「歩きスマホ」は怖い
「米調査会社IDCが27日発表した2013年の世界のスマートフォンの出荷台数は、前年比38.4%増の10億420万台と初めて10億台を突破した。」のだそうだ(ここより)。
1年で10億台・・・。途方もない数字・・・
先日の「日経新聞」のコラム「春秋」に、そのスマホの話題があった。
「薪を背負って歩きながら本を読む少年――。江戸時代の後期に活躍した農政家、二宮尊徳の若き日の姿をうつしたとされる像は、それなりの年齢に達した日本人なら一度は目にしたことがあろう。全国の小学校の校庭などに陸続と建てられたのは大正のころからという。
刻苦勉励して立身出世をとげ、世のため人のために尽くす。「坂の上の雲」を目指した近代日本の理想の人間像を体現していた気がする。だからだろうか、近年、像のある小学校の数は減っていると聞く。高度消費社会とか成熟社会などと形容されている21世紀の日本には、いまひとつそぐわない人間像なのかもしれない。
最近、ふと尊徳翁を思い浮かべることが少なくない。一心不乱に手元を見つめて歩いている人を、よく見かけるのだ。もちろん手にしているのはスマートフォン。歩きスマホだ。そして残念なことに、刻苦勉励の精神が盛り返している印象はない。ゲームやチャット、ネットサーフィンに没頭している人が大半とみうける。
目につくのはむしろ、身の回りへの注意力の低下だ。線路に落ちたり、柱にぶつかったり。米国では著名な科学誌のコラムニストが「スマートフォンと呼ぶのはやめよう」と提唱したことがある。スマートは「賢い」の意味だが、使われ方がスマートとはとても言えない、というのが理由だ。尊徳翁なら、何と言うだろう。」(2014/1/27付「日経新聞」「春秋」より)
そしてだいぶん前だが、「朝日新聞」の「天声人語」にもこんな記事があった。
「電車の中で化粧をする女性が出現したのはいつごろだったかと調べると、本紙「声」欄に1994年の投書があった。近ごろ多く見かける、と。一昨年には電車内で着替えたり、むだ毛を剃(そ)ったりする女子高生の目撃談が載っている▼かたわらに人無きがごとし。化粧に身の危険は感じないが、スマホに熱中しながら突進してくる人に出会うと怖い。前を見ていないのだから、こちらでよけるしかない。理不尽な、と思いつつ難を避ける▼歩きたばこはかなり減ったが、「歩きスマホ」は増える一方だ。危ないという苦情の声も高まっている。筑波大の徳田克己(かつみ)教授(バリアフリー論)は今月、人混みをよく歩く大学生650人にアンケートし、その結果を先週末にまとめた▼スマホを使いながら歩いている人とぶつかったか、ぶつかりそうになった経験を6割がもっていた。場所は駅の構内が最も多く、次に屋外の歩道。画面が大きく、ゲームや地図など長く見続けがちになるから、ケータイより危険という▼ケータイとスマホの国際比較が面白い。徳田教授は約80カ国を回った。ケータイをいじって歩く姿は特に日本で目立ったが、歩きスマホは世界中で見られる。これもアプリの進化によるものか。「スマホは文化の違いを乗り越えてしまった」。だからぶつかる危険も世界共通だ▼自分は大丈夫と思う人が多いのだろうが、周りは迷惑だし、本人も無防備ではないか。イヤホンで耳まで塞いでいる人もいる。本当に大丈夫ですか?」(2013/05/25付「朝日新聞」「天声人語」より)
ついでにもう一つ・・・。これも古い「朝日新聞」の記事である。
「危険な「歩きスマホ」、ホーム転落やわいせつ被害も
ネットにメール、地図、ゲーム……。携帯電話が多機能になり、さらにはスマートフォン(スマホ)の普及によって、画面を見ながら歩く人が増えている。便利な半面、駅のホームから落ちたり、人にぶつかったりと危険も潜む。
東京のJR四ツ谷駅の中央線上りホームで、小学5年生の男児(10)がホームから転落したのは先月27日午後4時過ぎのこと。幸い電車との接触は免れたが、顔などを負傷した。目撃者によると、男児は携帯を見ながらホームの端を歩き、何かにつまずいたように見えたという。
1週間後の3日、同じホームに行ってみると、数人に1人が歩きながらスマホや携帯をいじっていた。男子大学生(21)は「危ないと思うこともあるけど、友人とのやりとりとか便利さを優先してしまう」。一方、立ち止まって操作していた会社員の男性(57)は「一度、電柱にぶつかりそうになった。危ないよね」。
国土交通省によると、2011年度、過ってホームから転落したのは3243人。「携帯を使用中」は18人(0.6%)で多くはないが、10年5月にはJR東中野駅で死亡事故も起きた。
バリアフリー論が専門の徳田克己・筑波大教授が先月、首都圏と大阪圏で通学に電車を使う大学生650人にアンケートすると、携帯機器を操作しながら歩く人とぶつかったり、ぶつかりそうになったりした人は「よくある」「時々ある」を合わせて6割。けがをした人も15人いた。携帯機器の97%はスマホだった。徳田教授は「画面を注視する時間が長いスマホが普及し、危険度は格段に増している」と指摘する。
