魂の自由を守るには「田園に帰ればいい」
文藝春秋の今月号(2014年4月号)に、曾野綾子の「日本のリーダーの見識に思う」という記事があり、その終わりの部分の一文が気になった。
「都知事選に思ったこと
今度の都知事選を見ていてしみじみ思うのは、人間は自分というものの実質をなかなかわからないものなのだ、ということだった。自分はまだ世間から要求されている、まだ人気がある、と思い込むことの愚を見せつけられた感はある。
一度トップに立つことになった人は、ことに引き際が大切だ。その任に就いた日から辞める日のことを想定し用意すべきだろう。自分が脳血管障害に見舞われて自由に思考や表現ができなくなった場合を考えて、年月日だけを記入していない自筆の辞表を用意するのは当然の義務と言える。自分が意識を失った場合、家族には一週間後にはそれを自動的に提出するようにと言っておくべきだ。
世間にたくさんある財団の理事会などで、会長が出席不能になった場合、家族からも辞表は提出されず、長らく会長が実質空席のまま組織に迷惑を掛け続けている例を、私は余りにも多く見て来た。役所の場合なら、働けない人に数ヵ月も一年も、国民の税金から月給を払うことになる。それは余りにも心ないことだ。日付のない辞表を着任の日に用意するということは、トップの最低のたしなみというべきだろう。
トップでなくてもサラリーマンは、どうしても自分の信念とぶつかる上司に会った場合、転職ができればいいが、常に他の方法で生きる道を心に用意しておくことだ。作家の生活にも長い年月、大手新聞社とNHKなどテレビ局による言論弾圧の時代があった。当時、これらのマスコミは、中国を批判する内容を一行たりとも表現することを許さなかったのだが、このことを謝罪したことはない。
私はその度に書くのを止めて生きる道を考えた。それは畑でジャガイモを作って暮らす生活だった。幸いにも日本は人口が減り、農業から離職する人も増えて、農地は比較的手に入りやすくなっている。魂の自由を守るには、「田園に帰ればいい」のである。私はそこまでいかなくて済んだが、今でも素人にしては驚かれるほど、野菜を作る方法に詳しくなっている。おかげで私の晩年の趣味道楽は、一つ増えたのである。(曾野綾子)」(「文藝春秋」2014年4月号P124より)
この「トップの最低のたしなみ」はその通りかも知れない。しかし該当者は、そう多くは無い。民間会社の場合は、本人の意志とは無関係に、人事異動でどうにでもなる。病気で業務が遂行出来なければ、立場が変わるのは当然。
それより、サラリーマンの場合は、「どうしても自分の信念とぶつかる上司に会った場合・・・」のケースの方が問題。その解決策は「田園に帰ればいい」・・・か。
これは一種の開き直りだな・・・。
昨夜のNHK大河ドラマ「軍師勘兵衛」第11回「命がけの宴」(2014/03/16放送)は、信長の命により北国攻めに行った秀吉が、戦場で柴田勝家と言い争った末、信長に無断で帰国してしまう。そして謀反を企てていない証としての、有名な宴会の場面・・・。
昨夜のドラマでは、そのバカ騒ぎの宴会に官兵衛が怒鳴り込んできたとき、秀吉は、自分の行動は間違っていない、切腹は覚悟の上だ、と断言する。そして腹をさすりながら「痛いだろうな~」。そして部下たちに、「こんなワシによう付いてきてくれた。このまま死んでも、このワシは幸せだ」と言い放つ・・・。
これは上司(信長)の命に背くには、それだけの覚悟(切腹)が必要、ということ。でも秀吉の場合は「田園に帰ればいい」では済まない。何せ相手は信長である・・・。
でも一般的には「田園に帰ればいい」・・・の覚悟は、なかなか出来ない。すると上司に迎合するしかない!? それもツライが・・・
話は飛ぶが、自分の近い男の昔話。その男は都会が好きで、あるメーカーに入社したときに東京の事務所に配属になったが、都心から1時間以上かかる田舎に新しい工場が出来て、そこに転勤になった。しかし「こんな田舎はイヤだ」と上司にダダをこね、何とか都心に転勤になったものの、結局会社を辞めてしまった。そして、奥さんに食べさせて貰いながら勉強し、1年半後にある業務独占資格に合格し、上司に仕えることなく暮らした。
