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2014年8月29日 (金)

「健康長寿と医療費」そして「スイスへの安楽死渡航」

だいぶ前だが、日経新聞にこんな記事があった。
健康長寿で医療費は減る? 予防の効果、実証なく
 このほど、2014年版厚生労働白書が公表された。今年のメーンテーマは「健康長寿社会の実現に向けて」。日本はすでに長寿社会を実現しているが、これからの課題は「いかに健康な期間を長く保つか」だという。予防に気を使い、健康で長寿であれば、医療費や介護費も抑えられるとの考えだが、果たしてうまくいくのだろうか。
 厚労省の7月末の発表によると、13年の日本の平均寿命は男性が80.21歳、女性が86.61歳。女性は世界でも最長寿。この年初めて80歳代に到達した男性も香港やアイスランドなどと共にトップクラスに入る。医療水準の向上などに合わせ寿命はどんどん延びてきた。
 これに対し「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命は同省によると、男性70.42歳、女性73.62歳(共に10年時点)とされる。平均寿命と健康寿命の差は男性で10年、女性で13年ほどあるわけだが、厚生労働白書は「この差を縮めていくことが重要」と指摘した。
 白書は「我が国における健康をめぐる施策の変遷」「健康をめぐる状況と意識」「健康寿命の延伸に向けた最近の取り組み」の3章構成。注目されるのは「最近の取り組み」。国は要介護状態とならないための高齢者に対する予防事業、現役からの健康づくりなどを積極的に進めるという。
 介護予防では、全国の自治体が地域の実情に応じた体操教室など様々な取り組みがしやすい環境を整える。現役向けには、生活習慣病を防ぐための健診や健診結果に基づいた指導を強化し、禁煙対策も推進。これらの施策で25年に向けて5兆円規模の医療・介護費節減を図るとする。
 医療費や介護費は年間で50兆円近くも使われている。5兆円の節減は大きな効果だ。ところが医療制度に詳しい日本福祉大の二木立学長は「根拠がまったく示されていない主観的な目標、願望にすぎない」と指摘する。
 予防や健康増進活動を進めれば、医療費などは減ると思いたいところ。世界各国でも同じことを考えて、様々なモデル事業や実証研究が実施されてきた。しかし、それらの結果を見ると、健康状態の改善効果などは確かめられるものの、「医療費節減効果はほとんど確認されていない」(二木学長)という。
 禁煙プログラムについては例外的に余命延長と短期的な医療費節減の両方の効果が確認されている。ただ、禁煙によって寿命が延びる分で余計に医療費を使う。その生涯医療費を考慮すると、短期的な医療費削減効果は相殺されかねない。それどころか、禁煙プログラムを実施した方が生涯医療費は多くなるとの研究結果もある。
 予防や健康増進の活動は、国民一人ひとりが幸せに生きていくためにも必要。十分に取り組んでもらいたい。しかし、それで医療費や介護費が減らせるとは安易に考えない方がよさそうだ。
 超高齢化が進む中で、医療費や介護費の抑制は大きな課題であることは間違いない。ただその手法については根拠があるもの、実効性があるものを十分な説明と合意のうえで進めるべきだろう。(編集委員 山口聡)」(2014/08/10付「日経新聞」p3より)

我々シルバー族が、これから担う重たい課題が「平均寿命と健康寿命との間の期間をどうするか?」。
言うまでもなく、上の記事の論は、あくまでも平均値であって、実際に我々がどうなるかは分からない。でも「平均」では、平均寿命と健康寿命の差は男性で10年、女性で13年あるという。つまりこの期間は、“不健康状態”にあると想定される。つまり、他人の介護を必要とする期間である。
よって白書にあるように、「この差を縮めていくことが重要」であることは言うまでもない。
もちろん理想は、健康寿命を平均寿命に近付けることだが、ピンピンコロリはそう簡単ではない。

前に伯母が入っていた老人ホームに見舞いに行くと、全員がテレビの前でボーッとしている。もちろん認知症が進んでいた伯母も・・・。その光景を見るのが辛かった。
そして今年の正月に亡くなったお袋も、見舞いに行くと、いつも「する事がない。家に帰りたい」と言っていた。そしてホームの2年間は、ただただ食べて寝るだけの生活で、認知症も進んでいった。兄貴がよく言う。「お袋のこの2年間は何だったのか・・・」。でもそう簡単に人間は死ねない。

