映画「真昼の暗黒」を見る
昭和31年の映画「真昼の暗黒」を“今頃!”見た。何度も書いているように、自分は典型的なミーハー・・・
先日書いた「パソコン遠隔操作事件の弁護人・佐藤博史さんの話」(ここ)という記事で、佐藤弁護士の略歴に「刑事弁護人を目指した原点は、小学生の時、父に連れられて見た映画「真昼の暗黒」だそうだ。戦後の大冤罪事件「八海(やかい)事件」を描いたもので、死刑判決を受けた被告人が「まだ最高裁がある」と叫ぶラストシーンが印象に残った。最終的に最高裁で無罪が確定した結果を見て、「最後は真実が勝つ場所が刑事法廷だ」と強く感じたという。」という記載があり、アンディーのママさんからも小学校の時に見た、といコメントを貰ったこともあって、自分も見てみようかな・・・という気になってDVDをレンタルで借り、今日見たというワケ・・・。
実は、「八海事件」は、言葉はどこかで聞いていたが、詳細については知らなかった。映画を見終わってから、“初めて”勉強した。
この映画、見ていて胸くそが悪くなる。一緒に見ていたカミさんは、拷問での自白強要の場面のあまりのむごさに、途中で見るのを止めると言い出すほど・・・。事実に基づいているのだろう・・・と思うほど、直視するのがツライ・・・
この映画は、高裁判決の出た昭和31年3月公開の作品だという。その後、映画公開から最高裁での無罪判決まで、12年も要している。
<「八海事件」>
昭和27年 6月 山口地裁岩国支部 全員有罪
昭和28年 9月 広島高裁 全員有罪
昭和32年10月 最高裁 事実誤認として差戻し
昭和34年 9月 広島高裁 吉岡単独犯行で4人は無罪
昭和37年 5月 最高裁 複数の犯行として差戻し
昭和40年 8月 広島高裁 全員有罪
昭和43年10月 最高裁 4被告は無罪
それにしても、この最高裁での無罪判決は、 「昭和43年10月25日最高裁は証拠不十分を理由に原判決を破棄し無罪を言い渡した。最高裁が下級審の事実認定を覆し無罪を言い渡したのは裁判史上初めてのことであった。」 (ここ)という。どんな冤罪事件でも、いったん判決が下されると、ひるがえるのは難しい。何せ、有罪率99.8%という裁判の世界なので・・・
「八海事件」については、書かないが、警察・検察の思い込みの見立て、それに沿った自白の強要、警察・検察のメンツによる事態のエスカレート・・・。先日見たWOWOWドラマ「トクソウ」と同じテーマだ。こんなことも、今、実際に行われていることの、ほんの氷山の一角なのかも知れない。
しかし、さすがに今井正監督、橋本忍脚本・・・。昭和31年の映画賞を総なめにしただけのことはある。重い内容の映画である。そして出演者の中に、その後大活躍する俳優の若き日の姿があちこちに見られる。
久しぶりに日本映画を見直した。前に「「キネ旬」の映画史上ベスト10」(ここ)ナンテ言う記事を書いたこともあった。
それぞれの時代で評価された作品は、それなりに重みがある。改めて、昔の有名な作品は一通り見ておこうかな・・・と思った。そして「**事件」と名前のある事件は、これもその時代を表している。それらも一通り勉強して、「知っている」ことにしなければ・・・
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コメント
母が連れて行ってくれた映画は、
「真昼の暗黒」「八海事件」どっちだったかな?と、
時々思い出していましたが同じなのですね。
山口県での事件と言うのは覚えていましたが、
当時、細かい内容までは分かりませんでした。
徳島ラジオ商・・は、死後に無罪判決。
昔テレビでしていた「逃亡者」もそうなのですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%A4%E7%BD%AA
【エムズの片割れより】
冤罪事件を扱った映画は色々あるのですね。順番に見ておこうかと、レンタル予約してしまいました。
投稿: なち | 2014年6月16日 (月) 07:32
「真昼の暗黒」は観ておりませんが、ポスターは今でも鮮明に覚えております。ただこの主役を演じた草薙幸二郎は映画の後「イワンのばか」という劇を私の通っていた学校で演じてくれました。映画の主役はハンサムだと思い込んでいたので少々不思議で仕方ありませんでした。(失礼)民芸に合併する前の中芸に所属しておられました。その1年後ぐらいに作家の広津和郎の「松川事件」の公演を市民会館で聞きました。老齢だったのに力を込めて冤罪の怖さを話してくれました。大勢の人が真剣に聞いていました。高校生にもその熱が伝わってくるようでした。このころ冤罪を思わせる事件がいくつか続いたのですね。ものが言えない市民にならないようにしっかりしたいものです。
【エムズの片割れより】
先の秘密保護法案も含めて、冤罪が他人事ではなくなって来たようで・・・、困ったものです。
投稿: 白萩 | 2014年6月16日 (月) 16:43