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2013年11月14日 (木)

「追い出し部屋」の実態・・・

昨日の朝、起きて居間に行くと、カミさんが怒っている、朝日新聞のこんな記事を読んで・・・
リコーから子会社へ出向「人事権乱用で無効」 地裁判決
 追い出す目的で子会社に出向させられ、畑違いの業務を命じられたとして、事務機器大手リコー(東京)の社員2人が出向命令の無効を訴えた裁判で、東京地裁は12日、出向先で働く義務がないことを確認する、原告勝訴の判決を言い渡した。篠原絵理裁判官は、出向命令は社員の自主退職を期待して行われたと認め、「人事権の乱用で無効」と判断した。
 リコーは即日控訴した。判決によると、2人(40代と50代)はともに男性で技術系社員として採用され、研究開発などに携わってきた。リコーが2011年7月、リストラ策で希望退職を募った際、2人は上司から応募を求められ、拒むと、同年9月に出向を命じられた。2人とも子会社で、製品のラベル貼りや箱詰めなどをしている。
 篠原裁判官はまず、企業による出向命令は万能でなく、出向対象者の人選方法や対象者に与える不利益、出向命令の目的などを総合的に考慮して、無効となる場合があるとした。
 そのうえでリコーの出向命令を検討。人選について「希望退職を断った全員が対象とされた」と指摘し、さらに、デスクワーク中心の仕事から肉体労働の職場への出向だったことから、「キャリアや年齢に配慮したとは言えず、身体的・精神的に負担が大きい業務と推察される」とした。
 判決はこうした事情から、出向命令の目的は「対象者が自主退職するのを期待して行われたもの」と判断。「目的は経費削減」とのリコーの主張を退けた。一方、「精神的苦痛を受けた」とする慰謝料請求については「出向後も給与額はそのままだった」などとして退けた。
 リコーの出向命令をめぐっては社員計7人が同種訴訟をおこしており、今回が最初の判決となる。東京地裁は昨年5月、通常の裁判より短い審理で結論を出す「労働審判」で出向命令を無効と判断。リコー側が異議を申し立て、裁判に審理が移っていた。
 控訴したリコーは「主張が十分ご理解いただけない結果になった点は非常に残念。健全な事業の持続と雇用の最大限の確保を実現するために、上級裁判所のご判断をいただきたい」との談話を出した。【小松隆次郎】」(
2013/11/13付「朝日新聞P39より」

リコーの「追い出し部屋」について、東京地裁が原告勝訴の判決を言い渡したという記事だが、ふと先日の、朝日新聞「雇用創出、今こそ社会全体で」(2013/11/06付p15)という記事を思い出した。その記事にあった図を示す。

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この図で「追い出し部屋」が電機メーカーに多いのにビックリする。大手でここに名前が挙がっていないのは、三菱と富士通くらい・・・。“人を大切にする”のが企業理念だったパナソニックや東芝は、堂々と「人を大切にしていない」・・・
日立も、従業員に対する福祉は昔から特別だった・・・。昔は日立市に行くと、無数の社宅群が並び、兎平供給という会社のスーパーがあったが、今はどうなっているのか・・・

しかし一方では、企業は色々な(「追い出し部屋」の人から見ると)“ムダ”な活動も多い。各種のスポーツ活動や文化活動、それに協賛活動など・・・。追い出される側からすると、自分たちの給料よりも、**チームの勝利の方が大切なのか・・・と。
それで色々な企業スポーツが消えて行ったのも事実。またそれでも、社員のクビを切りつつ、多大なお金を各種活動に費やしている企業が多いのも事実。これらをどう考えるのか・・・。
そして「追い出し部屋」では、経営者自らの責任をどう考えるのか・・・。自分は安泰で、社員のクビを切って固定費を減らすなど、誰でも出来る方法・・・

ふとこんなことを思い出した。現役の頃、子会社のある社長が、突然頭を丸刈りにした。周囲はビックリ。それはリストラの断を下した自分に対するケジメだったのかも知れない。
でもそんな話も過去の話。今は自分で経営責任を取るどころか、開き直りが一般的・・・

サラリーマンにとって、「追い出し部屋」は人生が激変してしまう最大の恐怖。しかしそれらは企業の姿勢によってスタンスが大きく違うらしい。例えば三菱グループ。10年ほど前、三菱自動車がリコール隠しで倒産寸前になったことがある。その時、三菱グループは、絶対に三菱自動車を倒産させない、として事実そうなった。最近も当時の借金返しのニュースが流れていた。そしてある子会社の人からこんな話も聞いた。「例えうつ病になった社員も決して解雇しない。何年経っても面倒を見てくれる。そんな人でも定年後も何とか役目を作って給料を払ってくれる・・・」
そんな企業グループもあるらしい。もちろんそれはまれな一例かも知れないが、少なくてもそんな話が出るだけ、今の時代では驚きもの。それだけ経営がしっかりしているのだろう。
ともあれ、「追い出し部屋」の恐怖を横目に働く現役の人たちは大変だ。せめてこのような事態になったら、上の経営層は必ず責任をとって一緒に辞める、という風土だけは日本にあって欲しいものだが・・・。

131114kabegami <付録>「ボケて(bokete)」より

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