(集団的自衛権)「松阪市長の違憲提訴」記者会見~「愚かな為政者」という発言のマスコミ各社の報道の違い
昨日、こんな報道があった。
「松阪市長、違憲提訴へ団体設立 集団的自衛権で活動の受け皿
三重県松阪市の山中光茂市長は17日、集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定の無効確認を求めて提訴するため、活動の受け皿となる市民団体「ピースウイング」を設立し た。
全国の自治体首長や議員、一般市民に参加を呼び掛ける。既に松阪市議や愛知県、大阪府などの地方議員計40人が賛同する考えを伝えてきているという。山中氏は団体を通じて、集団的自衛権をめぐる問題に関する勉強会やシンポジウムを開くなど提訴に向けた準備を進めたいという。
会見で山中市長は「愚かな為政者が戦争できる論理を打ち出したことで幸せが壊される。国民全体で幸せを守っていかなければならない」と訴えた。」(2014/07/17付「共同通信」~ここ)
マスコミ各社が、集団的自衛権の憲法解釈変更について、世論調査も含めて色々な報道スタンスであることは前に書いた(ここ)。
上の共同の「愚かな為政者が戦争できる論理を打ち出した・・・」という会見での発言報道に、自分は興味を持った。それで会見でのこの発言を、各紙がどのように報道しているのか、Netで調べてみた。
先ず反対派の朝日は・・・
「・・・記者会見した山中市長は「国民が築いた平和が、愚かな為政者によって台なしにされようとしている。当たり前の幸せを次の世代に残せるか、今が分水嶺(ぶんすいれい)」と設立趣旨を述べた。・・・また、「提訴自体が目的ではない」とした上で、「平和への思いを共有する中で、憲法の平和的生存権の侵害という訴えの利益を見極めたい」と語った。さらに、訴えの利益については「自衛隊員が契約していない労務を強いられることへの国家賠償請求など、様々な論理が考えられる」と述べた。」(「朝日新聞」ここより)
そして賛成派の読売は・・・
「・・・山中市長は会見で、「憲法が保障する国民の平和的生存権を侵す違憲状態にある。国民的な議論を経ずに行われており、遺憾だ」と今回の閣議決定を批判。1か月以内に市民団体を設立した上で、勉強会やシンポジウムなどを開催し、賛同者の意見を集約して提訴に踏み切るかどうか判断するとした。
山中市長は「提訴ありきではないが、手法の一つ。全国市長会などにも呼びかけ、地道に仲間を募り、運動を広げたい」と述べた。」(「読売新聞」ここより)
同じ記者会見でも、切り取る言葉によって、読者の受ける印象は大きく違う。
同じく時事通信は・・・
「・・・山中市長は同日午前の会見で「司法の場において国にノーを突き付けていきたい」と述べた。」(「時事通信」ここより)
中日新聞は・・・
「・・・会見した山中市長は「市民の当たり前の幸せが守れるか今が分水嶺(れい)。人生をかけて運動に取り組みたい」と決意を語った。」(「中日新聞」ここより)
日テレは・・・
「・・・会見で山中市長は「ひとりひとりの当たり前の幸せが壊れていく前に防ぎたい」と話し、今後、有識者や市民とともに国に対し、集団提訴していく考えを明らかにした。」(「日テレ」ここより)
名古屋テレビは・・・
「・・・松阪市の山中市長は会見で、「憲法を冒涜する判断をした安倍政権に司法の場でしっかりとNOを突きつけなければならない」と力を込めました。」(「名古屋テレビ」ここより)
そして、東京新聞は共同を引き、毎日、日経、NHKでは、そもそもこの17日の会見の報道記事は見つからなかった。
つまり、「愚かな為政者」という発言は、共同と朝日しか取り上げなかったわけだ。
自分は今の安倍首相の政治姿勢に対し、首相が尊敬する祖父の岸元首相が、国民の大反対を押し切って安保改定に踏み切って“歴史に名を残した”ことを念頭に、同じように自分も歴史的に名を残したい自己顕示欲から、何の緊急性も必要性も無いのに、また自民党が国民から支持されている訳でも無いのに(ここ)、小選挙区制の仕組みのイタズラから多数議席を得ている今のチャンスを捉えて、国民無視の利己的な野心を遂げようとしているとしか見えない。
