「今は昔、高負担スウェーデン」~理想の国とは・・・
先日の日経新聞にこんな記事があった。
「今は昔、高負担スウェーデン 「成長あっての財政」根づく 欧州総局編集委員 大林尚
これには仰天した。
スウェーデン人は役所をどこまで信頼しているのか。世論調査機関による今春の調査結果をスウェーデン紙が報じた。結果はあらまし次のようなものだ。
信頼度が低い役所は(1)雇用仲介庁(日本でいうハローワーク)(2)移民庁(3)社会保険庁――の順。高い役所は(1)消費者庁(1)地理院(3)国税庁――だった。
調査は全体評価、印象、信頼感、サービスの質、改善度の5項目を5600人あまりから聞き取った結果を指数にした。最高点なら135、最低点はマイナス65。平均は25だ。仰天と言ったのは、高信頼度3位の国税庁が48を獲得し、首位のふたつの役所に1ポイント差で肉薄していることだ。
徴税を担う役所がこれほどまでに信頼されるのは、日本では考えられない。
スウェーデン国税庁のシンボルマークは扇風機の3枚の羽を模したかたちをしている。じつは、これは吸引機だ。お金をぶんぶんと吸い込む役割を体現している。ある意味でこんな不遜なマークは、納税者の信頼なしには掲げられまい。
日本からみると同国は高負担国の代表だ。たしかに消費税にあたる付加価値税の税率は本則25%。高いのは間接税だけではない。湯元健治・日本総合研究所副理事長によると、所得税と住民税を合わせた所得課税の最高税率は56.6%。控除は基礎控除だけ。年金、失業給付、育児休業給付は課税対象だ。じつに国民の96%が税負担をしている(『北欧モデル』から)。
日本は所得税を払う義務があるのが5100万人と総人口の半数に満たない。国税庁の身近さという点で彼我の差は当然か。
ストックホルムで耳にしたのは、税は政府にとられるものではなく、投資のようなものという説明だ。原則、医療費に自己負担はない。教育費も大学を出るまでタダだ。納税という投資の見返りにサービスを受益する。その考え方が浸透している。奨学制度が充実しており、生活費に親のすねをかじる学生は少数派。親の世代にしてみれば、それも子供世代への投資ととらえられるのかもしれない。
信頼度が高い役所の役人は、概してフレンドリーだという。昨年、東海大教授を定年退職して同国に暮らす川崎一彦氏は、日本から年金をもらっている。その年金課税はスウェーデン国税庁の仕事だ。いざ確定申告に出向くと、どうすれば税額を節約できるか、懇切丁寧にヒントをくれた。「税は納める価値があるもの」だと納税者に得心させるための巧みなひと工夫だ。
そうしたミクロの積み重ねの結果、同国のマクロの国民負担率は58.2%(2011年)になった。負担率は国民所得に対する「税+保険料」の負担割合だ。日本は41.6%(14年度見通し)。消費税率を8%に上げて平年度に8兆円強の増税をしても、かの国とは16ポイントほどの開きがある。
ただし日本は財政赤字、つまり私たちの世代が子や孫の世代に支払いを押しつけた税が断トツに多額だ。それをふくめた潜在負担率は51.9%。江戸時代、百姓が収穫の半分を年貢に召し上げられた五公五民が平成の世に現出している。
スウェーデンは潜在負担率と裸の負担率が同じことにも驚かされる。財政赤字ゼロである。いまを生きる世代が消費する医療・教育サービスの元手は、いまを生きる世代の負担で完結させる。バブル経済崩壊後の四半世紀、日本人が怠ってきた財政規律の徹底が根づいている。
その背景として、この8年間、中道右派の連立政権を担ってきたラインフェルト前首相の成長戦略を見逃すことはできない。減税である。勤め人への減税を何度もした。法人税は課税対象を広げて税率を下げた。
他国はぜいたく消費とみなして高い税率をかけている外食サービスの付加価値税は、12%に軽くした。レストランで働く若者を増やして若年失業の増大を食い止めようという発想だ。野党はウエーターやウエートレスに多い移民を利するだけだと批判したが。
ともあれ、国民負担率はいまやフランスやイタリアを下回る。欧州連合(EU)の一員でありながら通貨ユーロを使わない選択をしたのも幸いし、ユーロ危機後は輸出と個人消費が先導していち早く成長軌道に復した。成長がもたらす自然増収と、医療の効率化などによる健全財政の二兎(にと)を追った前政権は、超高負担と決別して政策の自由度を格段に高めた。
さて、9月の総選挙でラインフェルト氏率いる穏健党は議席を減らし、社会民主労働党を核とする中道左派の連立政権が先月船出した。福祉施設や学校経営への民間参入を推進した前政権が、それを良しとしない高齢の有権者に愛想を尽かされたのが一因と聞いた。
もっとも国の根幹政策には、左右両派にしっかりとした超党派合意が存する。1999年の年金改革だけではない。「体制選択、憲法、外交でも合意形成されており、総選挙の争点はミリか、せいぜいセンチの違いしかなかった」(スウェーデン政党政治を専門とする岡澤憲芙・早稲田大教授)
先週、ロベーン新政権が組み直した15年予算案をみると、批判していたレストランへの軽減税率は維持するようだ。「成長あってこその財政と社会保障」。この普遍の理念にも、合意が醸成されてきた。」(2014/11/03付「日経新聞」p4より)
北欧の福祉や政治体制については、当サイトでも何度か取り上げてきた。日本の現状を見るに、小国と言えども学ぶべきヒントがあると思うので・・・
先日の米中間選挙でも世論が大きく動いた。日本でも某首相は日々の株価だけではなく、支持率に非常に敏感だという。そして来週の中国とのトップ会談も、支持率アップの期待!?
それにしても、スウェーデンのこの記事を読んで、「体制選択、憲法、外交でも合意形成されており、総選挙の争点はミリか、せいぜいセンチの違いしかなかった」という言葉には参った。
国民も政治も一体となっている。どこかの13億人の大きな国と違って、強制をしなくても、情報統制をしなくても、皆が同じ意見。よって、納税もスムーズ・・・
ここに出てくる「国民負担率(国民所得に占める税と社会保険の合計額の割合)」につい て、Netで検索してみると、色々なデータがある。大和総研の(ここ)のデータによると、世界的にも日本はかなり低いことが分かる。
しかし、上の記事で「ただし日本は財政赤字、つまり私たちの世代が子や孫の世代に支払いを押しつけた税が断トツに多額だ。それをふくめた潜在 負担率は51.9%。」と指摘しているように、日本の納税体制は到底健全とは言えない。子供(将来)世代へのツケ回しで、現役世代が背伸びをしているように見える。
昔のようなピラミッド型の人口構成ならともかく、現在の壺型の人口構成では如何ともし難い。
昨夜(2014/11/07)放送されていたNHK「ドキュメント72時間~山手線一周徒歩の旅・東京都心の“幸福論”」(ここ)でも、貧困の中で必死に働く若者の姿があった。
治安が良く、住みやすいと言われている日本。しかしこのような現実の人々を見ると、どこかいびつな日本・・・。
年金の通知ハガキを見ながら、行動(年金返上?)を伴わず、口先だけで「困った」を連発している自分など言う資格が無いのかも知れないが、北欧と比較して、どんな国が理想なのだろう・・・。
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