新聞各紙の「秘密保護法案」へのスタンス
「秘密保護法案」については、国民無視の与野党に嫌気が差して、あまり書く気にもならないのだが、今朝の朝日新聞に面白い記事があったので、チョイス・・・。
「新聞各紙、秘密保護法案に懸念 「廃案」「慎重さ」求める
特定秘密保護法案の国会審議は、与野党の修正協議が迷走したまま大詰めを迎えている。わたしたち国民の「知る権利」や、メディアの「取材・報道の自由」を脅かしかねない法案に、全国の新聞の多くが反対ないし懸念を表明している。各紙の社説から、改めて法案の是非を問う。
「政府がもつ情報は、本来は国民のものだ。十分とは言えない公開制度を改めることが先決だ。そこに目をつぶったまま、秘密保護法制だけを進めることは許されない」(10月26日) 朝日新聞は、安倍政権が同法案を閣議決定した翌日の社説で強く反対した。その後も「何が秘密に指定されているのか分からないという『秘密についての秘密』が、知らぬ間に広がりかねない」(11月20日)とし、一貫して廃案を求めている。
法案の問題点は、多くの新聞が指摘している。
毎日新聞は、沖縄密約問題にふれ「米国で公開された外交文書によって明らかになった後も、日本政府は文書の存在を認めていない。こうした隠蔽(いんぺい)体質がある以上、行政機関の判断をそのまま信じることは到底できない」(10月21日)として反対している。小松浩論説委員長は「一つの法案に対しこれだけ連日展開するのは異例だが、それだけ危機感を持っている」。
東京新聞は「国家が国民の思想の領域まで踏み込む恐れがある。国会議員は今こそ良識を発揮して、廃案にしてほしい」(11月8日)とした。桐山桂一論説委員は「三権分立の中で行政権だけが強くなり、民主主義の正三角形が崩れてしまう。憲法原理から完全に逸脱した法案だ」と訴える。
■連日の論陣
消費増税やTPPでは、全国紙と地方紙で論調が割れたケースが目立ったが、今回の法案は、政府案のままで賛成を主張する新聞は見あたらない。北海道新聞「秘密情報の範囲が不明確で拡大解釈が可能」(10月25日)、琉球新報「問題は、何が特定秘密に当たるか、恣意(しい)的に決められる点だ」(10月26日)など、各紙が危機感を示している。
信濃毎日新聞(長野)は連日、「廃案」を掲げた論陣を張る。「市民生活にも関わる」(10月27日)、「情報公開と相いれない」(同29日)、「内部告発制度 厳罰で掘り崩される」(11月5日)など約30本の社説を展開してきた。
同社は「県内にも防衛装備品を扱う企業は複数あり、知らない間に秘密を口にして処罰される可能性もある。息がつまる社会にしないために社会面を含めキャンペーンをしている」。
沖縄タイムスは、米軍基地でオスプレイの飛行などへの監視・抗議活動をする住民が取り締まられる危険性もあり「廃案にすべきだ」としている。久高将己論説委員長は「基地にからむ事件や事故の情報もこれまで以上、出てこなくなる恐れもある」と話す。
■修正を要望
修正を求める社も多い。
日本経済新聞は9月7日の社説で、秘密指定を事後的に検証できる仕組みづくりなどを含め、「慎重に検討を重ねていくべきであろう」と主張。11月16日には国民の知る権利を損ないかねない問題を抱えたままだとして「徹底した見直しが必要である」と述べた。
読売新聞は11月17日の社説で「外国と重要情報を交換し、共有するには、機密漏えいを防止する仕組みが必要だ」と法案の重要性にふれつつ、「捜査当局の判断で報道機関に捜査が及ぶような事態になれば、取材・報道の自由に重大な影響が出ることは避けられない。ここは譲れない一線だ」と注文をつけた。
