藤山一郎の「青春日記」
自分が子どもの頃から聞いていた「懐かしのメロディー」で、まだ挙げていない歌があった。藤山一郎の「青春日記」である。
<藤山一郎の「青春日記」>
「青春日記」
作詞:佐藤惣之助
作曲:古賀政男初恋の
涙ににじむ(しのぶ) 花びらを
水に流して 泣きくらす
あわれ十九の 春の夢今日もまた
瞳に燃ゆる 夕映に
思い乱れて むらさきの
ペンのインクも にじみがち泣き濡れて
送る手紙の 恥ずかしさ
待てば淋しや しみじみと
街の舗道の 雨の音明日から(は)
二度と泣くまい 恋すまい
いくら泣いても 笑うても
胸の痛手は 癒りゃせぬ
昭和12年のオリジナル盤も聞いてみよう。
この二つの音源を聞き比べてみると、歌詞が違う・・・
オリジナルでは、1番が「涙にしのぶ 花びらを」と歌っているが、ステレオ再録盤では「涙ににじむ 花びらを」と歌っている。
そして4番(オリジナルでは3番省略)の「明日(あした)から」と歌っているが、同じくステレオ再録盤では「明日(あす)からは」と歌っている。
歌詞を大切にして、はっきりと歌うことが信条だった藤山一郎にとって、この違いは何だったのだろう・・・。
この歌は、意外と放送で流れていない。心に滲みる良い歌なのに・・・。
それにしても、この歌を初めて聞いたのは、中学生の頃だったか・・・。藤山一郎の歌で、自分の好きな順に挙げると、「白鳥の歌」「長崎の鐘」の次くらいに位置している。昭和12年の発売だというので、かなり初期の作品。上のステレオ再録盤の録音時期は分からないが、藤山一郎の声はほとんど変わっていない。
そしてその歌詞だが、19歳のときの日記・・・。そして失恋・・・。何ともロマンチックな情景・・・
歌詞オンチの自分だが、「思い乱れて むらさきの ペンのインクも にじみがち」という歌詞で、少々乱暴だが、井上陽水の「心もよう」の歌詞を思い出す(ここ)。
「寂しさの つれづれに 手紙をしたためています あなたに 黒いインクが綺麗でしょう 青い便箋が悲しいでしょう・・・」
おっと、こちらは手紙だった・・・。
ペンやインクという言葉も、今ではほとんど死語・・・。今はワープロが主だし、手書きてもボールペン。何とも風情がない。
でも失恋のやりきれなさは昔も今も同じ。しかも、どちらも十九・・・。
ついでに、「明日から 二度と泣くまい 恋すまい」という歌詞は、水原弘の「黒い花びら」だな(ここ)。
「俺は知ってる 恋の悲しさ 恋の苦しさ だからだから もう恋なんか したくない したくないのさ」
先日、空き家になって2年になる実家の家財道具の整理に行ってきた。玄関で転んで骨折し、そのまま病院から老人ホームに行って92歳で亡くなったお袋。
その実家に久しぶりに行ってみると、時間がその瞬間で止まっている居間。いつも座っていたコタツの上には、手帳がひとつ。開いてみると、予定表の所々にメモが・・・。決して日記と呼べるものではないが、そこにお袋が居た。親父もお袋も、心の内を示す一切のメモも残さないまま、逝った・・・。
でも、まして青春時代の日記など、もし残っていたら、誰の目にも触れられたくないもの・・・。
先日も、現役時代の同僚の奥さんが、朝元気だったのに突然倒れて、急に亡くなったと聞いた。我々も、もういつ亡くなっても良い年頃・・・。
もし“青春日記”が残っていたら、そろそろ探し出して処分する頃なのかも・・・。
何とも、考えさせられる(?)「青春日記」ではある。
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コメント
昔、聴いたこの歌は涙ににじむでしたが、最近聴く歌は全部涙にしぼむと歌われていますね。
ラブレター、素敵ですね。文章には人柄、知性、品性が現れています。50年前にはすべて手紙でしたね。Gぺんにインクをつけて書いてみたり、万年筆を使ったり、いかに字が美しく見えるか研究したものです。泪ではなく宛先が雨に滲んだ青いインクの達筆な手紙が届くと嬉しかったものです。先日、郵便屋さんにたまにはラブレターを届けてよと言ったら「無理ですねぇ」と苦笑いをされてしまいました。青春日記を聴くと一気に青春時代に戻ります。
【エムズの片割れより】
歌詞が時代とともに変わって行くのでしょうか??
自分も今度「たまにはラブレターを届けてよ」と郵便屋さんに言ってみようかな・・・。
投稿: 白萩 | 2014年3月17日 (月) 13:44
昭和28年ごろでしたか、ラジオドラマでアチャコ青春日記というのをアチャコと浪花千栄子さんがやっていてそのテーマ音楽に使われていたのでよく覚えています。歌詞なしでしたが、大変親しんでいて後年藤山一郎さんの歌と知りました。その頃は「涙にしぼむ花びらを」という歌詞だったように覚えています。youtubeにアップされているテイチク盤のSPレコードでもそう歌っていますね。Webで歌詞を調べると「涙ににじむ」というのがあって、ちょっと驚きました。
【エムズの片割れより】
自分は、アチャコと聞くと「お父さんはお人好し」という番組しか出て来ません。
昭和28年というと自分は小学校に上がる前。記憶にありませんね・・・。ムリですね・・・
投稿: 雪爺 | 2014年3月20日 (木) 18:15