AMラジオ放送がFM同時放送開始へ~在京3局は15年9月試験放送
今朝の朝日新聞の1面にこんな記事があった。
「AMラジオ局、FM波放送も 高層ビル街でも聞こえやすく、災害にも強く
ラジオのAM放送で流れている番組が早ければ来年中にも、FM波で同時放送されることになった。難聴取地域の解消や災害対策が当面の狙いだが、ラジオ局にとっては高音質のFMにより聴取者を増やせるという期待もある。国のラジオに関する電波政策が転換点を迎える。
総務相の諮問機関・電波監理審議会が12日、難聴取・災害対策を条件に、AM局にもFM放送の免許を出せるよう規制緩和することを認める答申を出した。ニッポン放送(東京)やMBSラジオ(大阪)は同時放送する意向。総務省の昨年の調査ではAM局の8割も意欲を示している。ただ、周波数の帯域が広がることで、国内で市販されているすべてのラジオで聴けるわけではない。ラジオ局は聴取が可能なラジオの増産をメーカーに働きかける意向だ。
AMの電波は波長が長く、遠くまで届くが、ビルや電子機器などの影響を受けやすい。一方、FMの電波は高音質だが、波長が短く、届く範囲が狭い特徴がある。
これまでAM局によるFM放送は、外国電波との混信対策が必要な北日本放送(富山)など一部しか認められていない。今回の規制緩和で、高層ビルのある都市部などAMの電波が届きにくい地域や、AMの送信所が津波や土砂崩れなどで被災する恐れのある地域で、FMでの同時放送ができるようになる。テレビの地上デジタル化で終了したアナログ放送が使っていた「跡地」の電波帯を活用する。(丸山ひかり、成川彩)(2014/03/13付「朝日新聞」p1より)
「AMも維持、国求める 同時放送、ラジオ局は負担懸念 FM整備、国補助は部分的
総務省が進める規制緩和により、AMのラジオ局によるFM同時放送が可能になる。しかし、AM局がFM局になるわけではない。国にはAM放送の中止を許すことができない事情があるからだ。ラジオ局は2種類の電波を送出することになり、新しいアンテナなどの設備投 資で負担増になる恐れがある。
AM局によるFM放送を認める方針を打ち出した総務省だが、局側にはAM放送の継続を求める構えだ。「AM放送をやめれば、隣国の電波が雨のように空から降ってくるのを防げない」と総務省幹部は話す。
AMの電波は遠くまで届く性質があり、国境を越える場合もある。各国は、同じ帯域の電波を使う際は互いに混信しないよう、出力を調整している。だが、日本国内で使われない帯域が生まれれば、中国や韓国、北朝鮮などの隣国が、電波の出力を強めることを防ぎにくくなるという。
政府は、ラジオ局の負担を軽減するため、FMの同時放送をする際は、送信所の整備費に最大で3分の2の補助金を出したり、法人税や固定資産税を優遇したりして支援する。
ただ、ラジオ局の本音は異なる。FM同時放送に強い意欲を示すMBSラジオ(大阪市)。運営する毎日放送の河内一友社長は「本音を言うと、AMを将来的にも続けていくというのは負担だ」と明かす。
同局はFM放送の来年末までの開始も視野に入れている。大阪市中心部ではビルの陰や高架下などAMが聞こえにくい場所が多い。「音質の高いFMの活用はサービスの向上になる。リスナーを開拓したい」と担当役員。今年中にも免許申請し、工事を始める。テレビのアナログ放送で使っていた鉄塔にFMアンテナを取り付ける。アンテナには国の補助金が出る見通しだが、発電機や機材を収納する建物は「自腹」になる可能性もある。出費は「億円規模」を上回るとみている。
AMと同じ放送内容で広告収入がどの程度得られるか不透明な面もある。AMの送信所は広大な土地や100メートル超の鉄塔などにより、高いコストがかかることへの懸念もある。MBSのAM送信所は老朽化が進み、約20年後に建て替えが必要。放送は中断できないため、新しい送信所のために代替地が必要だ。
FM同時放送に強い関心を示すニッポン放送(東京都千代田区)の村山創太郎社長も11日の定例会見で、「すぐにもAMをやめるとは考えていない」としつつも「実際にFMをやってみて総合的に判断していく」と含みを持たせた。
北朝鮮などの電波との混信に悩んできた富山市の北日本放送。特例としてFMを使った同時放送が認められている。同局は「二つの電波を出しても広告費は増えないので、経費的デメリットは大きい。AM放送の維持は大変だ」ともらす。(成川彩、丸山ひかり)」(2014/03/13付「朝日新聞」p7より)
この記事の詳細を知るために、昨日総務省が発表した報道資料を眺めてみる(ここ)。一番気になるのが、使用される周波数帯。答申では90~95MHz帯だという。
(ここ)の資料によると、関東広域圏(東京)では90.5MHz、91.6MHz、93.0MHz、中京広域圏(名古屋)では、92.9 MHz、93.7 MHz、近畿広域圏(大 阪)では、90.6 MHz、91.9 MHz、93.3 MHzが与えられている。そして、「平成32年3月31日までに使用されない場合は、当該周波数について、削除するものとする。」という但し書きも・・・。