産経新聞は11月22日の社説で「国の安全保障にかかわる機密の漏洩(ろうえい)を防ぐ法整備は、日本の主権や国民の生命財産を守る上で必要」と評価。樫山幸夫論説委員長は「国家安全保障上の利益を守るため、必要な法律だと考える。しかし、機密指定年限や、報道の自由への担保など、あやふやなところは修正すべきだ」としている。(今村優莉、清水大輔)
■「内政の問題」、中韓は静観
海外メディアは特定秘密保護法案をどう見るか。
米ニューヨーク・タイムズは10月29日付の社説で「何を秘密とするのか定義があいまい」と指摘。「市民の自由に害を与えるだけでなく、東アジアからの不信感をさらに高めることになる」と批判した。
中国国営メディアは、ほとんど関心を示していない。中国政府も当面は日本の内政問題として静観する構えだ。特定秘密保護法成立による情報管理の強化で「将来的に米韓豪などとの協力が深まり、諜報(ちょうほう)面での『中国囲い込み』が進みかねない」(中国外務省関係者)との懸念もある。
韓国でも関心はあまり高くない。韓国外交省の報道官は21日、「その法案には言及しない」と述べ、議論を見守る姿勢を示した。(北京、ソウル、ワシントン)
■自由守るため、一致結束を
<大石泰彦・青山学院大学教授(メディア倫理)の話> 今回の法案は国防に関することでもあり、各新聞の政府に対する距離感や、国益に関する価値観の違いで主張が分かれるのは不自然ではない。しかし、ことは社会の自由の根幹に関わり、ジャーナリズムの根源が脅かされるかもしれない問題だ。処罰対象となる「著しく不当な方法による」取材とは何なのか、秘密の根拠や範囲も漠然としたまま法律が施行されれば、メディア、フリー記者、研究者、市民運動家、そして社会の自由と人権に与える負のインパクトは計り知れない。人々の自由がまずあり、それを守るのが政府だ。その原点に立ち返り、メディアは主義主張を超え、自由を守るために一致結束して欲しい。」(2013/11/24付「朝日新聞」p3より)
言うまでもなく、新聞等のメディアは法人であり、法人としての主義主張を社説等で展開している。今回の「秘密保護法案」は役人等の一般市民だけでなく、メディアにとっても危険な法案。よって、この法案くらいは主張が同じかな?と思いきや、微妙に違う。
上の表のように、朝日が各紙に行ったアンケートで、明確に「廃案」を主張しているのは、朝日、毎日、東京、信濃毎日、西日本、琉球の各紙、「修正の上で成立」が産経であり、読売、日経、福島の各紙は賛成や反対の選択をしなかったという。
一方、海外のメディアのうち、安倍首相が同盟強化を狙う米国からは、高く評価されて良さそうなものだが、そんな声も聞こえてこない。
新聞の読者は、読んでいる内に自然とその新聞の論調に取り込まれてしまうもの・・・。そんな意味で、法案に対する各紙のスタンスは、良く理解してから読む方が良さそうだ。
営々と築いてきた日本の文化が、たった一人(?)の独裁者によって、これほど簡単に方針転換してしまうのだろうか・・・
結果として、国民の投票の責任は重い、ということか・・・
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コメント
安倍の「日本を取り戻す」は、戦前の日本だったのだということが明白になった法案だと言える、そんな印象を持ちました。
【エムズの片割れより】
戦前の日本を取り戻し、また戦争に向かって進みたいのでしょうか? 何のために? 幾ら首相の“個人的願望”があったとしても、自分の理解の外です・・・。
投稿: 通行人 | 2013年11月25日 (月) 11:53
あの選挙以来、無力感にうちひしがれている日々です。
【エムズの片割れより】
自分も同じですが、さりとてこれから人生をスタートさせる子どもたちもいる訳で、(投票で)この政治を産んでしまった責任を今のオトナが取らなければ・・・とも思います。
投稿: Tamakist | 2013年11月25日 (月) 14:20