全、費用かさむ
患者が病院や診療所の外にある調剤薬局で薬を受け取る仕組みを「医薬分業」という。薬の専門家である薬剤師によって、医師が処方した薬の安全性や有効性を確認することが目的だ。ところが、この仕組み、本来の役割を果たさぬまま、費用がかさみつつあるという問題に直面している。
患者がこれまでどのような薬を服用してきたか、また、それらの薬で副作用が出なかったか、などは重要な情報だ。調剤薬局は本来、これらの情報を基に患者に服薬指導をする。複数の薬の飲み合わせで相互作用が起こらないかにも気を配る。
調剤薬局がこのような仕事をするためには、患者が処方されてきた薬の記録が必要だ。この記録管理などをきちんと実施すれば、薬局は公的医療保険制度から一定の報酬を得ることもできる。
ところが、一部チェーンの調剤薬局が患者の薬情報を記録せず、患者に薬を渡していた。ドラッグストア大手ツルハホールディングスの子会社、くすりの福太郎(千葉県鎌ケ谷市)に続き、イオンの子会社、CFSコーポレーションが運営する調剤薬局でも発覚した。
これらの薬局では条件を満たさずに報酬を受け取っていた疑いもある。本来の役割を果たさずに、利益だけを得ていたかもしれないのだ。
かねて調剤薬局をめぐる疑問は指摘されている。
例えば「お薬手帳」だ。調剤薬局に行くと、処方された薬の内容などを記載するための手帳を渡されることがある。複数の薬局に行く患者などは1冊の手帳に各薬局が出した薬の情報を記録していけば、すべての薬歴が一目でわかり、服薬指導なども実施しやすい。
しかし、患者がすでに手帳を持っているか、また、必要としているかなどを確認せず、患者が来るたびに機械的に簡単な手帳を出す薬局もあるようだ。手帳への情報記入が一定の報酬を得る条件となっているためとみられる。これでは手帳がたまるばかりで、本来の機能を果たせない。
健康保険などの公的制度を通して国民が使う医療費は年40兆円ほどに達する。このうちおよそ7兆円が調剤薬局に支払われる。厚生労働省の統計を見ると、診療費よりも調剤費の伸びの方が大きい年も珍しくはない。
この市場を見込んでチェーン薬局の参入も相次ぐ。ただ、医療費の財源は国民が負担する健康保険料や税金。医療費抑制は大きな課題であり、利益だけを追求してよい市場ではない。
限られた財源の中で医療の質を上げることも求められる。価格が安い後発薬の普及を進めたり、処方された薬の種類が多すぎるときは、医師と相談して整理することなどにももっと積極的に取り組んでほしいところだ。
服薬指導や健康指導に真摯に取り組む調剤薬局も一部ある。それでも今の状況のままでは、「病院や診療所で薬も受け取ればよい」との声が強まっても不思議はない。
土田武史・早大名誉教授は「関係者は患者・国民のために医薬分業はどこまで役立っているのかを見つめ直すべきだ」と話している。(編集委員 山口聡)」(2015/03/01付「日経新聞」p3より)
1年ほど前、久しぶりに行った大学病院で、薬局が無くなっていてビックリしたことがあった。いわゆる「医薬分業」である。敷地の外に、近くの薬科大が開設した薬局が出来、皆そこに薬を取りに行く。何とも不便になったものだが、その背景がこれらしい・・・
Netで見たら、こんな記述も見付かった。
「医科と歯科を合わせた診療日数×投薬率に対する処方せんの発行枚数でみた医薬分業率は72年にほとんどゼロ%だったが、2013年には67%にまで拡大した。」
「内服薬を7日分処方してもらって、薬局でお薬手帳を出してもらうと、院外と院内で料金はどう違うか。