一方、先日こんなニュースもあった。
安楽死目的でスイスへの渡航者急増
 安楽死を遂げるためスイスに渡航した重症患者らの数が、2008年の123人から12年の172人へと4年間で約1.4倍に急増したとの調査結果を、チューリヒの研究機関が21日までに、英専門誌ジャーナル・オブ・メディカル・エシックスに発表した。
 急増の詳しい原因は不明だが、スイスでは医師が薬物を処方し、死を選んだ患者が自ら使用する「自殺ほう助」が事実上認められており、支援する団体も存在する。
 08~12年に31カ国の計611人(23~97歳)が安楽死の目的でスイスに渡航。平均年齢は69歳で約6割が女性。神経疾患の患者が多数を占めていた。国別ではドイツ、英国が多かった。
 欧州では安楽死をめぐる対応が国によって分かれており、制度化すべきかどうかの議論が徐々に活発化している。条件付きを含めると、オランダやベルギーなどでも認められている。(共同)(2014年8月22日)」

「「自殺ツーリズム」 安楽死を求めてスイスへ渡航する人が急増
チューリッヒ大学の研究者らによって「自殺ツーリズム」という研究論文が発表された。安楽死を遂げるためスイスに渡航した外国人が急増しているという。論文によると、2008年は123人だったのに対し、2012年は172人と4年間で1.4倍に急増。神経筋疾患の患者が多数を占めていたという。47Newsなどが報じた。
611人の渡航者を国別に見るとドイツとイギリスだけで3分の2を占め、フランス、イタリアなどが続いた。48%以上の人が神経疾患を抱えていたほか、がん(37%)、リウマチ(25%)、心疾患(15%)などの疾患を抱えており、約3分の1の人が複数の疾患を抱えていた。
スイスには、病気の末期症状や重度の身体疾患・精神疾患者に対し、有資格者の医師と看護師の援助を受けて自殺を幇助する「ディグニタス」という非営利団体が存在する。
論文によると、ディグニタスは年間600件の安楽死の案件を扱っており、そのうち150~200は海外からの渡航者によるものだとしている。論文の中の611人の安楽死のほとんどにも、ディグニタスが関わっていた。イギリスのBBCによると、ディグニタスはその活動によって、年間9000~1万500スイスフラン(100~120万円)を得ていると言われている。
なお、スイスにおける安楽死では、現在1人当たり約3000ドル(約31万円)のコストがかかるという。論文執筆者の一人であるユリアン・マウスバッハ博士は、海外諸国が安楽死を認めていないために患者がスイスまで旅行しなくてはならない状況や、安楽死のコストをスイス政府が支払い続けるべきなのかという問題を指摘しているという。」(2014/08/22付「ハフィントンポスト」(
ここ)より)

このスイスへの渡航者の中に、日本人はいないと言うが、これらの行動は、自ら「自分の寿命と健康寿命を、自分の意志で短縮すること」になる。
自分もそのうち、「今日も生きた!」と実感“できなくなる”日がやってくるだろう。その時に、何ら行動できない自分をどう捉えるのだろう?
ま、認知症になってしまえば、そんな事を考えることも無い訳ではあるが・・・

何とも、こんな記事が気になるトシになりつつあるな~・・・。

140829chinoike <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

後期高齢者の年が近づいて来たころから、友人との電話で喋る内容が変わってきました。病気とお葬式の話ばかりする人が出てきました。喋る前に死ぬ話はダメだからねと釘をさしておくのですが、楽しい話をしません。ずっと真面目に家を守り親戚に気を遣い、昔のままの日本の嫁をしてきた人たちです。恋の話や素敵な青年に出会ったなどの話には聞く耳を持ちません。
最近、彼女たちは学校時代にあった色んな事をすっかり忘れています。こういう人が3人います。学校時代は優等生の人でした。呆けたくなかったら多少不良老人になった方が良い様な気がします。私は綺麗な青年に会うと「おお!ハンサム」と素直に言ってお話します。長生きするかどうかわかりませんが、人生は楽しくなります。楽しい話には年齢の垣根はない様な気がします。「バラ色の人生」は高齢者になっても作ることができます。

【エムズの片割れより】
白萩さんは本当に(気が)お若い・・・!!
確かに、若さは精神年齢ですよね。

投稿: 白萩 | 2014年8月30日 (土) 15:55

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