「遅い昇進」でやる気維持
先日の日経新聞にこんな記事があった。
「経済教室第10章良い組織・良い人事(5) 「遅い昇進」でやる気維持 東京大学教授 大湾秀雄
日本の大企業の人事管理の1つの特徴として、「遅い昇進」というものがあります。入社して10~15年、30代半ばまでは、ほぼ同じタイミングで昇格し、少なくとも職能等級や肩書は同期の中で差がつかないという慣習です。人気を博した漫画「課長 島耕作」では冒頭、主人公が同期よりも早く、入社14年目にして初芝電器の宣伝課課長に昇進します。
これに対し、米国では入社して数年のうちに幹部候補生の選別が進み、20代で管理職に就く人も少なくありません。どうしてこのような違いが生まれるのでしょうか。
管理職への昇進時期が遅いと、会社の将来を担う幹部候補生への投資が遅れます。リーダーの育成のためには、有望な社員に早くから人の管理を含め様々な経験を積ませることが重要です。また、昇進の遅れは、転職機会に恵まれた優秀な人の離職にもつながります。しかし、遅い選別には別の経済合理性があり、戦後高度成長期の日本の事業モデルには適していたとの見方が有力です。
まず、誰が将来良い管理職になりそうか、上司の方が本人よりも良く知っていると想定して下さい。「早い昇進」には、昇進できなかった人のやる気を下げるという問題があります。選ばれた人は意気揚々と仕事に打ち込めますが、選ばれなかった人達のモチベーションは下がります。「遅い昇進」は逆に多くの人に「自分にもチャンスはある」という期待を抱かせ、高い努力を継続させられます。
戦後、高度成長期に多くの日本企業で末端の社員が成長や改善の機会を見つけ、会社の成長に役立てるという役割を担ってきました。過去の調査は、日本企業の実質的な意思決定は米国企業よりも分権的、つまり、より低いレベルで意思決定を行ってきたことを示しています。
日本企業では昇進を遅らせ末端の社員のやる気を維持することの方が、早い昇進でリーダーを育成することよりも重要だったのでしょう。」(2014/04/21付「日経新聞」p17より)
会社における昇進のスピード。そんなものか・・・と今まで疑いを持つ事は無かった。しかし、日本企業の「遅い昇進」には、こんな“戦略”が秘められていたとは・・・。
自分が入社したのはまさに高度成長期の1970年。同じ事業部に配属された同期は40人もいた。入社後の数年間は辞める人が何人も出たが、その後は辞める人はほとんどいなくなった。今考えると良い時代で、学卒者は全員が管理職になった。
その後、さすがに会社も変わり、自分が会社を卒業した10年ほど前には、同じ資格で10年経つと、自動的に下がる、というルールも出来た。10年間資格が上がらないということは、この人材はもう育てない、という会社のジャッジ・・・。特に、管理職から一般職に下がると、退職金も大きく変わるため、その条件に合致した人には、当時激震が走ったもの・・・。
今はどうなっているか知らない。退職金もポイント制になったと聞く。つまり各年度の業績の積み重ねが、退職金に効く・・・。
人材活用も、どんどん合理的になって行く。昔と違って今は、幾ら大学を出ていても、一般職(平社員)のままだったり、管理職から平社員への降格、というのも珍しくなくなった。
先日、産業能率大学から「新入社員の理想の上司」ベスト10が発表になったという(ここ)。
我々ベテランからすると、「部下は選べるが上司は選べない」のは当たり前の話。よってこのような調査は、どのように捉えて良いやら・・・。
まあ自分が部下を持ったら、こんな基準で若者は捉えている、という勉強材料か・・・
とにかくサラリーマンに取ってみると、昇進は給料の上昇と同時に、責任と権限が広がるため、やり甲斐もあるが、部下が増えるのでストレスも多くなる。
4月もそろそろ下旬を迎える。この4月に職場が替わった人も、そろそろ落ち着く頃だし、新入社員も、そろそろ現実が分かってくる頃。
まずは与えられた環境で頑張るしかない。それにしても、昇進と関係のない生活は、何と心が平穏なことか・・・
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