お薦めの「歴史・時代小説」ベスト10
正月休みに入ったので、意を決して「壬生義士伝」を読み始めた。この小説は兄貴の推薦で、いつも「読んだか?」と言われるので・・・
そう言えば、前にお薦めの歴史小説のベスト10があったな・・・と思って探したら、9月の日経「何でもランキング」の記事が見つかった。自分の備忘録としてメモしておく。
「歴史・時代小説でタイムトラベル
読書の秋、この連休はお気に入りの1冊を手に、時空を旅する気分を味わってはいかがだろう。数ある小説のジャンルでも、人気のある「歴史小説」「時代小説」から現役作家の作品でお薦めを専門家に聞いた。
歴史小説は過去の時代を舞台に、その時代の様相を描こうとする小説をいう。時代小説は古い時代の事件や人物に題材をとった通俗小説をいう。史実にどのくらい忠実であるかという度合いで区分される。
設定によっては過去に例のない作品が次々と現れやすい分野でもある。今回はいま活躍している作家に限ったため、より趣の新しい作品がランキングに登場した。
調査では全部で98の作品が推された。主な舞台となる時代は、「江戸」(50%)と「戦国~安土桃山」(33%)が多い。昨年、何でもランキングで「日本史に夢中になれる本」で作家が存命中か否かにこだわらずお薦めを専門家に聞いた。その時に比べると戦国時代がおよそ2倍となった。
「江戸」はほぼ同じ割合だった。だが昨年は幕末が中心で全体の41%だったのに対し、今回はわずか8%だった。
八重洲ブックセンターの内田俊明さんは「戦国時代は題材が豊富。一方、幕末はテーマが限られ、良作はでるが点にすぎず線にならない」と最近の状況を読み解く。かつての作家が書きつくした感もある幕末では、新しいテーマを見いだすのも難しいのかもしれない。
だが過去の作家とはちがう視点で果敢に挑む作品はどんどん生まれている。目に留まった1冊から歴史に親しんでみてはいかがだろう。
1位 村上海賊の娘 和田竜 485ポイント
波打つ海に浮かぶ船と船の間を、弓矢やもり、火縄銃、ほうろく玉(爆弾)が飛び交い、海賊が躍動する――。現在の広島県と愛媛県の間の瀬戸内海の島々を拠点とする「村上海賊」の当主の家に生まれた勇猛な女性「景(きょう)」。彼女を主人公に、大活劇が繰り広げ られる。織田信長による本願寺の一向宗門徒攻略戦の中で、現在の大阪湾に結集した海賊船同士の逆転に次ぐ逆転の合戦場面は思わず引き込まれる。
信長を除くと、一般に有名とは言えない登場人物が多い。だが主人公と仲間はもちろんのこと、敵側にいる海賊や武士の心情や立場も細かく描かれ、群像劇としても優れている。歴史ファンならずとも楽しめる。
合戦の大胆な描写の一方で、「信長公記」など多彩な史料を引用して海戦とその背景の大名たちの勢力情勢などを解説し、一見、荒唐無稽な物語に現実味をもたせた。(1)新潮社(2)上下各1728円
■逆転に次ぐ逆転 合戦シーンに興奮!!
・「海戦を扱った小説は少なく、その代表となるだろう作品。女性の主人公はこびることも愛に溺れることもなく、容赦ない」(母袋幸代さん)
・「出てくる方言に驚いた。よく書き分けたと、感心した」(加来耕三さん)
2位 剣豪将軍義輝 宮本昌孝 300ポイント
室町幕府末期の将軍、足利義輝の活躍を描く。義輝は剣の達人とされた塚原卜伝の指導を受け、歴代の征夷大将軍の中でも最も武術に精通した人物だったという。初陣で敗戦 の辛酸をなめ、その後に剣の奥義を究めようと修行に励み、畿内・阿波の国の戦国大名だった三好長慶と何度も戦を重ねた。
織田信長ら有力戦国大名の陰に隠れがちだからこそ、義輝の活躍は新鮮だ。彼の遺児を主人公に、本作のその後を描く小説「海王」も刊行されている。(1)徳間書店(2)上710円、中741円、下771円(新装版)
■壮絶な生きざま 涙…そして涙
・「将軍でありつつ1人の剣豪として生きた足利義輝の壮烈な生きざまにただ感涙。最後の圧倒的な迫力に感動」(安本朋幸さん)
・「義輝が剣で研さんを重ね、将軍の風格を備えていく姿が爽快。躍動の戦闘シーンや情感あふれる人間ドラマなど読み応え抜群だ」(辰本清隆さん)
3位 壬生(みぶ)義士伝 浅田次郎 290ポイント
