大晦日に・・・「平成落首考」
今日は大晦日。2014年もあと数時間で暮れる。
先日の新聞に、(自分は好きだが作れない)川柳の記事があった。
「平成落首考 2014年後半 西木空人
「電柱で鳴くはふるさと持たぬ蝉(せみ)」「列の蟻(あり)忙しそうな振りのヤツ」。動物に託して人間社会のあれこれを連想させる。川柳の得意技のひとつです。
感電した仲間をとことん介抱するように見えるサルの姿が、テレビで話題を集めました。「蘇生さす猿の赤ひげ腕確か」。一方で大学病院の同一医師の手術を受けた患者が、高い割合で術後に死亡していると報じられた。
コトは医療に限りません。いったい人間はどうなっているのか。朝日川柳掲載句を拾いながら、この半年の世相の一端に触れます。
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「キリギリス蟻を嫉妬す定年後」。最後に笑うのは、コツコツ努力した蟻である。日本の学校では長く、そう教えられてきました。
けれど道徳観とは変わるもののようです。「景気さえ良くなりゃそれでみんな良し」といった割り切りが、昨今のリーダー層には色濃い。
つまりは「あるところにはあるという時代なり」「来年も今年のようにとお金持ち」。
表立った政治献金も再開されました。「堂々と金目でしょうと経団連」。でも「世間ではそれをワイロと呼ぶんです」と川柳子は筋目を重んじます。
「はしゃぐのは株式だけの秋祭り」「原発で地方創生カネしごと」。首相はしきりにデフレ脱却を唱えますが「インフレの良さが分からず呻吟(しんぎん)す」。
「生涯をハケンせむとて生まれしや」「介護費詰めて看取(みと)る骨皮」と嘆いても、川柳子は声高にはなりません。11月末の句に「万両が毎年届くこの季節」。ささやかな庭の情景です。
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声高にあらず。しかし川柳子には、「斜め読み」する癖もある。「徘徊(はいかい)に行ってきますと出る散歩」のように。
ノーベル平和賞のマララさんを心から称(たた)えつつも「すべての子に教育しても殺しに出」と気を巡らせる。
物理学賞の天野教授がチャレンジ精神の大切さを説けば「しなくてもよいチャレンジもあり」。祝賀パーティーでのダンスのことですね。
女性の地位向上を唱える首相の言葉も、一歩引いて評します。「輝ける女性の夫になるが夢」
衆院選投票日を前に「絵に描いた餅を食うから焼いてくれ」と求めました。「政治は人なり人はウソつく」という前提なのです。
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「お隣に今も生きてる不敬罪」。韓国の政権は内憂外患、大変なようです。
「苦虫を表に出してする握手」「それでいいなら何でいまごろ」。これは日中関係。
「なぜ停戦できぬと激論よその国」。8月、パレスチナ自治区ガザでの応酬に際しての句です。外交の属性はたぶんこの辺りに存する。
中間選挙で米民主党が大敗しました。「この度は言えず憂い勘働かず」(イエス・ウィ・キャン!)。それを受けた同じ11月7日の句が「オバマにならぬうちに解散」。衆院選を予見し、首相の胸のうちを測ってみせました。
「日本にも格差進めばナッツ姫」も予見、警告でありましょう。
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「弱き犬吠(ほ)え吠えあとに下がるなり」。弱き犬とは、新聞・テレビに違いない。「このままじゃマスコミ多弱の仲間入り」という句もあった。政権追随の傾向が目立つ、との指摘です。「権力にもの申さねば価値はなし」「いいのこれメディアと首相食事会」
朝日新聞の問題をめぐって、たくさんの句が寄せられました。あえてひとつ挙げれば「猿にでもできる程度じゃ明日は無い」。ハンセイなどという甘い言葉は、およそ通用しますまい。
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「人間の出没最多と熊ニュース」。いろいろな立場からモノを見ることが大切です。
「年寄りをだます詐欺の世続く世よ」。オレオレ詐欺の被害額は史上空前。熊だってこれほど非情ではない。
ただし、自分を茶化(ちゃか)すユーモアも豊かに持っているのが人間、でもあるのです。「オレだオレ 女房無言で電話切り」のように。
ほどなく新しい年が訪れます。祈念の一句です。「欲言わん穏やかな四季順に来い」
(「朝日川柳」選者)」(2014/12/29付「朝日新聞」p8より)
これらの句をじっくりと読むと、今年も色々あった。良い年だったかと問われると、なかなか力強い返事が返せない・・・。世間も個人も・・・
でもまあ、年末を無事に迎えられたことだけでも、ラッキーなのかも・・・
定番ですが、良いお年を・・・
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コメント
「宝くじはずれて離婚とりやめる」
(7億あれば好き勝手できたのに・・残念)
【エムズの片割れより】
年末ジャンボの1等5億円は49人、前後賞の1億円は98人も居るんですね。何と150人もの人が、それまでの平穏な生活から不幸な生活に!!
可愛そうですよね・・・!!
投稿: 白萩 | 2014年12月31日 (水) 22:39