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2014年10月15日 (水)

「忘れられる権利」

先日の日経の「春秋」にこんな記事があった。
「実直そうな中年女性が、母校の中学校を訪れる。訳あって就職することになり、最終学歴である中学の成績証明書を求められたという。昔の記録を見ると、決していい内容ではない。教師は言う。「すでに破棄したという書類を作りましょう」。女性は頭を下げた――。
昔みたドラマの一場面だ。当時の成績保管期間は20年。遠い昔に劣等生だった事実が、今の幸せを邪魔していいのか。そう問いかける作品だった。後に保管期間は5年に短縮された。文部科学省によれば、プライバシーへの配慮や、生徒の不利益になりかねない記録をそこまで保管すべきか、との考えから変更したという。
公的文書なら閲覧制限や破棄で現在を守る手もある。やっかいなのはネットだ。過去の言動や経歴、過ち、若気の至りで公開した写真。自分を巡るさまざまな記録が、時を超えて拡散する。中には事実無根の文章もある。気を許した相手に撮らせた写真が広くばらまかれる卑劣な例もある。法や制度は追いつけないままだ。
グーグルで自分の名を調べると、犯罪に関わったかのような投稿が現れる。これを止めさせたいと男性が訴え、東京地裁は削除を命じる判断を出した。自民党は元恋人などの性的画像をネットに流すことを防ぐ法案を準備している。自由な情報流通と「忘れられる権利」を、どう共存させるか。われわれの知恵が試される。」(2014/10/12付「日経新聞」「春秋」より)

若い頃の成績が生涯に亘って、永く影響する世界は、今もあるのだろうか? 例えば、公務員試験。昔は、試験の順位がその後の出世に強く影響する、と聞いたことがある。よって、試験の順位が悪ければ、次の年に順位を上げるために受け直す・・・も、あったと聞く。
そういえば、先日見たテレビ番組「山本五十六の真実」でも、戦前の江田島(海軍兵学校)で、卒業時の席次がその後の出世に強く影響していたと、言っていた。

誰も、二度と思い出したくない苦い思い出は持っているもの。それを永遠にぬぐい去れないとしたら、再起する気持ちもしぼんでしまう・・・。
それだけに、最初の「すでに破棄したという書類を作りましょう」という話にはホッとする。

しかし上の記事のように、Net上の情報はやっかいだ。前にこんな事があった。何気なく、自分の名前で検索をかけたら、何と現住所や生年月日まで出てくる。追っていくと、原因は、ある同窓会のExcelの同窓会名簿だった。同窓会の幹事が、Excelを開くまではパスワードをかけていたが、肝心のExcelそのものにパスワードをかけていなかったため、そこに載っていた情報がそのままGoogleの検索に引っ掛かったもの。Googleは、単なるテキストだけではなく、wordやExcelの中の文字まで、検索対象にしているらしい。もちろんExcelの削除を依頼したが、検索での自分の情報は、消えるまでにしばらく時間がかかった。怖い怖い・・・。

話は変わるが、どの会社にもある査定制度。現役時代、仕事の査定(評価)は5ランク位に分けて評価していたが、査定表には、過去は3年分だけ載っていた。つまり3年以上前の評価は消し去っていた。たぶんそれが正しいのだろう。幾ら昔に実績があっても、3年も経つと“昔の栄光”になる。特に企業では、“現在”が重要なので・・・。
人生ではどうだろう。重要なのは同様に“現在”であり、そして“将来”。過去は忘れても、その後の人生にほとんど影響しないが、“これから”は重要である。
将来だけを見つめて生きるこれからの人生・・・。言うのは簡単だが、自分にとっては、「過去を忘れたら、自分の人生の全てが消えてしまう」ような恐怖感を覚える。
つまり、“過去によって支えられている自分”にハッとする。
少なくとも自分にとっては、消したい過去よりも、消したくない過去の方が大きいようである。

141015nemurenai <付録>「ボケて(bokete)」より

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