「女性が働くと経済が成長?」~家事の価値は150万円?
先日の日経新聞にこんな記事があった。
「(エコノ探偵団)女性が働くと経済が成長? 創造力や多様性、活力生む 長期的視点で環境整備を
「政府が専業主婦の優遇策を縮小しようとしているそうね」。怒った主婦が事務所に来た。「成長戦略だというけど逆効果じゃないの?」「し、調べてみましょう」。探偵、松田章司は気押されたように事務所を飛び出した。
調べると、政府の産業競争力会議や税制調査会などで配偶者控除の廃止が議題に上っていた。配偶者控除は妻が年収103万円以下なら、夫の年収から38万円を差し引いて所得税を計算でき、負担が減る制度。実際はこの水準を超えても別の控除があるので世帯の手取りが減るわけではない。ただ、心理的負担に加え、配偶者手当の支給基準にする企業もあるため、この額以下に抑える人が多い。
2つの就労の壁
「何が狙いですか」。大和総研を訪ねると、研究員の是枝俊悟さん(28)が「本当はもっと働きたいのに、制度が原因で年収や労働時間を抑えている人を減らすのが目的です」と説明した。
配偶者控除の上限は、年金や健康保険の負担が生じる年収130万円と並び、就労を阻む“壁”とされる。厚生労働省の調査でも、就労調整をした主婦パートの6割が103万円の壁、5割が130万円の壁を意識していた。
日本の年齢別就業率のグラフは、男性が30~50代で高いのに対し、女性は出産・育児による退職が増える30歳代で60%台に下がるM字型(図)。是枝さんは「年収130万~200万円は手元に残る割合が低い『割に合わないゾーン』。人口減による人手不足を考えると、これを解消して意欲のある育児世代の女性を生産性の高い仕事に誘導する必要がある」と指摘する。
有償労働に転換
「家事などの無償労働は国内総生産(GDP)に含まれない。女性が働きに出れば、家事や育児の関連サービスの消費が増えてGDPの規模も大きくなるはず」。章司はその影響を調べるため、内閣府の経済社会総合研究所を訪ね、研究専門職の三井康正さん(63)に話を聞いた。
章司が「家事などの価値を金銭換算するといくらですか」と聞くと、「3つの方法で試算しました」と2013年に公表した資料を出した。例えば家事、育児などをしたのと同じ時間だけ、企業などで働いたと仮定すると、女性は11年の1人平均で年192万円を得られた計算だという。国全体では111兆円弱になり、GDPの約4分の1に相当する規模だ。
一方、炊事は調理師、育児は保育士など職業別の賃金を組み合わせて計算すると約156万円。全てを家事代行サービスの賃金で計算すると約142万円だという。章司は「この一部が有料サービスに置き換わっていけば、増えた分は成長率を押し上げる可能性があるな」と思った。
「でも女性が働きに出ると子どもが減り、成長にはマイナスじゃないかな」。章司は女性活用に関するリポートを発表したゴールドマン・サックス証券のチーフ・ストラテジスト、キャシー・松井さんに質問した。すると意外な答えが返ってきた。「厚労省調査では、世界各国の女性の就業率と出生率との間には正の相関(就業率が高いほど出生率も高い傾向)がありますよ」。日本でも同様に静岡、長野、福井では就業率と出生率がともに高水準なのに対し、東京、北海道、奈良では就業率、出生率ともに低い。
「高齢化や人口減少に直面する日本で長期的な潜在成長率を上げるには、女性の就業率を上昇させる以外に現実的な方法はない」と松井さん。同社試算では、就業率が男性並みになれば潜在的なGDP増加率は13%になるという。職場に女性が増え人材の多様性が高まれば「革新的な考えや創造力を持った人材の育成にもつながる」と松井さん。
厳しい現実も
「主婦の声も聞いてみよう」。章司は母親の支援団体スタンド・フォー・マザーズ(東京・港)を訪ねた。子育て中のメンバーに意見を聞くと「小さい子を預けて働ける仕事はない」「育児休暇から戻ろうにも保育園の空きがない」と厳しい答えが返ってきた。代表理事の掃部まゆさんも、「子どもの成長に合わせ育児と仕事のどちらを優先するか自分の価値観で選べるのが理想ですが、現実はどちらも厳しい」と指摘する。章司は「優遇制度を廃止するだけなら、一部の人にしわ寄せがいきそうだ」と思った。
学習院大学教授の鈴木亘さん(43)に意見を聞くと、「政策の効果は現実の環境を踏まえて考える必要があります」と指摘した。戦後、企業の多くや国は、男性を長時間、仕事に専念させる仕組みを前提に、夫を家庭で支える“妻の給料”を税控除や手当の形で実質的に払ってきた。「職場の現実を変えないまま優遇を廃止して女性を働かせても、夫は家事負担が増えて労働時間が減った分、所得も減る可能性が高い」と鈴木さん。
「女性が安心して働くにはもっと保育所や介護施設が必要で、国民負担は増える。人手不足が生じる前に無理して労働者を増やせば失業が増える可能性もあり、短期的な経済成長だけを目的とするなら効果は疑問です」という。
「長期と短期、両面から評価する必要がありそうです」。事務所に戻った章司が報告すると、所長が「うちも長期的な成長のために短期的な負担が必要なんだ」。前月より薄い給料袋を差し出した。」(2014/05/27付「日経新聞」p28より)
前に「この世でもっとも過酷な仕事」(ここ)という記事を書いた。
世の母親は、自然と“無償の愛”を子育てや家庭に注いでいる。その測れないであろう“母親の価値”を、大胆にも計算し、その結果が、150万円ほどだという。少し少ない気もするが、子育て世代の亭主の給料からすると、そんなものかも知れない。
先日の日経新聞に、こんな記事もあった。
「日本の女性、まだまだ働きにくい 男女平等度 先進国で最低レベル
安倍晋三首相が成長戦略の中核に挙げる「女性の活躍」。だがこれは日本が先進諸国の中で女性の活用が遅れていることの裏返しだ。世界経済フォーラムがまとめた男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」で、2013年の日本は105位で、08年の98位より後退した。管理職に占める女性の比率は先進国では3~4割程度が一般的だが、日本は9%どま り。同一労働の賃金で男性を100とすると女性は62にとどまる。成長戦略では25歳から44歳までの女性の就業率を20年に73%に高める計画だが、多くの課題が浮き彫りになっている。」(2014/05/26付「日経新聞」より)
この「経済分野での平等度を示す主な指標」のグラフが面白い。女性管理職が日本に少ないのは分かっていたが、世界的に見ると先進国でラストとは・・・
逆に、アフリカ・ナイジェリアでは、女性に教育はいらない、として4月に200人以上の女子生徒を誘拐した事件は、世界に衝撃を与えたまま1ヶ月半経った今も、まだ解決していない。
フィリピンのような、経済分野における男性と格差がない社会とのあまりの落差・・・。
日本では今後、女性のパワーを社会でどう活用していくのか・・・
残業ゼロ法案など、政府の暴走は相変わらず。せめて、これ以上日本の社会が悪化することだけは止めたいものだが、我々国民に首相の暴走を止める力は無さそうだ・・・。
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