院外処方だと、医療機関に払う処方せん料が680円、これに薬局に払う調剤料が350円、調剤基本料が410円、薬剤服用歴管理指導料が410円で合計1850円かかる。ところが、院内処方なら医療機関に払う薬剤情報提供料が100円、手帳記載加算が30円、調剤料が90円、処方料が420円、調剤技術基本料が80円で、薬局への支払いはゼロだから合計720円である(自己負担と保険部分を含む総額、規制改革推進室調べ)。実に2.5倍以上もの差があるのだ。」
「なぜ院外薬局が高いのかといえば、薬局は単に薬を調合して出すだけではない。複数の病院から処方せんが出ている場合に飲み合わせとか薬の飲み過ぎをチェックする。飲み残しがあれば医師と相談して、処方を変えるなど薬局独自のサービスを提供しているからだ、という。」(ここより)
医療機関が薬で利益を得る、いわゆる「薬漬け医療」を避ける目的は、まあ分からないわけではないが、通常の医者通いでは、患者は不便さを感じる。
「お薬手帳」も、その成果として、どの程度の指摘が薬局から医師へフィードバックされているのか、どうも疑問だ。患者が「お薬手帳」をキチンと管理し、薬剤師がホントウにめくってチェックしている率はどの程度あるのだろう・・・。どうも建前先行で、患者は何冊もだぶついた手帳に翻弄されているようでならない。そして、いつも飲んでいる薬では、分かりきった説明を聞かされ、お金と手間の負担ばかり増えて困る・・・
やはり、真の解決策は、いわゆる「マイナンバー」、つまりICカードによる「個人番号カード」へのカルテや投薬情報の一元化ではないか・・・
カードにデータが入れば、医師は診察の段階で、他の投薬状況が分かり、薬剤師のチェックも不要。でもまあこれは、薬の飲み合わせを良く分かっている医師の存在と、ICカードの個人情報の管理が必要であり、それへの懸念は確かにあるが・・・。
ところで、医院の近くにある薬局。医院と薬局との関係はどうなっているのだろう・・・。
医院と薬局とが一対一という組合せも良く見る。まさにお抱え薬局み見えるのだが・・・
法律では、病院は特定の薬局へ患者を誘導してはならないと決まっているらしい。また、病院と薬局は原則として同じ建物、敷地内に併設してはならない、という規制もあるらしい。つまり建前的には、医院と薬局との間の利害関係はない。しかし、医院にとっては、近くに薬局がないと困るし、薬局も病院が流行ってくれないと客が減るので困る。これも建前は別にして、不思議な関係だ。
でも「医薬分業」の成果が、数字で表れていない現状を見ると、どうも自分には、医師会と薬剤師会とが政治と結託して、患者に負担を負わせているように思えて仕方がないのだが・・・
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コメント
医薬分業になって困る事ができました。町の知さな薬局が無くなってしまったのです。聞いてみると薬剤師が2人いないと医者の処方箋の薬が出せなくなり、薬剤師をもう一人雇うだけのお金がないのでやめてしまったのだそうです。
医院の処方箋のお薬を出すところは普段医者に行かなくても家で治すことが出来る薬を売っていないのです。どうみてもおかしな話です。エムズさんが指摘されているように、医師会、薬剤師会、政治家が結託しているとしか思えません。誰か徹底的に調べてくれる人がないのでしょうか。世の中が、大企業と政治家に都合がいい様になっていくような気がします。安倍さんは景気が良くなったと勝手に言っていますが、家計の支出がすごく多くなってきています。物価と税金が上がってきたのです。年金生活者には厳しい世の中になりますね。
【エムズの片割れより】
薬剤師が2人というルールがあるのですか・・・。知りませんでした。
昔からある薬局との差別化ですかね・・・。普通の薬局に客が行ってしまわないように、調剤薬局の囲い込み!?
農協もそうですが、イヤですね。何でも権益確保の誤魔化し合い。患者そっちのけの・・・
投稿: 白萩 | 2015年3月16日 (月) 23:33