コミック・柏木ハルコ著「健康で文化的な最低限の生活」
ウチのカミさんはマンガが大好き。自分で絵やマンガを描いたりもする。一方、自分はマンガ大キライ人間で、およそマンガを読む機会は無い。しかしカミさんがときたまこんな本を見付けては買ってきては、自分に読む“責務”を与える。それで、自分は仕方なく・・・読む。
今回は、生活保護の実態を描く、柏木ハルコ著「健康で文化的な最低限の生活」という一風変わった題のコミック。
Amazonの内容紹介にはこうある。
「健康で文化的な最低限度の生活 1 (ビッグコミックス) 2014/8/29 柏木 ハルコ (著)
[生活保護]のリアルに迫る青春群像劇 新卒公務員の義経えみるが配属されたのは福祉事務所。えみるはここでケースワーカーという生活保護に関わる仕事に就くことになったのだが、そこで生活に困窮した人々の暮らしを目の当たりにして―― 新聞メディアはもちろん、現職のケースワーカー、医療、福祉関係者の方も注目する本格派ドラマ! [生活保護]に向き合う新米ケースワーカーたちの奮闘劇、開幕!」
そしてカミさんが見付けた朝日新聞の書評にはこうある。
「(コミック)健康で文化的な最低限度の生活① 柏木ハルコ(作)
ケースワーカーがみる社会
主人公はコミュニケーション力不足を気に病む義経えみる。区役所に就職し、生活保護を担当するケースワーカー業務に就いたばかりの新人公務員だ。初めての受給者宅訪問 で、先輩の半田はえみるに語る。彼らの暮らしを「心して見るように」と。生活保護という命を守る最後の砦(とりで)の周辺では、生活困窮者は微弱なSOSを発している。認知症、借金、ネグレクト……。
不正受給問題や受給者の増加から来る不安もあってか、何かと風当たりの強い生活保護制度。そんなデリケートな題材を扱うにあたり、2年の取材期間を費やしたという著者は、「自業自得では?」と思える受給者を描く一方、「なぜ、受け取らない!?」ともどかしく思えるケースも描く。かといって、個々の事情に肩入れし過ぎるような演出はない。さらに著者は、福祉事務所の面々の本音や硬軟差のある対応の違いなど、支給する側も様々な価値観を持っていることを描く。個にフォーカスすることで幾らでもドラマチックになるテーマにおいて、俯瞰(ふかん)の視点を持ち込んだ本作に、著者の「難しいことは承知の上で、事の本質に届きたい」という意思が感じられた気がした。それが、本作に悩ましくも温かな読み心地を与えている。“無縁社会”と言われる現代に必読の一冊。(小学館・596円)山脇麻生(ライター)」」(2014年09月07日付「朝日新聞」書評より)
何とも、憲法第25条の条文をそのまま持ってきた珍妙な本の題だが、この題に著者が言いたいことが明確に出ている。そして、最後のページにある「謝辞」に載っている20以上の協力団体名を見ても、この作品が詳細な取材に基づいて描かれていることが分かる。
この本でも描かれるが、各家庭では、当然、色々な事情を抱えている。こんな平和な日本でも餓死者や孤独死は発生する。それを各自治体の担当者は必死に支えている。
厳しい現実の各家庭と、ケースワーカーの奮闘・・・。
このような、生活保護者への視線は、我々一般者からは厳しいことが多い。「生活保護を受けられたら“上がり”」とも揶揄されている。しかし、実際に困窮している人からみると、それは生きるか死ぬか、の問題。
先日、NHKスペシャルで「老人漂流社会“老後破産”の現実」(2014年9月28日放送ここ)を見た。毎日の食べることにも事欠く老人たち。本当に心が痛んだ。
日本のこれらも現実。そして、このマンガに描かれているような色々なケースも現実。特にこのマンガに描かれている子どもたちが哀れ・・・。選べない親と子の関係・・・。
それらに我々も他人事ではなく、キチッと目を向けて考える必要があろう。
この本は、手段はコミックだが、著者は日本のお寒い「健康で文化的な最低限の生活」をえぐっている。
たぶんこのシリーズは、主人公が今後色々なケースに触れて育って行く過程で、日本のお寒い「健康で文化的な最低限の生活」を描いていくのだろう。
一番取っ付きやすいこのようなコミックで、生活保護への暖かなまなざしが一つでも増えることを祈念したい。
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