今朝の朝日新聞(2014/07/18付p15)に、野中・元自民党幹事長のインタビュー記事が載っていた。これら自民党OBも、安倍政権のやり方や公明党の存在感の無さを憂いていた。
そして、結果として誰もその「愚かな為政者」を止められない日本政治の体たらく・・・
先ずは、先の記事で野中氏が言っている「創価学会の協力なくして自民党議員の8割は選挙で落ちますよ」に期待して(!)、公明党が一人前の公党として、一人の大臣の椅子にしがみつくのではなく、これを機に政権離脱を期待したいのだが・・・
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そして、結果として誰も「愚かな為政者」を止められない日本政治の体たらく・・・
先ずは、先の記事で野中氏が「創価学会の協力なくして自民党議員の8割は選挙で落ちますよ」と言っているように、公明党が一人前の公党として、一人の大臣の椅子にしがみつくのではなく、これを機に政権離脱を期待したいのだが・・・]
私もそう思います。
投稿: Tamakist | 2014年7月18日 (金) 23:37
山中市長の「愚かな為政者が・・・・・」という言葉は7月2日か3日の中日新聞の紙面で見て「大胆な…だけどまったくそのとうり」と思いました。
さて今日は 聴講で通っている大学で「ファルージャ」という映画を見てきました。
一昨年シリアで銃弾に倒れた 山本美香さんの遺志を受け継ぐために設けられた{記念賞」の第一回の受賞作品です29歳の監督の伊藤めぐみさんはこの大学の卒業生です。
イラク戦争から11年。大義なき戦争でしたが権力者と追随するメデイアの操作に操られた戦争でした。人質になった3人の若者に「自己責任」を迫ったひどいものでした。
上映後、伊藤さんが質問に答える形で語っています。アメリカに加担したイラク戦争の反省もなく、同盟国ーーアメリカがどんなにひどい戦争をやってきたかも考えないのは問題・・・・
安倍のお気に入りのパネルーー救助を待つ可哀そうな母子ーー安倍は11年前3人の人質に対し、イラク戦争に反対する3人のその思想性を嫌い自己責任を迫ったのです。3人は左でもなく右でもない人道主義に突き動かされた行動だったと思いますが。
機会があれば是非「ファルージャ」観て下さい。アメリカが引き起こしたイラクの戦争はいまだおさまりません。そして開戦後数年して劣化ウラン弾を原因として14%を超える奇形ー障害を持った新生児が生まれています。
集団的自衛権問題は日本が戦争に巻き込まれる・・・といったことからではなくて11年前ブッシュのイラク戦争を支持し加担したことへの反省から決して認めることなどできないのだと強く考えさせられました。
【エムズの片割れより】
機会があったら「ファルージャ」を見てみますね。
投稿: todo | 2014年7月19日 (土) 21:41
友人と話をしていると読んでいる新聞によって物のとらえ方が全く違うことに気づきました。一番初めに気づいたのは慰安婦の問題でした。自分から志願して慰安婦になったくせに、賠償金を払えなどとは言語道断だと言ったのです。戦争も日本は正しかった、アメリカが石油を断ったために戦争になったのだと言いました。学校の日本史で昭和史を全くしていなかったこともありますが、こんなにもとらえ方が違うのかと驚いてしまいました。彼女はテレビもあまり見ないし、本も殆ど読みません。自分の家で取っている新聞で歴史を学ぶだけです。
読売と朝日は同じ歴史なのになぜこうもずれるのでしょうか。自分で正しい歴史を学び勉強する力を学校で付けることは難しいかも知れませんが、いつも日本が正しかったと考えさせるのは危険です。戦犯だった岸、佐藤総理と安倍さんの顔が重なるのですが、何故あれだけの不幸を招いた戦犯が何年も経たないうちに日本の総理になれたのか私は不思議で仕方ありません。
愚かな為政者を頭にして自民党の議員は誰も反旗を翻さないのでしょうか。これも不思議です。
【エムズの片割れより】
昔の政治家は、今に比べるとよどオトナだった気がします。
今の政治は、独裁政権で対抗馬の意見が国民に浸透していない。それで一つに流されてしまうのでしょうか・・・
投稿: 白萩 | 2014年7月20日 (日) 22:52