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2013年11月13日 (水)

「無思想の発見」養老孟司著~Uさんの読書ノート

現役時代の大先輩であるUさんが送ってくれる「本の紹介」メール。今回は、養老孟司著「無思想の発見」である。

Uさんのメールにこうあった。
「寒くなりましたが、お変わりありませんか?
今回の本の紹介は「無思想の発見」養老孟司著である。各位の一人からそれとなく推薦された本である。そう言う事なので、自宅近くの区立の図書館から借り受けた。お気に入りの著者である事も有り、一気に読んでしまった。知的好奇心がそうさせたのである。
本書を読み終った最初の感想は、著者の「脳」に関する絶対的な確信である。「意識」「感覚」全て脳のさせるワザであるという確信である。紹介しなかったが、解剖の授業で学生が「先生、この死体間違っています」と言う。つまり「教科書に書いてある身体と違う」と言うのである。
5感の感覚で死体を観察して居ない事から起こっている。教科書と言う意識、思想が絶対であると言う事から発生した問題である。一般的に言えば、思想が正しく、「現実が間違っている」と言う事と同じである。お勧めの本である。」

実は“それとなく推薦した”のは、当サイトの読者である「はうろ」さん(ここ)。それで、自分もUさんの要約を読み出したのだが、正直、何ともツラかった。自分にとってあまりに難解で・・・

★「「無思想の発見」養老孟司著 ちくま新書」のUさんの“読書ノート”のPDFはここ

そしてUさんの「コメントと感想」にはこうある。
「著者は、「私」という自分を示す言葉が、日本語には沢山あるが、外国語には、自分を表現する言葉は一つである。それが「定まった私」なんて無い。と、「個」の自立を否定する。その代りに「世間」が存在すると言う。しかも、日本語には「私」という言葉にself と言う意味とprivate と言う意味の二重の意味がある。こんな言語は他に無い。
日本には「思想が無いと言う思想がある」世間の思想に反する思想を持つ事は許されない。これは数字のゼロであり、又は、真空原理であると言う。
そして、思想は5感で捉えられないから言葉とか行動として外に出さなければ他人はそれを把握できない。概念の世界は「同じ」という働きで特徴付けられる。その「同じ」を、上にどんどん上がって行くと抽象=思想になるという。
そして、思想はえてして現実無視の空論になる。だから、日本人は、「ない」思想をどうやって他の人に説明するのか?という問題に直面する。感覚世界である現実を、意識は出来るだけ「同じ」に変えて行く。意識は、自分については「同じ」を繰り返すが、外に対しては「違う」を繰り返すのである。結局、自分を自分で変えて行くしかない。と著者は主張する。

私は、他人と議論する時、例え話や具体定事例に終始し、その原理、思想については殆ど言及しないことを不思議に思っていた。本質論を言うと、理屈を言うなとか、危険視され無視される。本書を読んでやっとそれを理解できた。又、自己の確立と言っても何か違和感があり、賛意は得ても心の底からの納得は得られない。
日本人の無思想と西欧の有思想とどう調整するか?グローバル化と日本的価値観をどう調和させるか?と言う事になる。エネルギー資源や食糧を毎年20兆円以上輸入しなければならない日本は、少なくとも、それに見合う輸出をしなければ生きて行けない。それが「取引」である以上、お互いの信頼、信用が必須である。つまり、グローバル化は仕方がないのである。著者も「自分を自分で変えるしかない」と言っている。

話は変わるが、最近映画「スティーブ・ジョブズ」を鑑賞した。世界を変えた天才、アップル・コンピューターの創始者である男の物語である。実家のガレージから始めたアップル社は4年で上場し成功する。しかし開発にのめり込み、首になる。しかし、再度乞われて復帰し、CEOに返り咲く。そして、iphone やipod を世に出す。56才で、すい臓がんで亡くなる。彼は、天才ではあるが、わがままで傲慢、自分の考えは絶対変えない、昔からの友人でさえ追い落とす非情な反逆児である。
彼ほどの有思想家は居ないと思った。若い時大学を中退し、インドで禅の修行やドラッグを経験し、「人類を前進させるような事を実現したい」という思いから、アップル社を設立した。彼は、技術やビジネスに卓越していただけではない。ITデジタル革命を創りだしたのである。無から有を創ったのである。
しかし、映画を観ながら『彼と一緒に仕事は出来ない。無理だ』と思ったのも事実である。」

このUさんのコメントも難しい・・・
気を取り直して!! 自分なりに印象に残った言葉は、
「自分をごまかし続けて一生を過ごしてしまう人を「幸福な人」と言う。」
「「じゃあ、どうすればいいんだ?」と人は言う。自分で自分を変えるしかない。「変わった」自分は、今までとは「違った」世界を見る。自分が変われば、世界全体が違って見える。人生は四苦八苦だ。でも、それが生きていると言う事なのである。幸い、いずれ、生きていなくても済むようになっている。ソクラテスが言っているように「それほど、長くない辛抱」なのである。」
・・・

改めてWIKIで養老孟司の項を読んでみると、氏は元々解剖学者でありながら膨大な執筆活動もしている。自分は「バカの壁」くらいしか知らなかったが、氏には昆虫採集の趣味があり、そして中島みゆきのファンであり、マンガやテレビゲームも好きらしい。何とも、“大哲学者”にしては多彩・・・

それにしても「一気に読んでしまった」Uさんとは違って、その要約である先のPDFすら、読んでいて「まだ最後のページが遠い・・・」と悪戦苦闘。つまり頭に残らない・・・。これは“著者にフィットする”とかの問題ではなく、そもそもこの本を読むにあたって、ベース知識が足りないため、付いて行けないようだ・・・。
せっかく“はうろ”さんから推薦されて買ってはみた「無思想の発見」という本だが、この要約を読んだだけで“めげた!”。 まだホンモノの本の1ページも読んでいないが、このまま当分の間“積ん読になるな・・・”と予感する本なのである。(何のこっちゃ!?この記事は“惨敗”の記事!?? でもそのうち頑張って読むから! たぶん・・・。恐らく・・・)

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コメント

こんばんは、はうろです。ご購読までして頂いて恐縮でした。

この本を一読してその内容を頭に入れるのは基本的に無理だと思います。その点、Uさんは、大の読書家でさすがにポイントの抑え方が秀でておられます。我々は枕元に置いて適当な場所をうつらうつらと眺め読みするのがせいぜいで、そのようなことをしているうちに著者の頭の中がぼちぼちと見えてくるように思います。それにつれて自分の頭も少しづつ馴らされて行くように思います。時間をかけて著者の思考が自分の中に沈潜していくうちに自分の考えも少しづつ形をなしていくように思います。読書体験の醍醐味であります。

また引続き良書のご案内をよろしくお願いします。

【エムズの片割れより】
なるほど・・・・。そんな読み方もあるのですね。非常に難しい本なので、心して読む事にします。ありがとうございます。

投稿: はうろ | 2013年11月14日 (木) 22:29

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