「首相のあべこべ言葉」~言葉でのごまかし
今朝の朝日新聞にこんな記事があった。
「首相、あべこべ言葉ですか 集団的自衛権
集団的自衛権を語る安倍政権の言葉が、なんだか分かりにくい。積極的平和主義、必要最小限度――。ただでさえややこしいのに、よく聞くと、それって逆の意味?と思えることも。まるで「あべこべ言葉」だ。
■積極的平和主義→集団的自衛権の前提に
必要最小限度の行使→「拡大的に運用できる」
「安倍晋三首相の言う『積極的平和主義』は本来とは逆の意味。言葉の乗っ取りだ」。詩人のアーサー・ビナードさんは5月23日、北海道室蘭市の講演で聴衆に語りかけた。
「積極的平和」はノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥングさんが世界に広めた考え方。戦争という直接的な暴力がない状態を「消極的平和」と呼び、さらに努力して貧困や差別なども取り除いた状態を「積極的平和」と定義し、その実現を目指すよう唱えた。
安倍首相は同じ言葉を使って、原則禁止していた武器輸出の条件を緩め、他国の戦争に参加する集団的自衛権も使えるようにしようとする。ビナードさんは、安倍首相が批判を見越し、先手を打ったとみる。「先に平和という言葉を使って批判をかわす。日本に軍需産業を育てるための広告戦略としては、大変お上手」
安倍内閣が4月、閣議決定した新原則で、武器輸出は「防衛装備移転」と言い換えられた。軍事評論家の前田哲男さんは「軍事に関する言葉は語感に引きずられてはいけない」と指摘。現在、与党協議で議論されている自衛隊による「後方支援」という言葉を例に挙げる。
前田さんは「後方というと安全のようだが、現代では正規軍同士がきれいに前線をつくる戦争はなくなった」。特に米国が主導する「テロとの戦い」では前線と後方の区別はあいまいだ。2001年からのアフガニスタン戦争では、自爆テロなどで、各国の「後方」部隊に犠牲者が出た。「後方という言葉で戦場の危険を覆い隠す議論をしては、かえって現場の自衛隊員を不安にさせてしまう」
集団的自衛権を「限定的」に使えるようにするという説明も聞く。だが、憲法学者らがつくる「立憲デモクラシーの会」は9日、「『必要最小限度』の集団的自衛権の行使という概念は『正直な嘘(うそ)つき』と同様の語義矛盾」とする見解を発表。戦争になれば、「必要最小限度」を超えたという理由で日本が撤退を判断できる、と考えるのは現実的でない、などの理由を挙げた。
自民党は自衛権発動の前提条件として、日本や他国への武力攻撃によって「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」などの新3要件を提示している。「おそれ」をどう判断するかは時の政府次第だ。
立憲デモクラシーの会は発表した見解で「ひとたび憲法の制約さえ外れれば、その後いくらでも拡大的に運用できる」と批判する。
実態を字面で糊塗(こと)しようとする政治の言葉。その極限を描いたのが、英国の作家ジョージ・オーウェルの小説『1984年』だ。周辺国との戦争によって国民の愛国心と恐怖心をあおり、独裁に従わせる国家が舞台。その独裁政党のスローガンは「戦争は平和なり」。
この架空の国家の支配層は、黒を白と言い換える言語「ニュースピーク」と、うそを告げながら、それを自ら真実と信じ込む「二重思考」を身につけなければならない。
立憲デモクラシーの会共同代表の山口二郎・法政大教授(政治学)は4月のシンポジウムで、安倍首相の「積極的平和主義」にふれ、「まるでニュースピークを思わせる」と批判。「常識で反論するしかない」と訴えた。
詩人のビナードさんは冒頭の講演でこうも語った。「政治を決めるのは主権者である国民。まず日本語を自分たちのものとして、取り戻さなければならない」(上原佳久)」(2014/06/18付「朝日新聞」p30より)
この手のごまかしは、数知れない・・・。障害者に無理な負担を強い、支援を減らす「障害者自立支援法」しかり、文藝春秋(2014年7月号)にもある、全く安心でない「年金百年安心プラン」しかり・・・。
言葉で国民を煙に巻く、という何とも不誠実な政治に、我々国民はどう対処すれば良いのだろう・・・。「戦後レジームからの脱却」というフレーズも、やりたいことを外国語で煙に巻いている。なぜ国民が直ぐ分かる言葉で言わないのか・・・
