夫婦離別が生む貧困~NHK「ドキュメント72時間」から
最近よく見るNHKの「ドキュメント72時間」。先日「どしゃ降りのガソリンスタンドで」(2014/07/25放送)を見ていて、考えさせられてしまった。6月のある3日間、神奈川・相模原市にあるセルフスタンドに寄った人たちへの取材だが、夫婦の離別から困難な生活を強いられて、懸命に生きている姿が何人も出てきた。
ある長距離ドライバーの男性(48)は、5年前に離婚。母親が子どもを引き取れないというので、自分が引き取ったが、仕事柄長く家を空けるため、子どもを一人で置いておけないので児童養護施設に預けているので迎えに行く所。一緒に暮らすのが本当の姿。大人にしなきゃいけないんで、頑張らないと・・・。
40歳の女性パートさんは、6年前に夫が交通事故で高次脳機能障害の障害が残っていてコミュニケーションがうまく取れないが、同じような妻たちと連携を取って・・・。
無職(71)夫婦さんは、娘が離婚して子どもを連れて戻ったため、娘が土日も仕事なので、週末は4歳の孫を預かっている。そして夫婦と孫の3人で、全国のフリーマーケットを何年も渡り歩いて竹とんぼを売っているが、今日の売上は3千円・・・。
害虫駆除業さん(43)は、10年前に奥さんがくも膜下で他界し、それを機に当時6歳の息子へのイジメがひどくなり小学校時代は不登校に。それで子どもと接する時間を多くするために、独立したが大変だという。今は子どもを育てる事が一番・・・。全ては彼が自立してから・・・。
派遣社員の女性さん(45)は、今から高校生の娘のハンドボールの試合の見学に行く所だという。一人娘が2歳の時に離婚。しばらくしてお姉さんも離婚し、お姉さんが心の病にかかってしまって自分で死んでしまった。それに気付いてあげる事が出来なくて・・・。それから残された2人の娘を引き取って、3人の娘を一緒に育ててきたという。思春期で朝と晩しか会わないが、ちゃんと見ているぞ、とアピールしないと・・・。
もちろん偶然ではあろうが、番組に出て来た人で、夫婦の離別をキッカケに、厳しい人生を送っている人々がたくさん居た・・・。
特に女性の仕事探しは困難を極めているらしい。
話は飛ぶが、先日の朝日新聞にも、こんな記事があった。
「(女が生きる 男が生きる)そこにある貧困:下 「女性は家庭」仕向ける社会
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離婚、仕事見つからない
大学教授の夫と2年前に離婚した都内の女性(50)は仕事を探し続けている。
離婚直後はデイホームのパートが見つかった。時給850円で、手取りは月4万円だったが 1年で退職を余儀なくされた。送った履歴書はそろそろ60通を超える。ホテルの清掃、花屋――業種を問わず応募しても、採用に結びつかない。
「食べていくため、もう婚活しかないのかと思うこともある」
離婚する夫婦の数は50年前に7万組前後だったが年々増え、1996年以降は20万組を超えている。未婚・死別・離別を合わせた成人の独身女性は10年に2125万人で、30年前の1.7倍に膨らんだ。増える単身女性たちの受け皿は主に非正規雇用だ。
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全国に2千万人弱いる非正規雇用者のうち、7割は女性が占める。政府は、非正規労働者の正社員化を企業に促すが、パートやアルバイトで働く女性を支援する施策は乏しい。
安倍政権が掲げる、女性が「輝く」施策に非正規で働く女性たちは含まれているのか――25日の会見で、田村憲久・厚生労働相に問うた。田村氏の答えは「そういう(非正規の)方々も対象になれるような政策を、これから提案して進めていきたい」だった。(今村尚徳、今村優莉)」(2014/07/27付「朝日新聞」p2より)
普通の生活を送れない人がたくさんいる。普通の生活を送ろうと悪戦苦闘している人がたくさんいる・・・。特に夫婦離別をキッカケに、不幸に陥る人の多さ・・・。
上の番組でも、たくさんの取材の中から選んだのだろうが、たった3日間の取材で、こうも同じように夫婦離別から大変な状況に陥っている人たちが登場するとは・・・。
