遊休農地の有効活用~「農地バンク」の貸し手不足
先日、「人口減少は怖くない」??(ここ)という記事で、「放置されて荒れ果てた農地が、米国のような機械化された広大な工業農地に生まれ変わったら・・・、と考えると、何と楽しいことか・・・。“新”日本列島改造論で、少人数日本に向けた新たな国作りなど、ワクワクする楽しい話ではないか・・・。しかも、それを国主導の民力活用で推進すれば・・・」なんて勝手なことを書いたが、何と、既に動いていることを知った。
先日の日経新聞にこんな記事があった。
「農地バンク足りぬ貸し手 政府目標達成に黄信号 所有者尻込み、改革に影
点在する農地や耕作放棄地をまとめて借り上げ、税金で整えたうえで生産者に貸し出す農地バンク(農地中間管理機構)。減反廃止を決めた安倍政権下の2014年春に鳴り物入りで始まったが、活用がなかなか進まない。企業などの需要は旺盛だが、農地の供給が増えないためだ。今年度内に14万ヘクタールを貸し出す政府目標の達成は微妙だ。
借り手需要多く
「借りたいという希望は多いんですが……」。全国有数の米どころ、宮城県の農地バンク担当者は浮かぬ顔だ。借り受け希望面積は2万ヘクタールを超すが、14年12月上旬時点で手当てのめどがついたのはわずか750ヘクタール。今年度に1700ヘクタールの農地を貸し出す目標の達成に黄信号がともり始めた。
宮城県はまだマシな方かもしれない。群馬県では1700ヘクタールの目標に対し、実績は90ヘクタールどまり。農地バンク担当者は「貸し手の掘り起こしが遅れた。今年度はそれほど動かないだろう」と話す。
政府は18年に国主導でコメの生産量を減らす生産調整(減反)をやめて、経営者が自由 に生産できる体制を整える。10年間で140万ヘクタールの農地をまとめて、大規模生産者などに集約する計画。「農地バンク」は減反廃止の推進と表裏一体のプロジェクトだが、需要と供給がかみあわない。
全国ベースで見ると、3万の生産者が合計23万ヘクタール借りたいと14年9月末時点で希望している。政府は今年度に14万ヘクタールの農地を貸し出す目標を掲げるが、潜在的な農地の需要はもっと大きい計算だ。企業も約500社が1万ヘクタールの借り受け希望を提出した。
だが、昨年8月末時点で全国で貸し出した農地はわずか552ヘクタール。農林水産省は「農地の貸し出しは冬場に増える。15年3月末に評価すべきだ」と強調するが、目標達成への道筋が見えない。
貸し出す農地の確保は困難との懸念は当初からあった。農地バンクの貸し出しは10年が基本だ。「返してもらえなくなるのでは」「近所の知り合いならいいが、よく知らない生産者には貸したくない」。地域の共同体を意識する地元農家の間ではこうした声が依然として多い。
農地を相続しながら都市部で会社勤めしたり、農家をやめたのに農地を所有する「土地持ち非農家」の掘り起こしの難しさを指摘する声もある。土地持ち非農家は全国で137万戸で、約20万ヘクタールを所有する。非農家は県外など全国に点在している可能性がある。
補助金で後押し
政府は当初2年間だけで1200億円以上の税金を投じ農地保有者の背中を押そうとしている。貸し出し面積に応じ30万~70万円を配る経営転換協力金、農地バンクがすでに借りている農地の隣接地を貸す場合に10アール当たり2万円を交付する耕作者協力金、まとまった農地を貸した地域に10アール当たり2万~3万6000円を配る地域集積協力金の3本柱だ。
農地バンクの利用率も都道府県ごとに順位づけし定期的に公表する。自治体の競争を促すことで農地の供給拡大につなげる狙いだ。
参考になりそうなのが熊本県の事例だ。
「私に農地を預けてください!」。14年12月2日、熊本県の地元紙にこんな一面広告が掲載された。
蒲島郁夫熊本県知事と熊本のマスコットキャラクター「くまモン」の着ぐるみが並び、農地バンクへ農地の貸し出しを呼びかけた。県内のイオンなど6カ所で「農地貸し出し応援キャンペーン」も開催。県は農地バンクの担当部署も設け50人体制を整えた。農業の衰えが地域衰退に直結しかねないとの切迫感がある。
効果は出ている。14年11月には熊本市に経営面積200ヘクタールを超える農事組合法人「熊本すぎかみ農場」が設立された。農地バンクを活用して拡大した農地でコメ、麦、大豆の低コスト生産をめざす。200ヘクタールを超す法人の設立は県内で2カ所目になる。
政府は企業でも農地を所有できる農業生産法人への出資比率を原則25%未満から50%未満に広げる。5年後には50%以上の出資容認も検討する。農業の生産性を高め競争力向上につなげる狙いだが、肝心の農地の確保が進まなければ画餅に帰しかねない。(羽田野主)」(2015/01/08付「日経新聞」P2より)
「農地中間管理機構(農地バンク)
農家から借りた農地を税金で整備し、専業農家に貸し出す公的機関。関連法案が昨年成立し、現在までに46道府県に一つずつ作られた。公益社団法人が多い。今年度の予算額は約300億円。10年後には全農地の8割を集約する目標を掲げている。」(2014-08-30付「朝日新聞」p5より)
理念は素晴らしいが、なかなか進まない・・・という。
ふと、前に同じような施策があったな・・・と思いだした。
「移住・住みかえ支援機構」による「マイホーム借上げ制度」だ。機構のHP(ここ)にはこうある。
「JTIの「マイホーム借上げ制度」は、50歳以上のシニアを対象にマイホームを借上げ、賃貸住宅として転貸するシステムです。シニアライフには広すぎたり、住みかえにより使われなくなった家を、子育て世帯などに賃貸。家を建てては壊す時代は終わりました。社会の財産として長く活用する時代です。」(ここより)
この制度が出来たときに、カミさんが興味を示し、資料を取り寄せたことがあったが、実際に・・・と検討すると、あまり魅力がなかった。
これも理念先行形で、足下が追い付いていない。いわゆるお役所仕事・・・
これらの素晴らしい理念を実現させるにはどうしたら良いか?
結局、民間の知恵と競争の力を引っ張り込むしか無いのかも・・・。
理念を実現するために、知恵を絞ったら、その分が戻る仕組み・・・。推進役も借り手も貸し手もWin-Winになる仕組み。
上の農地バンクも、うまく行かない原因を早急に明確にして、原理的にうまく動く仕組みを作り直した方が良いのかも・・・
例えば、農協が中心になって、地域をまとめる仕組みとか・・・
両方とも、せっかく良い理念なのに「惜しい・・・!!」制度である。
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