南部藩を脱藩して新撰組に加わった武士、吉村貫一郎が過酷な運命の中、妻子への愛と義に殉じていく姿を描く。いきなり主人公が切腹を決意する悲壮な場面から物語がひもと かれ、以降は幕末と後世に生き残った新撰組隊士ら関係者への聞き取り場面が交互にあらわれるという凝った構成だ。読み進めるうちに少しずつ、主人公の生きざまや抱いていた思いが浮き彫りになっていく。(1)文芸春秋(2)上下各724円(文庫版)
■愛と義に生きた新撰組隊士
・「幕末に流れていた空気を、新撰組の群像を通して体感できる。主人公の家族を思う切ない生き方は現代人の共感も呼ぶのでは」(田河慶友さん)
4位 蜩ノ記(ひぐらしのき) 葉室麟 205ポイント
江戸時代、九州の豊後を舞台にした時代小説。主人公の武士、戸田秋谷は無実の罪で 10年後の切腹を決められて幽閉される。過酷な運命に負けず、命じられた家譜編さんを黙々と続ける。「蜩ノ記」は主人公が書く日記の名前で、懸命に生きるヒグラシに自らを重ねている。人はどう生きていくかという普遍的なテーマを問いかける。10月4日に映画公開。(1)祥伝社(2)741円(文庫版)
■命の期限にどう向き合うべきか…
・「切腹を命じられつつもまっすぐに生きる主人公が胸を打つ。日本人の原風景だ」(倉田裕子さん)
5位 野望の憑依者(よりまし) 伊東潤 195ポイント
鎌倉時代末期から南北朝時代、足利家の執事だった高師直(こうのもろなお)の活躍を 描く。既存の価値観にとらわれず、粋な服装を好む「婆娑羅(ばさら)」としても名をはせた。冷めた目で敵を徹底的に排除していく野望に満ちた生き方がスリリングだ。(1)徳間書店(2)1782円
■稀代の悪人、見参!
・「注目の歴史作家が、稀代(きだい)の悪人を新解釈で魅力的に描いた」(内田俊明さん)
6位 光秀の定理(レンマ) 垣根涼介
敵城に至る道は4つあり、うち3つには伏兵が潜む。2つの道までは伏兵を見極め、残る道は2つ。無人の道を行ける可能性は本当に50%か――。謎めいた問いかけが主題を表す。明智光秀が主人公の戦国物語でありつつ数学の確率論を考えさせる。「新しい光秀像を見せてもらった」(三瓶ひとみさん)(1)KADOKAWA(2)1728円
7位 みをつくし料理帖 高田郁
江戸の町で、関西の上方料理に腕を振るう澪(みお)は天性の味覚とたゆまぬ努力で料理の道を進む。東西の食文化の違いも学べる。「江戸グルメ小説の傑作。ひたむきな主人公の姿に涙してしまう」(宇佐美亮祐さん)(1)角川春樹事務所(2)596~670円(文庫版、全10巻)
8位 櫛挽道守(くしひきちもり) 木内昇
幕末、櫛(くし)職人の娘とその家族の喜びと苦難の歴史が展開される。「黒船来航、桜田門外の変、皇女和宮の降嫁といった幕末の動乱を背景に、職人を目指すヒロインや家族を描く」(渡辺淳子さん)(1)集英社(2)1728円
9位 等伯 安部龍太郎
「松林図屏風」で有名な絵師、長谷川等伯は戦国の争乱や身近な者の死を乗り越え、「天下一の絵師になる」と大望を果たす。(1)日本経済新聞出版社(2)上下各1728円
10位 天地雷動 伊東潤
「長篠の戦い」を新解釈で描く。武田信玄の死から、その子・勝頼と、対決する信長、秀吉、家康のそれぞれの立場での戦い。(1)KADOKAWA(2)1728円
◇ ◇ ◇
調査の方法 存命中の作家の歴史/時代小説で、歴史を学べる、テーマが斬新などの観点で専門家がお薦めを原則10作品、順位付けし選んだ。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
宇佐美亮祐(宝島社「この時代小説がすごい!」編集部)▽内田俊明(八重洲ブックセンター本店)▽加来耕三(歴史家・作家)▽倉田裕子(有隣堂店売事業部主任)▽三瓶ひとみ(丸善丸の内本店)▽田河慶友(「歴史読本」編集部)▽辰本清隆(PHP研究所「歴史街道」編集長)▽松本剛(リブロ新大阪店店長)▽母袋幸代(三省堂書店神保町本店課長)▽安本朋幸(TSUTAYA商品本部BOOKマーチャンダイザー)▽渡辺淳子(楽天ブックス)」(2014/9/13付「日経新聞」s1より)
読書家ではない自分は、どれも読んだことはない。でも「蜩ノ記」はドラマで見たことがあるな・・・と思っていたら、2012年のFMでのラジオドラマだった。
まあ、所詮自分はミーハー。歴史・時代小説も、何から読んで良いか分からないので、まあその気になったら、このお薦め順に読むのが無難か・・・。(そのために、ここにメモしておくのだ!)
