「集団的自衛権」の調査~読売71%容認、朝日27%賛成
こんな記事を、どう読む???
「集団的自衛権、71%が容認 読売調査
読売新聞社が2014年5月9日から11日にかけて行った世論調査によると、71%が集団的自衛権の行使を容認する考えを示した。大半が「限定容認論」を支持しているが、8%は全面的に容認する考えだ。
設問の内容は
「日本と密接な関係にある国が攻撃を受けたとき、日本への攻撃とみなして反撃する権利を『集団的自衛権』と言います。政府はこれまで、憲法上、この権利を使うことはできないとしていました。この集団的自衛権について、あなたの考えに最も近いものを、1つ選んで下さい」
というもの。「使えるようにする必要はない」という選択肢を選んだ人が25%にとどまったのに対して、「全面的に使えるようにすべきだ」が8%、「必要最小限の範囲で使えるようにすべきだ」は63%にのぼった。
一方、朝日新聞社が4月19~20日に行った世論調査では、容認に否定的な結果が出ている。
「集団的自衛権についてうかがいます。集団的自衛権とは、アメリカのような同盟国が攻撃された時に、日本が攻撃されていなくても、日本への攻撃とみなして、一緒に戦う権利のことです。これまで政府は憲法上、集団的自衛権を使うことはできないと解釈してきました。憲法の解釈を変えて、集団的自衛権を使えるようにすることに、賛成ですか。反対ですか」
という問いに対して、賛成は27%にとどまり、反対は56%にのぼった。」(2014年5月12日J-CASTニュース(ここ)より)
改めて、読売新聞(ここ)と朝日新聞(ここ)の記事を読んでみる。
世論調査なので、自紙の読者を対象に調査した訳ではあるまい。すると対象者は同じであり、同じような調査結果が出るはず。しかしこの違いは何か・・・
これらの設問と回答の選択肢を見ると、どうもある方向に回答を誘導しているように見える。朝日が賛成か反対か、という二者択一なのに対し、読売は「“全面的に”使える・・・」「“必要最小限”の範囲で使える・・・」という選択肢。
つまり朝日が単純に「有罪」か「無罪」かを聞いているのに対し、読売は、“全面的に”の「死刑」から、“必要最小限”の「執行猶予」まで広範囲に「有罪」=「使える」を選ばせているように見える。そして自紙の主張に近い結果を導き出して、大々的に紙面を割いている・・・
一方、朝日も「日本が攻撃されていなくても」という一文に朝日の思いが込められているように見える。
選挙の世論調査では、各紙の結果はほとんど同じ。しかしこのような、自紙の主張に絡む調査は、誘導してでも、都合が悪い結果にはしたくないものらしい・・・。そして、都合がよい結果は大きく報道し、都合の悪い結果は小さく報道・・・
それにしても、これほど白黒が逆転するとは・・・。
話は変わるが、韓国の沈没事故の報道。韓国紙が、かなり強烈に政権批判をしていたので、韓国のメディアはまだまだ民主的だな、と思っていたら、こんな記事があった。
「米紙に朴大統領批判の全面広告
【ニューヨーク共同】11日付の米有力紙ニューヨーク・タイムズは、韓国の旅客船セウォル号沈没事故をめぐる朴槿恵大統領の危機対応を批判し、メディアも検閲を受けて真実を報道していないとする内容の全面広告を掲載した。広告主は「韓国民主主義運動」という団体名になっている。
広告は旅客船が転覆して海に沈んでいく様子を描いた図柄とともに「真実を明らかに。韓国人はなぜ朴大統領に激怒しているのか」という見出しを付けた。
生存者が見つからない救助活動を「朴政権の指導力不足と無能さ、怠慢ぶりを見せつけた」とし、主要メディアは「政府の検閲によって沈黙している」と非難した。(2014年5月12日共同通信(ここより)」
とにかく報道にも、政権を背景にした法人としての“意志”がある。それを選んで、どう読むのは読者自身の責任。
さっき、NHKでも世論調査の結果をニュースで放送していたが、およそ公正な報道は無い、という前提で、自分の目を養うしかない。
(2014/05/14追)
今朝の朝日新聞で、各メディアによる世論調査の違いが記事になっていた。
「集団的自衛権の世論調査、各社で違い 選択肢の差、賛否に影響
安倍首相が目指す憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は政治の最大の焦点になっている。それだけに、報道各社は電話による世論調査でこの問題について質問し、民意を探ろうとしているが、調査結果には大きな違いがあるようにみえる。世論調査の回答は、質問の順番や文章などに影響されることがあり、今回は選択肢の立て方や文言が異なっていることが大きそうだ。
4月中旬の共同通信、日本経済新聞・テレビ東京、朝日新聞の調査は、集団的自衛権について説明した上で、憲法の解釈を変えて集団的自衛権を行使できるようにすることに「賛成」か「反対」か、二択で尋ねている。結果は多少異なるものの、いずれも「反対」が「賛成」を上回るという傾向は一致している。
一方、毎日新聞、産経新聞・FNN、読売新聞の調査では選択肢は三つ。集団的自衛権 の行使を必要最小限に限るとする、いわゆる「限定容認論」を選択肢に加えたのが特徴で、「全面的に使えるようにすべきだ」「必要最小限の範囲で使えるようにすべきだ」「使えるようにする必要はない」といった三択になっている。
結果をみると、「全面」賛成派は1割前後にとどまるが、「限定」賛成派は最多の4~6割。反対派は2~4割だった。「全面」と「限定」を合わせると、賛成派は反対派を上回る。
二択では反対派が多数なのに、三択になると賛成派が多数になるのはなぜか。
まず、三択で賛成の選択肢が二つ、反対の選択肢が一つと数が異なると、選択肢の多い方が回答の比率は高くなる傾向がある。
さらに、集団的自衛権の問題は、多くの国民にとって理解が難しい面があるのは確かだ。こうした問題で選択肢が三つ以上あると、中間的な選択肢に回答が集まりがちだ。また、「必要最小限の公共事業」「必要最小限の国民負担」という言葉を思い浮かべれば分かるように、「必要最小限」という文言が加わると、反対しにくくなる。
NHKの4月中旬の調査は選択肢は四つ。「憲法を改正して」と「政府の憲法解釈を変えて」を合わせた「行使を認めるべきだ」は34%で、「政府の憲法解釈と同じく」と「集団的自衛権自体を」を合わせた「認めるべきではない」は42%。反対派が賛成派を少し上回った。
一方、選択肢に「どちらともいえない」が加わった5月9~11日の調査では、「どちらともいえない」が最多になった。
日本が集団的自衛権を「行使できるようにすべきだ」は30%、「行使できるようにすべきではない」は23%で、「どちらともいえない」は37%。憲法解釈を変更することで集団的自衛権を行使できるようにするという考えについては「賛成」27%、「反対」30%で、「どちらともいえない」は36%だった。(山下剛)
まだ有権者に明確な意思ない
<埼玉大の松本正生・社会調査研究センター長(政治意識論)の話> 集団的自衛権は難しいテーマなので、報道各社の調査結果に違いがあるのは有権者がまだ明確な意思を持ち合わせておらず、世論が熟成していないことを示しているのではないか。質問文や選択肢の設け方によって出てきた様々な数字から、世論の多面的な側面を読み取ることができる、ともいえる。そこにこそ、各社がそれぞれ調査を実施する意義がある。」(2014/05/14付「朝日新聞」p3より)
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