しかしこれでは、カーラジオ等、日本の標準の76~90MHzの受信機では受信出来ない。
そして(ここ)の資料のQ&Aにこんな記述があった。
Q:「災害に対して脆弱なAM放送を、FM方式による補完局を整備し、災害発生時の国民の生命や生活等を守ることが本制度整備の大きな目的の一つです。本案で災害対策として割り当てられている周波数は90-95MHzですが、この帯域を受信可能なラジオ受信機は希有であることが現状です。東南海地震等いつ発生してもおかしくない大災害に対し、90-95MHzを受信可能なラジオ受信機の開発や普及を待つ猶予はないと考えます。現行の76-90MHzのFM放送を受信できるラジオ受信機は既に国内に広く普及しており、災害対策のためのFM補完局の周波数は、まずは現行の76-90MHzを優先的に割り当てていくべきと考えます。」
実にもっともな指摘。それに対する総務省の回答は素っ気ない・・・
A:「災害対策に係るFM補完局のうち空中線電力が小さい「その他のFM補完局」については、90MHz超え95MHz以下で周波数の使用ができない場合であって、災害対策のために真に必要な場合に限り、90MHz以下の周波数の使用を認めることとしています。」
「加えて、90MHz超え95MHz以下の周波数に対応した受信端末の普及については、国としても必要な取組を適切に進めて参ります。」
ダメだな・・・。
既に76~90MHz帯は満杯だという。よってその上の空いた帯域を使いたいのは分かるが、受信機がない現状では、防災と言っても効果は限定的。それでも強行する・・・。つまりは数十年経って、受信機が普及してからの効果となる。惜しい・・・。
せめて、東名阪各3局の広域局だけでも、90MHz帯以下での割り当てが出来ないのだろうか? 地デジの周波数帯を確保するために、各局がチャンネルを変更したのと同じように・・・
Netで検索すると、FM周波数コンバーターなる製品があるという。電波の質の劣化は別として、海外用FM受信機(88~108MHz)の受信帯域を15MHz移動させて、日本の放送波76~90MHzを受信できるようにするという。もしこれが出来るのなら、その逆も出来るのでは??
自分の目指すものは、今ある高級FM受信機(L-02T)で受信すること。つまり受信周波数は何が何でも76~90MHz帯に入らないと困るのである。もし5MHzのコンバートが出来れば、受信周波数は、81~95MHzになる。自分は既存局ではNHK東京(82.5MHz)しか聞かないので、ギリギリ間に合うな・・・。それに、シフト量を2~5MHzに可変できると有り難いな・・・。これは勝手な希望なのだが・・・。まあその時になると、手はあるかも・・・
しかしどう考えても、直ぐに在京のAM5局がFMでのサイマル放送を開始するとは、到底思えない。何より、民放の体力が心配。上の記事の北日本放送のように「二つの電波を出しても広告費は増えないので、経費的デメリットは大きい。AM放送の維持は大変だ」が本音だろうから・・・
でも方針は決まった(答申通りに法は改定される)。とりあえず大阪のMBSラジオとニッポン放送の動きを注視するとしようか・・・。
(2014/07/09追)
「ニッポン放送、FM波申請
ニッポン放送は8日の定例会見で、ラジオのAM放送で流れている番組をFM波でも放送する「FM補完中継局」の予備免許を総務省に申請したと発表した。文化放送、TBSラジオも既に申請したことが明らかになっており、在京の民放ラジオ3局がFM波での放送を目指すことになる。」(2014/07/09付「朝日新聞」p37より)
(2015/01/14追)
「AMラジオ、FMでも 今秋(2015年)から冬、在京3社が補完放送
TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送の在京AMラジオ3社は13日、FMでAMと同じ放送を流す「FM補完放送」を、今年の秋から冬にかけて始めることを明らかにした。東京スカイツリーの共同アンテナからFM波を流す。
この日会見したニッポン放送の村山創太郎社長によると、(2015年)8月に工事を終え、9月に試験放送を実施。その後、本免許の交付を受け、本放送を開始する予定という。気候の影響で工事の時期がずれる可能性がある。3局はこれまで、放送開始時期を今春以降としていた。
FM放送が始まると、鉄筋マンションなどAM波が届きにくい「難聴取地域」でも聞こえやすくなる。地震など大災害で放送設備が被害を受けた場合に備える「災害対策」の面もある。周波数はTBSが90.5、文化放送91.6、ニッポン放送93.0メガヘルツ。東京23区と埼玉県、千葉県、神奈川県の主要都市および周辺で聴くことができる。」(2015/01/14付「朝日新聞」p29より)
(参考資料)
「ラジオマニア2014」~『FM放送受信の心得』
(関連記事)
東京のAMラジオ局のFM同時放送、2015/10/5 試験放送開始、11/6~連続送信
関東広域・民放AMラジオ3社が、15年春よりスカイツリーからFM同時放送開始
AMラジオのデジタル化~FMサイマル放送へ?