その前に、壬生義士伝をまず読まなくっちゃ・・・。何せ、読むつもりで8月に買ったのだが、4ヶ月も経って、やっとページを開く有り様なので・・・
ここに書いた事で、「この正月休みに読むぞ!!」と自分に気合いを入れているエムズ君なのであ~る。
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コメント
エムズ君!目が良く見える中にしっかり本を読みたまえ! なんて失礼しました。私は若いころは活字中毒で1日、1冊ぐらいは読めたのですが、ここ2,3年は目がチラチラして全く読めません。ネットで買った本がホコリをかぶっています。目が悪くなくても読めない本はあまり興味がない本かも知れませんね。面白い本ならご飯を忘れても読みますものね。ああ、もう一度そんな本に出合ってみたいものです。
時代小説はよくわかりませんが、最近の小説の文体が美しくないと思うのは私だけでしょうか。芥川賞作品もひどい!エムズ様、目がお元気なうちに良い本を読んでおいて下さい。
【エムズの片割れより】
おっとっと・・・。叱られてしまった!
確かに目の衰えはありますね。でもメガネを変えてから、最近は結構好調です。
本は、サボって読まなくなってしまいました。いずれ・・・と置いてある本はたくさんあるのですが・・・。
10時以降は本を読む!とか決めないと、ダメなようです。ま、自分の場合、決めてもダメなので困るのですが・・・
投稿: 白萩 | 2014年12月27日 (土) 22:25
映画ファンであることと、
老眼を大義名分にして、
ある程度の集中力も必要とする読書は
なかなか前に進みません。
このリストの中で該当するのは、
友人の推薦で読んだ
「みをつくし料理帖」のみ。
主人公に対する目が男性目線でちょっと…と
思ったら、作者は女性なんですね。
ひねくれた私には合いませんでした。
「壬生義士伝」にはただ券で見た映画で邂逅。
生涯に見た邦画の中で一番泣きました。
嗚咽をこらえきれないほど…。
浅田次郎氏の講演を聞いた際に
文庫本を買ってサインをいただきました。
大事にはしていますが、
未読です。
読もうと思う本が手元に
4,5冊控えていますが、
とにかく根気と集中力が衰えていてなかなか。
家事も何にもしなくていい日が1週間くらい
連続してほしい!
【エムズの片割れより】
壬生義士伝を“頑張って”読んでいます。スタートすれば進むのですが、なかなかエンジンがかからなくて・・・
でも、途中でいやになる小説もありますね。朝日に連載中の三四郎も、段々飽きてきて、読むのを止めてしまいました。やはり幾ら有名でも、自分にフィットするかどうかはあるようで・・・
投稿: アンディーのママ | 2014年12月28日 (日) 10:28
エムズさんも『三四郎』飽いてしまいましたか。私も同じです。以前にも何回か読み始めたのですが、無駄が多い文章に嫌気がさして読むのをやめてしまいました。漱石ファンには叱られるかもしれませんがやはり文章が好きになれません。私が文体がきちんとしていて美しいと思うのはのは漱石の弟子の野上弥生子だと思います。他にも綺麗な文体の作家はいますが、こういう本は読んでいて飽きが来ません。まだ私の知らない面白い小説が沢山あるのに、読まないであの世に逝くのは勿体ないですね。
たまには本屋でパラパラと本をめくってみるのも良いかも知れません。
【エムズの片割れより】
文豪を非難してはいけないのかも知れませんが、同じく「猫」も、高校時代に“やっと”読みました。何ともストーリーが希薄で、どうでも良いことことばかりを読まされているようで、自分にはフィットしませんでした。
何としても文豪は一通りは読もうと、文庫を買ったまま、時間だけが経っています。
投稿: 白萩 | 2014年12月29日 (月) 00:03