見ようによっては、これは現代日本社会の抜き取り検査(サンプル)。つまりこれが今の日本の縮図なのかも知れないな・・・と思った。
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コメント
今試験期間中です。
今日の試験は宮本みち子先生の「リスク社会のライフデザイン」・・・・・胸に突き刺さる指摘がイッパイあるけど、特に厳しいのは「高齢の女性にとってのリスクは男の配偶者ーーー高齢の男性にとってのリスクはひとり残されること」
わかってはいるつもりですが 教科書で言われると ずいぶんこたえます。
一人暮らしのノウハウを身に着けるより追い出されないように 先立たれないようにどうしたらいいのか 一生懸命考えます。
【エムズの片割れより】
まったくその通りですね。同感です。
投稿: todo | 2014年7月29日 (火) 20:15
大事なことを忘れていました。
現在の深刻な家族問題の対策は「家族問題としてだけではなくむしろ雇用問題として」対策を考えるべきというご指摘がありました。かって日本型福祉社会の半分をささえていた企業福祉―ー年功賃金と標準家族をモデルにした税制のあれこれーーがありました。
新自由主義はこの雇用の現場を破壊しセーフテイネットの無い荒海に庶民を投げ込んだのです。離婚家族のもんだいも 個人的な悲劇とだけみるのではなくまた今現在のみなさんの経済的悲惨さだけでなく離婚問題の発端において経済的安定が失われて追い込まれていった悲劇が沢山あるように推測します。
【エムズの片割れより】
世の中は、時間と共に良くなることを期待しますが、現実には日に日に全てが悪くなって行くように思えます。
これらは政治のせい? それとも国民の意識風土が変わっているせいなのでしょうか?
投稿: todo | 2014年7月29日 (火) 22:44
本件は日本の将来にとって大切な視点です。私が考えるに、今日本の将来に対する最大の問題は「少子化」です。高齢化は30年我慢すれば他国並みになりますし、人口減は日本の国土からして8000万人程度が最適という学者もいます。しかし生産年齢を減少させる「少子化」は今すぐにも対策を講じなければなりません。
その対策は様々な施策が考えられますが、その根本は「雇用の安定」です。若者が結婚しない、出来ない。賃金が少ない。共稼ぎの子供を預ける安価な施設、正式な結婚をしていない子供、婚外子に対する福祉の差別など。
性別、年齢、労働時間などを超越した雇用の多様化を政府は支援すべきです。
【エムズの片割れより】
確かに、我々の時代は、とにかく仕事をこなすことだけ考えれば良い、恵まれた時代でした。
仕事が無くなる、ということを考えなかったので、借金をして家も買えたし、子どもも育てられた・・・。今の現役世代は、何もかも不安定で、自分だけで精一杯。とても子育てどころではないのが現実・・・。
前にスウェーデンやデンマークのことを書きましたが(下記)、日本が北欧のやり方を真似ることは無理なのでしょうか?
https://emuzu-2.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-07a3.html
投稿: こうちゃん | 2014年7月30日 (水) 11:08
舌っ足らずでした。かっての日本型福祉政策が良かったということではありません。
男は外で稼ぎ、女は育児、家事労働に専念するという「本当は70年代にいっときだけ主流になりすぐにまた沈んでいったモノ」男女役割分担。女性労働は家計上は補助的・・・とみなされ低賃金が当たり前のように扱われてきました。今 離婚後の女性たちを苦しめている低賃金の秘密です。 日本の女性たちは「ワーキング・プアー」なのです。働いていて2つも3つも掛け持ちで働いていてプアーなのです。
非正規を増やす裏で 女性の地位向上が「会社での女性役職者を増やす」などということに矮小化されてはなりません。
【エムズの片割れより】
先日の新聞に、9月の内閣改造で、女性大臣を増やしたいが、男の大臣待望が多いので云々、という記事がありました。
庶民のことを棚に挙げて、目立つことで国民の目先をそらす・・・。それを世論はキチッと見抜きたいですね。
投稿: todo | 2014年7月30日 (水) 16:12