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2014年2月25日 (火)

「医者の父がめざした“明るい最期”」~作家・医師 久坂部羊氏の話

NHKラジオ深夜便「明日へのことば」で、「医者の父がめざした”明るい最期”作家・医師 久坂部 羊」(2014年2月15日放送)を聞いた。
最近自分がよく話題にする「いかに死ぬか」について、考えさせられる話を聞かせて貰った。

<「医者の父がめざした”明るい最期”」作家・医師 久坂部 羊>

この講演の要旨を書いたページはないかと探したら(ここ)に少し載っていた。
「講演:父が争いを好まない性格で、競争を避けるために、戦わずに勝ちを譲る、欲望・執着心を抑えることを道教や歴史で独学した。その父から、医者になった後も「治療のやり過ぎは命を落とす、しかし過小にすると癌が再発する」難しさ等々を多く学んだ。父が病気に罹ったとき、食事療法や薬物治療しても治療効果がでない。それは食べたいものを食べないで我慢するストレスの為と考えて、医者でありながら治療や検査を一切止めた。この姿勢を生涯貫いた。死の床についた際も延命治療を拒み、点滴や栄養補給も受けず、苦しみや痛みがないので自然にゆだね、温かく見守った。本人や家族全員が死を受容しているので流れる時間が穏やかである。最期は意識がなくなり安らかに亡くなった。死ぬことは苦しくない。治療は反って苦しみが増し、医療は死に対して無力である。無欲になり執着心を捨てることで上手に死に、死の恐怖心を弱めることを父から教わった。」(ここより)

それに(ここ)に、講演の後半の部分が文字になっている。

話を戻すと、久坂部医師の父親は麻酔科の勤務医で、87歳で亡くなったという。その生き様がスゴイ。上にもあるように「先手必“敗”」を実践し、自分の30代で発病した糖尿病についても、食べられないストレスが悪いので何でも食べる。そして検査もストレスに悪いので受けない。そんな、医師でありながらも現代医療から離れたスタンスで87歳まで自由に生きた、という。
それにしても、前立腺ガンが見つかった時「しめた!これで長生きせんで済むわ!」という姿勢もなかなか・・・。
「父は早死には困るが、長生きし過ぎることにも、恐怖心を持っていた。実際、長生きしてよかったという人はいるにはいるが、95~100歳になってよかったという人は少ない。
いろんな機能が弱ってきて楽しみも減る、耳が聞こえなくなる、眼が見えなくなる、味覚がなくなる、下の世話もしてもらうようになる、あちこち痛い、どこへも行かれなくなる。
頭だけしっかりしていたら可哀想。
父はよくわかっているので、80を過ぎた頃から、長生きして100歳まで生きていたらどうしよう・・・と言っていた。だから医師に「有難うございました。私も85歳で充分長生きしたから結構です」と言って帰ろうとする・・・
」(ここより)

この姿勢をどう捉える??
そして、
「結局治療を受けない様にした。
2カ月後に、尻持ちをついて、圧迫骨折で、食欲が旺盛だった父は食欲を無くしてしまった。
食べなくなったので、普通は点滴などをするが、父は食欲がないという事は必要としていないという事で、家族は食べ物をあげて飲みこんだら安心するわけですが、栄養は口から入って、消化されて、吸収されて臓器に行きわたるから意味がある。
それだけの余力がないから食べたくない、飲みたくないという事になる。
水分でも出すためには心臓、腎臓が働いて出さなければならないが、その能力が無くなってきているから、飲みたくないと言っている。
無理やり補給しても臓器そのものが使うだけの余力がない時には余計負担になる。
父も私も判っているので、そのようにした。・・・」(
ここより)
このスタンスは、当サイトでも取り上げた近藤誠医師や中村仁一医師の姿勢に似ている。

親も子も医師であったから、全てが分かっているので実現出来た、とも言える。素人は分からないので、不安になり医師の言う通りにすることが多い。つまりは素人も自分の病気についてよく勉強し、良く分かってから判断しなければ良い死は迎えられない。

今はNetの時代で、情報は幾らでも入る。
死が怖いのは、死が分からないから・・・。同じく、自分の病気が怖いのも、それを知らないから・・・

自分もそのとき、「これで長生きしないで済んだ」と言える死を迎えられるだろうか?
この放送で、なかなかマネの出来ない生き方を教えて頂いた。

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コメント

 「しめた!これで長生きせんで済むわ!」私もこんな風に生きたい(往きたい)です。

「素人は分からないので、不安になり医師の言う通りにすることが多い。つまりは素人も自分の病気についてよく勉強し、良く分かってから判断しなければ良い死は迎えられない。」
 ホントにそうですね。現役時代は、「餅は餅屋」と思ってましたが、それは「古き良き時代」の話で、ことがこんなに複雑になった今は、専門家といえどもすべてを理解して言ってるわけではない(その典型が原発ですが)と、日々悟りつつあります。

【エムズの片割れより】
最近は、現役の医者が、自分たちの行ってきた医療について批判的な本を出して、それが売れています。患者たちも、現代の医療を盲信しなくなっている証ですね。それは良いことだと思います。

投稿: Tamakist | 2014年2月26日 (水) 09:56

中村仁一、久坂部羊両先生の著書は大方読破しました。大変勇気づけられました。今は死に時を考えておりますが、人の世話にならないで見の周りの始末ができる間は趣味の読書と絵画に専念していようと考えています。

投稿: hidemi tada | 2020年1月16日 (木) 22:47

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