テレビでは、解説者が「集団的自衛権を急いでいるのは、時間が経つと国民が気が付いてしまい、反対が多くなるので、その前に決めてしまおう、という意図だ」とか言っていた。
言葉でごまかすのは、いつの世でもある。こんな事を思い出した。現役の時、中期計画という制度があり、その策定を何度か行ったことがある。これは、自分たちで担当している事業を、数年後にどんな姿に持って行くのか、という企画の話。
ある上司が言った。「内容はともあれ、英語の頭文字を取った3文字の略称を決めよう。幾ら内容が無くても、ありそうな英3文字で言うと、立派なありそうな話になる」。
かくして、“ABC事業の・・・”ナンテ言う企画を持って行った。すると、トップヒアリングの会議で案の定、「ABCとは?」という質問が出て、「A*** B*** C***の略で、・・・」と説明する。何ともリアリティがありそうで、その会議だけは乗り越えられた。しかし言葉だけで中味がないため、その後に自分で墓穴を掘ったことは言うまでもない。
それに比べ、現在行われている“改革”は、言葉のアヤに止まらず、官僚・政権の深い意図があるので事はやっかいだ。
昨日(2014/06/17)も、集団的自衛権に反対する集会が東京・日比谷公園で開かれ、5000人が参加したという。しかし、タイなどの政情不安に比べると、日本は何とも平和だ・・・
政治家のやりたい放題を、結果として国民が放置している。いや、何よりも政治家が、どんなに国民が反対をしようが、どんなに有名人が大挙して反対を唱えようが、想定範囲内・・・と無視するので、何とも手段が無い・・・。
相手に分かる言葉で言うことは、コミュニケーションの基本。幾ら格好良い言葉で言っても、相手が分かる言葉で説明しないと、コミュニケーションは取れない。そんな当たり前のことは皆分かっているので、全ては意図的に「言葉多くして、相手に悟られないように・・・」という姿勢としか映らない。
それを見破って、真の姿を国民は見極めなければいけないのだが、日本人はそれに耐えられるのだろうか・・・。吉田元首相が言っていたように「国民はバカなので、知らせる必要も意見を聞く必要も無い」といった考え方は、今では死語か?
次世代を担う子どもたちのためにも、今のオトナがこの暴走している“改革”を止める方法を模索するしかないのだが・・・。
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コメント
おはようございます エムズの片割れさん
この記事 私も拝見しました。
難しい政治言葉ではなく 子供にも
大人にも分かる日本語で語ってくれる
詩人のアーサー・ビナードさんの言葉
頭ではなく 心に伝わりますよね。
話 変わりますが 今朝 6月19日
ラジオ深夜便 明日への言葉
『 書くことは 生きること 』
作家 村田喜代子
録音されてないでしょうか?
大好きな作家さんなのですが
聞き逃してしまいました (T_T)
もし 録音されていましたら
ダウンロードさせて頂けないでしょうか?
( 再々 本当に 申し訳ありません )
何卒 どうか よろしくお願い致します。
【エムズの片割れより】
録音ありますので、下記にアップしておきま~す。
http://emuzu-5.music.coocan.jp/zip/14061904.zip
投稿: nuts | 2014年6月19日 (木) 10:01
「あーうーの総理がちょっと懐かしい」中身のない言葉を早口でペラペラ喋る安倍さんにうんざり。大平さんあの世で「うー」とうなっているかも。それにしても自民党の議員は全員(寄らば大樹)の人ばかりなのだろうか。国民の声を聞こうとする議員は居ないのだろうか。不思議で仕方がありません。
【エムズの片割れより】
まさに「裸の王様」状態ですよね。今までは、野党も他の派閥も、ブレーキを掛けていましたが、もはやその力も失せて・・・。国民がどうすれば良いのでしょう・・・
投稿: 白萩 | 2014年6月19日 (木) 22:54
おはようございます エムズの片割れ 様
わぁいヽ(゚ー゚*ヽ)(ノ*゚ー゚)ノわぁい
エムズの片割れさんのお陰で !!!