日経新聞の日曜版に「リーダーの本棚」というコラムがありますが、2014/8/17のコラムで外交官だった田中均氏が、「外務省に入省後、まず、英国に留学。先輩から英語力をつけるのに速読を勧められた。・・最初の数ヶ月に乱読したのが平易な文章でつづられているアガサ・クリスティ-でした。・・・『そして誰もいなくなった』など二十数冊。夜にベッドにひっくり返っては読みふけりましたね。触発されたのは推理小説ならではのプロット、筋書きです。様々な布石を打ち、大団円まで読者を放さない構成が薄い本でも見事です。・・・」と書いていますが、実は私も同じ経験があるのです。アメリカに住んでいたとき、家内が図書館からアガサ・クリスティ、たしかDeath on the Nileだったと思いますが、借りてきて読んでいて、面白いというので私も手にとったのがはじめです。その後、暇ができると、今日はアガサ・クリスティが読めるぞというので、本屋へ行ってアガサ・クリスティのミステリーのペーパーバックを買ってきて読むのを楽しみにしていました。アガサ・クリスティのペーパーバックは1冊が200ページぐらいで、長いものでも300ページぐらい(Death on the Nileは長い方で、276ページ)。価格は当時2ドルから3ドルぐらいでした。英語は田中氏が書いているように平明で、読みやすい。ただ、いったん読み始めると止まらない(止めることができない!)。食事はそこそこに、朝から夜中まで(徹夜したこともあります)、読み切るまで、止められない!机の前で、食卓で、ベッドの上でといろいろ場所を変えて読んでいましたね。アガサ・クリスティは生涯80冊ぐらいのミステリーを書いたといわれていますが、こういうふうにしてこの大半(たぶん60-70冊)は読んでしまいました。アガサ・クリスティのミステリーは全巻翻訳されて早川書房が出ていますが、私の場合は翻訳で読んだのは一冊もないんです。田中氏とは違って、英語の速読のためではなく、エンターテインメントのために読んでいたのですが、たぶん英語の速読の力もついたのではないでしょうか。しかし、いまアガサ・クリスティでなくてもよいから本を朝から晩まで読んでいろといわれると、とてもできない!若い時だからできたんですね。いまはそんな集中力もエネルギーもありません。
【エムズの片割れより】
原語で読まれるとは・・・
投稿: KeiichiKoda | 2015年1月 7日 (水) 09:22
引用された記事の、歴史小説と時代小説の違いの定義によれば、司馬遼太郎の(大部分の)小説は歴史小説で、藤沢周平のは時代小説ということになるんですね。司馬遼太郎の、日露戦争を描いた「坂の上の雲」が歴史小説だとすると、日中・日ソ戦争から太平洋戦争へいたる昭和の時代を描いた五味川純平の大作「戦争と人間」は歴史小説なのでしょうか、それとも時代小説なのでしょうか? たしかに坂の上の雲」のような秋山好古・真之兄弟という実在の人物たちを主人公とする小説とははちがって、「戦争と人間」では、主人公たちこそ中国大陸へ進出した資本家伍代一族という架空の人物たちの設定ですが、背景に登場する人物たちは日本の首相から軍人いたるまで実在の人物たちで、時代背景は戦前の昭和史そのものです。
この小説は日活で映画化され、1970-1973年にかけて1部、2部、3部として公開され、以前に映画化された仲代達矢主演の「人間の条件」と同じように大ヒットしたようです。ただ、日活が総力あげて制作したこの映画はロケの費用が膨大になり、予定していた4部、5部は制作されることなく、日本がソ連とのノモンハン戦争で敗北を喫するところで打ち切られでいます。伍代一族の運命もその後どうなっていくのかわからないまま「完結」するという未完?の大作になっています。私は、映画が公開されたときは映画は観ていませんでしたが、最近になってDVDをレンタルして視聴しましたが、映画の戦闘場面の迫力に圧倒されると同時に、映画がこのように中途で打ち切られるているのが残念で、あらためて五味川純平の原作を読み始めました。原作は1965-82年にかけて全18巻にわたって出版された長編です(現在絶版、光文社文庫版がデジタル版で販売されている)。市の図書館には全巻が揃っているので、借り出して読み出しのです。現在まだ第5巻を読み終えたにすぎませんが、この小説には事実に関してきわめて詳細かつ膨大脚注がついており、作家の澤地久枝さんが五味川純平の助手として担当したんですね。
映画「戦争と人間」は部分的にはYouTubeにアップされているので視聴することができるのですが、とくに第3部のオープニングでは第1部、2部の内容を要約しているのでリンクを示しておきましたので、関心のある方たはごらんください。
https://www.youtube.com/watch? v=gnZEFpfdUGc
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投稿: KeiichiKoda | 2015年1月12日 (月) 14:49