操作中に思わぬ被害に遭うケースもある。強制わいせつの認知件数が3年連続で全国最多の大阪府。府警が昨年中に路上で被害に遭った859件を分析したところ、14%がスマホや携帯を使用中だった。府警犯罪対策室は「周囲への注意がおろそかになり、すきができやすい」とみる。
■「規制必要では」
「携帯・スマホの歩きながらの使用は、思わぬけがや事故につながる場合があります。控えてください」
JR東日本は今回の事故を受け、首都圏の主要駅や車内でそんなアナウンスを始めた。東京メトロも同様の放送を開始。近く啓発ポスターを作って各駅に張り出す予定という。
携帯最大手のNTTドコモも、「歩きスマホが危険という問題意識をもっている」と啓発に力を入れ始めた。放送中のラジオCMで、母親が子供たちに「外で歩きながら使うと、とっても危ないの」と諭す場面を入れた。「危険です、スマホのながら歩き」という注意を最新機種の新聞広告などに入れている。
障害のある人たちにとっては深刻な問題だ。山手線を利用する全盲の織田洋さん(59)は「駅や道路で歩きながら使うのはやめてほしい」と訴える。最近、点字ブロック上で電車を待っていると、まともにぶつかられることが増えた。「前は周囲の人が避けてくれていたのですが」
大阪市西区の自営業の男性(49)は約2カ月前、車いすの男性に付き添ったとき、駅で携帯を操作中の人と何度もぶつかりそうになった。「嫌な顔をする人さえいる。マナーの呼びかけは必要だけど、本来、思いやりで何とかならないかと思う」と嘆く。
何らかの規制が必要との声もある。「歩きスマホ禁止条例」を提案するのは、コラムニストの小田嶋隆さん(56)だ。東京都千代田区が02年に施行した路上喫煙禁止条例が参考になると言う。「最初は賛否両論あったが、その後、全国に広がった。スマホも試験的に規制してみればいい」
ただ、徳田教授は「これまでは啓発が不十分だった。マナーの呼びかけが先」と規制には否定的だ。私案として「スマホマナー5カ条」を提案する。
■視線は画面に釘付け 「歩きスマホ」の危険性を実証した調査もある。愛知工科大の小塚一宏教授(交通工学)が11年、名古屋の繁華街で、スマホを使うとどれだけ視野が狭まるかを調べた。額に瞳の動きを追うカメラを付け、20メートルの横断歩道を手ぶらで渡った時と、スマホでツイッターをやりながら渡った時の
視線を比較した。
手ぶらでは、前後左右、奥の建物までまんべんなく見ているのに対し、スマホ歩きでは、数メートル前を数回見ただけで、ほぼ画面に釘付け。小塚教授は「とっさの動きができない高齢者や障害者、幼児らにとっては脅威」と話す。
■徳田教授が提案する「スマホマナー5カ条」
(1)使う時は道の端に寄り、立ち止まって
(2)階段では使わない
(3)電車を降りるときは見ない
(4)横断歩道では使わない
(5)見るときはイヤホンを外す
(中田絢子、井上恵一朗)」(2013/06/04付「朝日新聞」より)
長々と引用したが、ホントウに“歩きスマホ”は多い。通勤時間帯の駅での人の流れにも悪影響・・・。何せ、手元を見ながら歩くので、歩くスピードが遅い。特に階段を降りるときにも、スマホを見ながらなので、歩くスピードが遅い。これはホントウに迷惑だし、もし転げ落ちたら、周囲の人も巻き込まれてしまう・・・。
両耳をイヤホンでふさいでいる人も多い。確かに自分の経験からも、両耳から音楽を聞いていると、どんな雑踏の中でも自分の世界に浸ることが出来、気持ちのよいことこの上ない。しかし、これもキケンとの隣り合わせ。誰かに話し掛けられても、近くで危険を知らせる警笛が鳴ろうとも、気が付かない。これは、まさにキケン・・・。
実は自分も、これら経験の卒業生。もう右耳にイヤホンを刺さなくなって久しい。片耳を開放することによって、周囲の音が聞こえるため、何があっても対処できる。たまに電車に座っているときに両耳で聞くこともあるが、両耳をふさいだまま電車を降りてそのまま歩き出すと、これが怖い・・・。今まで気付かなかったが、聞こえないと言うことが、怖い・・・
自分はどちらかと言うと、周囲の状況に疎い性格。それはカミさんによく言われる。でも今更思う。少なくてもキケンから身を守ること、そして周囲に迷惑を掛けないこと。それらは、誰でもが守るべきエチケットだと思うのだが・・・
(今日の記事で、blogネタのファイルを3つ処理出来たのだが・・・バレた?? 自分はあるフォルダにblogネタを溜めておくのだが、昨年5月と6月のスマホに関するネタが処理出来ず(アップしないまま)、ずっと放ってあった。それがひょんな事で処理出来た。アーせいせいした・・・!)
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