でも、上司に楯を突いて、自分のダダを通し、退職できたのも、奥さんが当時小学校の教員をやっていたのと子供が居なかった事が大きい。もし家庭に子供が居て働き手が自分ひとりだったら、到底こんなことは出来ない。既に自分ひとりの人生ではないので・・・
もうすぐ4月、転勤のシーズンだ。哀しき我が“迎合の現役時代”を振り返り、「人間万事塞翁が馬」という諺を思い出した。
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コメント
こんにちは
>畑でジャガイモを作る・・・
これ私やっています、といってもそれ程の信念に基づくものではありませんが自分で食べる野菜の8割位は自給しています。
人の世の権力を目指した人の最後が「畑」ならば私は最初から「畑」を目指します。では
【エムズの片割れより】
8割の自給率とは、スゴイですね。畑は人類の原点ですよね。我々農耕民族の・・・
投稿: 空 | 2014年3月18日 (火) 16:49
私も50%は自給をしています。無農薬ですので、夏はほとんど無いです。虫が食べないようなバイアムという東南アジアのものでしょうか?そういうものです。空さんの投稿を読んでメールをしました。
【エムズの片割れより】
バイアムって、自分は名前を知らずに食べていました・・・。
投稿: 紅いサボテン | 2014年3月23日 (日) 11:27
バイアムってご存知ですか?。御近所の方は穂、又は実を食べているとおっしゃっていました。東南アジアでは主食だ!。と言って40年前に分けてもらいました。でも私は夏の野菜として葉っぱを食べていました。その後実を食べたら、粟、稗のようです。米の上に載せて炊くと、餅稗のようでおいしいです。でも保存が出来ません。穂を刈った後は一週間でだめになります。
【エムズの片割れより】
バイアムって、ミックスサラダに入っているのでは??違ったかな・・・
投稿: 紅いサボテン | 2014年3月23日 (日) 19:19
少し違うようです。食べたことはありませんが、ミックスサラダに入っているのは、これに似た様な名前がありますね。バイアムは虫も食べないほどですから、味も無いし、パサパサしています。たまねぎや、にら等、何かと炒めて食べます。
【エムズの片割れより】
ちょっと外れたようで・・・
投稿: 紅いサボテン | 2014年3月27日 (木) 08:47
俳句も新人、ブログも新人、坐禅も新人です。でも記念講演会のおしらせ(2014、06,27開催)には行こうと思っています。このブログにたどり着いたのは、{春が読んでいるよ}でした。読んでいると、すごいですね。昔を思いだして、何度も聞いていました。
【エムズの片割れより】
いよいよ春ですね。東京の桜も咲いたとか・・・
投稿: 紅いサボテン | 2014年3月29日 (土) 14:30
えーっ!ブログの主は北海道?いよいよ春ですね。東京の桜もさいたとか・・・
大岡川の桜は満開でした。花びらは散っていませんので、8分先かな?多摩川土手の雪柳が本当に雪のようできれいでした。
【エムズの片割れより】
当八王子は、4月になってもまだ九分咲き・・・
投稿: 紅いサボテン | 2014年3月31日 (月) 10:51
私のグループが八王子に多いので、どこへ行くのも集合が八王子駅です。孫も八王子に近いです。すこしこちらより寒いですね。高速道路も出来、すごい発展をしていますね。
高尾山からの眺めで、あのあかりは八王子です。横浜と同じくらいの夜景で、驚いたことを思い出しました。
【エムズの片割れより】
高尾山もミシュラン登録以来、大騒ぎで、久しく行ったことがありません。
投稿: 紅いサボテン | 2014年4月 3日 (木) 23:32
高尾山にはロープウエイで、頂上まで行けます。夏、「俳句会の方ですか?と聞かれたことがありました。
私達は山の散策でしたが、地名の花しょうまを探して歓声を上げていました。
夜、カナカナの俳句会でした。カナカナや・・・
平地と違って高い澄んだ声でした。
夜のしーんと静まった頃によく通って聞こえました。
投稿: 紅いサボテン | 2014年4月 8日 (火) 09:45
4月12日、八王子駅集合で大菩薩峠に行って来ました。大菩薩峠は私をお呼びでは無い様で、3回目も駄目でした。2月の大雪で通行止め。まだまだ修行が足らぬ。でしょうか?
投稿: 紅いサボテン | 2014年4月15日 (火) 10:14