違和感を覚えるフランスの風刺画
連日、仏週刊紙の銃撃事件についての報道が流れている。
「仏週刊紙、銃撃事件後初めて発行 短時間で売り切れ
フランス連続テロ事件で銃撃を受け編集長らが殺害された風刺週刊紙シャルリエブドが14日、事件後初めて発売された。犠牲を乗り越えて最新号を発行した同紙はテロに対する不屈の精神の象徴と受け止められている。パリの売店では早朝から多くの市民が買い求め、短時間で売り切れ状態になった。
イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画が掲載された1面のレイアウトは12日に公表された。イスラム圏に限らず、転載に慎重なメディアが多数派を占める国もあり、「表現の自由」をめぐる議論が巻き起こる可能性がある。」(2015/01/14 18:02共同通信)
シャルリー・エブド紙の発行部数は通常5万部前後だが、この最新号は500万部だったという。(最終的には、「通常の実売の200倍を超す空前の700万部を刷り、1万件程度だった定期購読は20万件に急増したという。」2015/02/07付「朝日新聞」)
表現の自由を謳い、西欧の首相級がデモ行進をしている。しかし、この風刺画と表現の自由との関係について、自分はどうも違和感を覚える。
フランスには日本についての風刺画もあるという。
「フランスでは風刺画が活発に描かれますが日本についても福島第一原発関連でいくつもの風刺画が描かれ、日本で不評を買っていました。 今回のテロで犠牲になったイラストレーターの中には、以前別の風刺新聞でこんな風刺画を描いていた漫画家が含まれています。これは原発事故でやせ細り手が3本生えた力士がオリンピック競技に出場しているとしたもの。リポーターはマイクを持って「福島のおかげで相撲がオリンピック競技になりました」と伝えています。
この風刺画は菅官房長官が遺憾の意を示すほどの話題になりました。」(ここより)
日本ではそれほど馴染みがない風刺画を理解するためには、上の絵をみてどう感じるか、が分かり易い。
自分には、原発事故で避難を余儀なくされている多くの人たちや、その対応に当たっている人たちの心を踏みにじる絵にしか見えない。これが「表現の自由」という次元なのかどうか・・・
先の北朝鮮の金正恩の暗殺を題材にしたハリウッド映画「ザ・インタビュー」についても、同様な違和感を覚えた。
人の琴線に触れるようなことを、なぜあえて行うのか。もちろん動機は「売れる」こと、「儲 け」だ。売らんが為に、宗教レベルのことでもあざける。それは、風刺というより、侮辱であり、あまりにも低俗な議論。「表現の自由」というような高尚な議論ではない。
まさに新大久保のヘイトスピーチと同じ次元。
話は変わるが、実は、当サイトの最初の記事が「己所不欲、勿施於人」(ここ)。
子貢問曰、有一言而可以終身行之者乎、
子曰、其恕乎、己所不欲、勿施於人
子貢(しこう)問いて曰く、「一言にしてもって終身これを行なうべきものありや」、
子曰く、「それ恕(じょ)か、己の欲せざるところは、人に施すなかれ」
これは非常に難しい事。しかし実行できるかどうかは別にして、これは人の常道だと思う。
人のいやがることを、あえて売らんが為に、「表現の自由」という衣をまとって火に油を注ぐ仏紙の行動・・・。そこには巻き添えで命を失った人への哀悼の意は見えない。
そして世界がそれに踊り、経営不振だったシャルリエブド紙は一躍世界的に有名になってしまった。
こんな動きは、どうも自分は好きになれない。
「表現の自由」も、もう少し品性を持った、誰でも納得できるような議論にしたいものである。
●メモ:カウント~680万
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コメント
エムズ様
今日の記事とは無関係ですが、FM補完局の開始が、今年の秋から冬頃との情報をブログで得ました。春頃を期待していたので、残念ですね。FC版FPGAチューナーでの90M受信を楽しみにしていましたが.....。
【エムズの片割れより】
試験放送は2015年9月とか・・・
少し遅いですが、楽しみですね。
投稿: 小ひつじ | 2015年1月14日 (水) 20:38
オバマのアメリカが無差別爆撃や無人機で何人殺戮してもパリ、ニューヨークで抗議のデモがどれだけ行われたのだろうか?
ガザで2千人以上の市民を殺したイスラエルのネタニヤフ首相と一緒にデモをするなんて
これもフランス式「風刺画」?????
NHKがテロの脅威を伝えようと毎時ニュースのトップで大々的に伝えていますが誰が何のために…騒いでいるのか?よく考えてみたいものです。
投稿: todo | 2015年1月14日 (水) 22:34
私は神は人々が平和に暮らすために存在していると思っているのですが、宗教戦争のためにどれ程の人間が命を落としてきたことか、こんな不幸をまき散らすために神が存在しているのかと、ますます神を信じる人を嫌いになっていきます。日本の相撲の風刺画ですが、これは原発をまだ安全だと言い張る日本の政治家と財界人に見て貰いたいと思います。醜悪であっても真実をついているようにも思えるのですが、核はこのままいけば人類の滅亡につながるのではないかと危惧しています。宗教を信じている人で教えを守って生きている人を見た事がないのも不思議な事です。
投稿: 白萩 | 2015年1月15日 (木) 00:39
「表現の自由」の問題は、「抵抗」の問題かな?と思い始めています。
その「表現」で何をしようとしているのか?
自分より弱い者を馬鹿にしようとしているのか? 自分より強い者に立ち向かうのか?
立ち向かう場合は、「自ら反(かえり)みて縮(なお)くんば、千万人と雖も、吾往かん。自反而縮 雖千萬人 吾往矣 -- 公孫丑章句 上」がありますね。
「己の欲せざるところは、人に施すなかれ」と並べて、今はどちらをなすべきか、この見極めが肝心かと。
肝心で、とても難しい。
投稿: Tamakist | 2015年1月15日 (木) 10:26