村田喜代子さんのお話 ☆彡
とても 興味深く 拝聴することができました。
エムズの片割れさんに 後光 差してます!
本当に ありがとうございました。
投稿: nuts | 2014年6月20日 (金) 09:47
そうですね。
どうにも現政権は血の通った暖かな国民への政策が一つもないようで、「集団的自衛権」ばかりをがなり立てているように見える。
かつて自民党内には派閥があって、批判されながらも、いろいろな意見、考えがあるからと政党の存立の所以を誇っていました。
そもそも、世の中を暗いままに放置しておいて、少子化対策ひとつ真面目に取り組もうともしていない。年金もそう。国力が低下するのを無策でいいはずがない。
政治は大局を把握して、国全体をこう動かすのだと平明な解説を国民に示す必要があり、ときの政権の日和見な身勝手な解釈でわがままを通すべきではない。
あさはかな政治家はそもそも国民が見抜いて、横暴を許してはならない。
【エムズの片割れより】
昔の派閥がバランスを取っていたとは、当時はあまり考えませんでした。
元首相などを除くと、気骨のある自民議員は居るのでしょうか?
投稿: ケンカバ | 2014年6月20日 (金) 11:13
吃音の私は、村田喜代子さんの話聞きたい。しかし難聴なので誰か文章化してくれないだろうかと思う。
【エムズの片割れより】
難聴ですか・・・。自分も右耳は難聴ですが、左耳が無事なので、何とかなっています。
文章化ですか・・・。なかなか大変で・・・
投稿: み~子 | 2014年6月20日 (金) 14:36
戦争のできる国を目指す「平和主義」。かって戦前の軍国主義者も中国侵略の意図をごまかすためには「隠したりアイマイな表現」で繕う苦労をしたものでした。
80年後の今 形式的民主主義と80年前よりはるかに強大化したマスメデイアに守られて「シロをクロと言いくるめることが可能になったかのようです。
しかし あきらめの悪い 私はきょうも集団的自衛権解釈合憲閣議決定に抗議する集会に行ってきました。80年前、満蒙(満州、蒙古)は日本の生命線と叫ばれました。今 安倍はシーレーンが日本の生命線だとかたりそのためには日本の再軍備が必要と語り始めています。 ナショナリズムの浸透具合を見計らいながら本音をおもてに出してきています。
本音を出すタイミングを間違えることも多分多くなるはず。反撃の機会を見逃さないようにしたいものです。
【エムズの片割れより】
どうも外務省が、外交の切り札として集団的自衛権を後押ししているようですね。
マスコミでは政治家ばかり見えていますが、裏で官僚がどう動いているのかも、知りたいものです。
投稿: todo | 2014年6月20日 (金) 22:49
安倍総理大臣の 言っている。事は 中国の 脅威で フィリピン ベトナム タイコク オウストラリア アメリカと 協力して 中国に対抗して 集団自衛しますと 述べて いるのであり 何も 隣の 乱暴国に 対抗して 自衛 防犯しますと言っている。問題ないですね。以上。
投稿: 岡田健一 | 2014年6月22日 (日) 11:28
日本は、とか中国は、とか韓国がとか「国」を主語にして語りたくはありません。わたしは
日本の安倍首相を批判しますが中国の周近平の大国主義に反対ですし朴クネ大統領のナショナリズムにも絶対反対です。中国共産党政権のもとで虐げられている多くの人々に心から繋がりたいと思います。関東軍の憲兵としてのの経験を統治に生かした朴クネの父親。満州国の重鎮としての経験と人脈を生かした岸元首相の孫ーー安倍。
どの国の誰がなにをしているか?反発し合っているように見えて実は根っこのところでつながっているのではないか?しっかり見ていきたいものです。
【エムズの片割れより】
言われてみると、確かに3人とも何か根っこは同じような気もしますね・・・。
国民よりも**を見て政治をしているように見えるところ・・・。
投稿: todo | 2014年6月22日 (日) 22:04