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コメント
「ラジオマニア 2014」、読みましたよ。
エムズの片割れさんの記事も読みました。
NHK-FMですが、グラフ(といってよろしいのでしょうか?)で見ても
質の違いが明らかですね。
あと、NHK水戸FMも結構聞こえるようですね。
親局が筑波山の北側にあり、標高もあります。
そして、南に関東平野が広がっているというロケーションから、
東京でも23区から多摩東部にかけて比較的良好に聞こえるようですね。
もし、茨城放送がFMの中継局を設けるのならそこになりましょうか。
それで、規定では空中線電力は先行FMの親局の出力を超えてはならないそうですので、
1kWということになりましょうか。
実際、こちらでは先行FMの親局の出力と同じ出力になるようです。
http://www.soumu.go.jp/soutsu/kyushu/press/140716-1-0.html
そうすると、そちらでも茨城放送(FM)が良好に聞こえるかもしれません。
【エムズの片割れより】
どうもお粗末さまで・・・
我が家は、ちょっとした丘の上にあり、筑波山方向が開けています。それでNHK FM水戸の電波が強かったのかも・・・
いよいよ中波のFM化が始まりましたか・・・。でも、やはり92Mですか・・・。普通の受信機ではダメ・・・。
投稿: マッノ | 2014年8月 1日 (金) 22:12
国は「お隣の国の電波を強めてはいけない」とAM継続を訴えていますが、
放送局は「電波を2つやっていくのは正直キツい」と言う感じで、
両者に溝があるということでしょうか。
在京の3局ですが、送信所はスカイツリー?それともタワー?
スカイツリーなら7kW、タワーなら10kWとなっていくんでしょうね。
特にスカイツリーは静岡や山梨・長野・新潟・福島でも関東よりのほうは結構届いているようですね。
そうなれば、3局も「そこまで範囲が広いのなら、いずれFM一本でも十分かな」と思ってくるかもしれません。
ラジオ日本は指向性のほうはどうするのでしょうか。
AMのほうは北方向に制限をかけていますが、FMはありません。
送信所もNHK横浜FMは横浜市の円海山、FMヨコハマは秦野市(県西部)の大山になります。
円海山だとしたら関東の広い範囲で聴収できますが、大山であるなら、より広く、高感度で聴収できます。(空中線電力はどちらも5kW)
ちなみに、栃木放送は宇都宮市の北東にある羽黒山(1kW)になると思います。
長文、失礼しました。
【エムズの片割れより】
お詳しい・・・。ということは大分お好きなようで・・・。ハム人口が少ないように、ラジオ事情に詳しい人は、相当に少ないのでしょうね。
それよりも、90~108MHzの受信機がどうなるのか、そっちの方も興味があります。
どこか、優秀なコンバータが発売されないかな・・・。90M~を76M~にずらすコンバータが。
投稿: マッノ | 2014年8月 2日 (土) 22:26
いえいえ、あらゆる情報をネットやら書籍やら引っ張り出してきているだけのことですから。
小型ラジオなどは90~108MHzを受信できる機種もありますよ。
私も通勤ラジオのやつを持っているのですが、それも108MHzまで対応しています。
価格は数千円のものが主でしょう。
あとはラジカセやコンポも対応してくれば普及していくのでしょうが。
ただ、そうなると買い替えなければならなくなるという負担が・・・
【エムズの片割れより】
自分の場合、音質的に、何とか現在使っているチューナー(L-02T)で受信してみたくて・・・。
周波数変換器が出てくることを期待!!
投稿: マッノ | 2014年8月 3日 (日) 22:52
http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokuriku/press/2014/pre140819.html
FM補完局の予備免許第2弾です。
こちらのほうが放送開始(予定)が早いようですね。
【エムズの片割れより】
いよいよ本格的になるようですね。
投稿: マッノ | 2014年8月24日 (日) 21:06
http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/press/26/0902ho.html
関東のAM3局にも出るようです。
スカイツリーになりましたか。
後は放送開始を待つのみですね。
まぁ、それまでに対応機種を揃えておかなければいけませんが・・・
【エムズの片割れより】
ビッグニュースですね!!
いよいよですね・・・
しかも、今のNHK FMと同じ出力で、同じスカイツリーからとは!!
さて受信機ですね・・・。90MギリギリでTBSが受信出来ると面白いが・・・。
それと、自分の興味はNHKの2波がどうなるのか・・・。
明日、記事を書きます。情報、ありがとうございました
投稿: マッノ | 2014年9月 2日 (火) 22:22
首都圏キー局いよいよFM化 待ちに待ったビッグニュースです
SONYからFM補完ラジオレコーダーが出ました ICZ-R250TV 余計なワンセグ搭載で二万五千円(ケーズで税込み) ワンセグって聞いている人いるんですかね....ワンセグ無しで安くしてわしいものです せめて二万円くらいなら即刻買いましたが 明春にはゾクゾクと新製品が出ると思います とかく一号機というやつは
思うようではないことが多いものです
【エムズの片割れより】
段々とムードが上がってきましたね。各社から色々発売されるようですね。
試験電波はいつ出るのでしょう・・・
投稿: スピカナ | 2014年12月29日 (月) 17:08