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2014年9月30日 (火)

1票の格差を放置する自民党~脇氏の更迭問題

だいぶん前だが、日経の社説に、こんな記事があった。
1票の格差を放置する自民
 自民党が脇雅史参院幹事長を交代させる。参院の選挙制度改革を主導してきた脇氏が表舞台を去れば、1票の格差是正が遠のくのは確実だ。これほど露骨な改革つぶしはめったにあるまい。そうでないというならば、自民党は直ちに是正案を示すべきだ。
 昨年の参院選における1票の格差は最大4.77倍だった。各地の高裁が「違憲」ないし「違憲状態」と断じており、年内にも出る最高裁判決が「合憲」となる可能性はまずない。2年後の次期選挙までの定数見直しは国政の最優先課題の1つである。
 与野党による参院選挙制度協議会の座長に就いた脇氏は都道府県単位の選挙区を維持し続けるのは困難と判断した。22府県を11選挙区に合区し、格差を最大1.83倍とする座長案を4月に示した。
 脇氏は座長は中立だとして、事前に自民党執行部に原案を見せなかった。溝手顕正参院議員会長は強く反発した。8月の党全国幹事長会議で「簡単に都道府県別の選挙区を放棄するわけにはいかない」と合区案を全否定した。
 合区対象のほとんどは自民党が議席を占めており、自民党全体としても「議席減につながるのは避けたい」との声が大勢だ。
 脇氏は11日の協議会で合区対象を10県に減らし、最大格差2.48倍とする妥協案を示したが、自民党は12日の参院特別総会で脇氏を参院幹事長から更迭し、協議会の座長も近くやめさせる方針だ。
 この先、自民党はどうするつもりなのか。参院選挙制度を巡り、民主党は3年ごとの定数が異なる「奇数案」、公明党は「ブロック案」を提案した。座長案はだめと言いながら、自民党の参院執行部は独自案を出さずにいる。
 時間切れに持ち込み、自党に有利な現行制度のままで次期選挙を迎えたいのだろうが、党利党略があまりにむき出しだ。このままでは安倍晋三政権の評判を落としかねない。自民党総裁である安倍首相も参院のことだと傍観している場合ではない。」(
2014/9/12付「日経新聞」社説より)

脇氏、選挙制度改革で自民全参院議員に「目を覚ませ」 執行部は「何を言っているのか…」
 参院の「一票の格差」是正に向けた与野党選挙制度協議会の座長を務めた自民党の脇雅史前参院幹事長が「参院自民党よ目を覚ませ」と題し、選挙制度改革に消極的なのを批判する文書を自民党の全参院議員に配っていたことが26日、分かった。これに対し、溝手顕正参院議員会長ら参院執行部は黙殺する構えだ。
 脇氏が文書を配ったのは24日。最高裁が平成24年に「違憲状態」と判断した、「一票の格差」が最大5倍となった22年の参院選を引き合いに出し、「参院は、国民に対して一日も早く、抜本的改革の姿を明らかにする責務を負っている」と明記した。
 その上で「参院自民党のかなりの数の議員がこのことを自覚していないのは、恐るべき怠慢だ。一刻も早く自覚すべきだ。そうでなければ、参院自民党は国民の支持を失い、政治は再び混乱を引き起こすこととなりかねない」としている。
 溝手氏は26日の執行部会で「着実に議論を進めていきたい」と語ったが、脇氏の文書に関しては、産経新聞の取材に「ノーコメント」。周囲には「何を言っているのか分からない」と不快感を示した。
 参院自民党は24日に幹部らで協議したが、脇氏が示した、合区対象を22府県から10県に減らした案にも反対意見が出た。10月31日の次回の与野党協議会で自民党案を示す予定だが、見通しは立っていない。
 与野党協議会の新座長も決まっていない。座長は協議会メンバーから山崎正昭参院議長が指名して決まる。溝手氏は19日、脇氏の座長辞任願提出を待たずに、脇氏をメンバーから外す変更届を参院事務局に出した。(村上智博)」(
2014/09/27付「産経新聞」(ここ)より)

1票の格差問題は、当サイトでも何度か取り上げてきた。そしてやっと動くかな・・・と思っていた矢先のこの動き。
NHKや日銀など、色々な組織の長を、自民党や政府が、自分たちの都合の良い人に変えて進めようとする姿勢は、相変わらずだが、今回は自党のメンバーの更迭なので唖然とする。
それにしても、世論がどう思うか、ではなく、「事前に挨拶が無かった!」レベルでの今回の動きは、ただただ日本の政治の貧困を嘆くしかない。自民党はいつも“国民に挨拶”が無いではないか・・・。

先日、元社会党委員長の土井さんが亡くなったが、土井さんが委員長の時代は、野党も輝いていた。存在感があった。
現在の政治状況も日本国の実力なので、我々国民も、御嶽山噴火の予知が出来なかった学者たちが「仕方がない」と言って開き直るのと同じく、「仕方がない」と言うしかないのだろうが、この脇氏の「目を覚ませ」で、(金太郎アメの)自民党の自浄作用が“ゼロではない”ことを国民に示して欲しいもの・・・

140930syorui <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

 脇 前幹事長の更迭問題について「一票の格差」問題と絡めて語られていますが、選挙制度の問題ともう一つ集団的自衛権の問題をめぐる自民党内の対立として考えたいと思います。
 選挙制度――格差について・・・・脇さんは「参議院議員には・・・都道府県代表という意味がある・・・・ことを認めつつも司法が違憲判決を出している以上数的な格差縮小方法を議会はさぐるべき・・・」という立場だと思います。私の個人的意見では「地方の代表という性格をもっと重く受け止めるべきだと思いますが興味と違和感を覚えるのは議論も対案もないままに 脇さんを更迭した本当の意図が別の所にあるように感じるからです。 脇さんは集団的自衛権について[安全保障政策の根幹からの議論」が必要という立場から 安倍政権の前のめり姿勢を「批判」し、かのパネルを使ったプレゼンに対し「個人的には、集団的自衛権の行使が必要だという事例ではない」(「世界7月号」)と語っています。このことこそ脇さんを問答無用の更迭に追い込んだ理由ではないか?と勘ぐっています。

【エムズの片割れより】
確かに、参院がミニ衆院ではないとするなら、「参院は地方の代表」という位置付けをもっと国民に訴える議論があっても良いはず。なぜもっと国民を説得しないのでしょう。
それにしても「権力」は怖いですね。

投稿: todo | 2014年10月 1日 (水) 00:42

野田が衆議院を解散したのは何だったのか???

【エムズの片割れより】
いったん権力を持つと、それまでも発言や約束は知らんふり・・・。それが許されているのは、野党、マスコミ、世論も一緒に忘れてしまったためか?
これは、熱しやすく冷めやすい日本の国民性から来ているのか・・・。
野田さんも「安倍首相はウソつき・・・」と、もっとアピールすれば良いのに・・・

投稿: Tamakist | 2014年10月 1日 (水) 11:40

参議院議員に都道府県代表の意味があるとしても、外交、防衛など国の大きな方針は平等な選挙で選ばれた議員によって議論されるべきです。それが格差で選ばれた議員によって決められては困ります。国内の地方に密接な問題を決めるなら、別ですが。
小選挙区制のために、国民の意向を正しく代表しない政権ができるのも問題だと思います。

【エムズの片割れより】
確かに小選挙区制がそもそもの問題。はやく中選挙区制に戻すべきだと思いますが・・・。

投稿: かえるのうた | 2014年10月 2日 (木) 10:08

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