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2013年8月17日 (土)

半藤一利氏の集団的自衛権への意見

先日の終戦の日(2013/08/15)にNHKテレビで生放送の「シリーズ日本新生 戦後68年 いま、“ニッポンの平和”を考える」(ここ)という番組を見た。
色々な立場の人の討論。その中で、自分の思い込み(=半藤びいき)が強いとは思うが、やはり半藤一利氏の意見が一番印象に残った。その語録をメモしてみると・・・。

「日本の近代史を勉強してみると、明治維新以来、日本の政治家や軍人が知恵を絞ったが、“日本の国は守れない国”だということが分かった。海岸線の長さは世界で5番目。中央に山脈が連なるので、日本の国民は逃げようのない海岸線に住んでいる。国民が勉強してその事を知れば、この国は武力で守れない国だということが分かる。明治以来、それを守ろうと思うから外に出て行った。」
「防衛力を強化する必要は全く無い。日本は守れない国だから、日本を守るために過去の歴史は、防衛線を外に持っていった。それを明治の人も昭和の人も侵略だとは思っていなかったかも知れない。そのためにスゴイ軍隊を作った。それで世界国々から、日本は侵略主義の国家だと見られた。だから日本は守れない国なので、外交力とか文化力を発揮して何とか戦争に持っていかないようにしなければダメなんだと、しっかりと認識しなければいけない。日本は昭和8年に国際連盟を脱退して以来、外交力をまったく勉強していない。」
「集団的自衛権を誰のためにやるのかと、いつも疑問に思っている。安保条約を読んでも、アメリカは日本を守るとは書いてあるが、日本がアメリカを守るとは書いていない。それをアメリカは上院も下院も批准している。よって安保条約上は、アメリカは日本に守ってもらおうとは考えていない。もし日本が集団的自衛権をやるとなると、一番喜ぶのは中国の軍部だろう。やっと日本が平和主義を捨てた、と中国国民に大っぴらに言えるので。」
「日本自らが、条約以上のことをやって、世界から嫌われるような不利なことをする必要はない。これは日本が平和国家だということを止めることを証明することになる。つまり、集団的自衛権を行使すると言うことは、来るか来ないかは別にして、北朝鮮からミサイルが飛んでくれば攻撃するという、攻撃国家になるということ。」
「日本は外交力をもっと磨いて欲しい。そうすれば武力でなく、経済力を使って平和外交は出来ると思う。日本人は少々不安であっても、それに耐えながら、戦後ずっと保ってきた平和国家という理論を世界に広めていく、という意欲で世界に発言していった方がもっと良くなると思う。」
「日本の近代史を学べば、日本がどう進むべきかは出てくる。世界から、日本は昔と同じ国であったのかと、思わせないためにも、平和主義を世界に広めて行く方が、日本の平和を守れると思う。」

話は変わるが、先日の朝日新聞にこんな社説が載った。

竹島訪問1年―政治が世論をあおる罪
 一国のリーダーの愚かな行動や発言が隣国との関係をめちゃくちゃにし、草の根交流や経済活動まで滞らせてしまう。
 1年前、韓国の李明博(イミョンバク)・前大統領が強行した竹島訪問と、それに続く天皇への謝罪要求は、まさにそんな言動だった。
 その後、日本では安倍首相が、韓国では朴槿恵(パククネ)大統領が誕生したが、関係改善の兆しは見えない。
 首脳同士が会えず、閣僚間の接触もほとんどないような状態がこれほど長期に及ぶのは、1965年の国交正常化以降、極めて異例のことである。
 政治がナショナリズムをあおれば、どんな結果を招くか。そのことを両首脳は肝に銘じるとともに、関係修復に向けた取り組みを急がねばならない。
 ソウル中心部の明洞。繁華街を埋めていた日本人の姿は昨秋以降、めっきり減った。
 実際、日本から韓国への観光客は昨年、過去最高を更新したものの竹島騒動後は前年比2割減の状態が続く。このところの円安や不安定な北朝鮮情勢も加わり、日本企業の対韓投資も減っている。
 これが、浅はかな行動がもたらした代償である。韓国では、李氏の言動がいかに国益を害したかという指摘も聞かれる。
 李氏は竹島訪問後、従軍慰安婦問題で日本政府が誠意をみせないから行った、と説明した。それが行動を正当化する理由には到底ならないが、日韓に歴史認識問題が重く横たわっていることは事実だ。
 にもかかわらず、日本側では最近も橋下徹大阪市長の慰安婦発言や閣僚らの靖国参拝、首相の「侵略の定義」発言などが相次いだ。これらは韓国や中国との関係をさらに冷え込ませただけではない。
 欧米からもその人権感覚や歴史認識を疑う声が出るなど、国際社会での日本のイメージをいたく傷つけた。
韓国の司法が、戦時中の元徴用工らの訴えを認め、日本企業に損害賠償を命じるなど新たな火種も持ち上がっている。
 こんな時こそ、みずから挑発的な言動を控え、国民に冷静な対応を呼びかける。それが政治家の仕事だろう。
 まずは8月15日の終戦記念日に、首相や主要閣僚は靖国参拝を控える。韓国の政治指導者らも、国民の対日感情を刺激するような言動を慎む。
 ともにアジアのリーダーとして責任を負う隣国同士が、自分たちの問題さえ解決できない。こんな醜態をいつまで世界にさらすつもりなのか。」(
2013/08/11付「朝日新聞」社説より)

いっときの国のリーダーによって、営々と積み重ねてきた歴史が変わってしまう・・・。何とも残念な最近の動き・・・。
新聞を初め、マスコミの報道をどう読み解くか・・・。自分の力が試される。
でも、どうも半藤さんの意見は、自分にとって安心なのである・・・。

何事にもニオイで・・・。これはウチのカミさんの弁。意外と当たっているかも・・・!?

130817kara <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

NHKの討論番組を私も見ました。終戦記念日にふさわしく、聞き応えのある内容でした。ビデオを再生し、自分の考えをまとめなければと考えていた時に、毎日新聞21日(水)夕刊の、同番組に出演した若い世代の批評家の宇野常寛さんの感想記事が参考になったので、私なりに同記事を要約し、皆さんに紹介します。(なお宇野さんは自民党改憲案、重武装化、積極的な海外派兵に反対する立場の論者です。)改憲と重武装化を提示する保守派に対し、リベラル勢力の主張は極めて弱い。単に平和が大事、9条は誇り、過ちを繰り返すな、だけでは説得力はない。9条を維持するからこそ、切ることのできる外交カードの存在や、国際秩序への貢献を積極的にアピールすることが必要。9条があるからこそ、対米関係を有利に進め、国際社会で独特な地位を占められることをポジテイブなビジョンとして提示すること。そうしなければ、昨今の国境問題や北朝鮮への不安を背景にした改憲案を支持する人々を説得できない。

【エムズの片割れより】
実にその通りですね。確かに自分も情緒的だと思います。理論武装をキチンとしないと、改憲案推進に弁で負けますね。移ろいやすい“民意”が、国民投票の結果を動かす可能性も・・・
今ドイツで動いている総選挙。これも参考になるかも・・・

投稿: カウカウ | 2013年8月22日 (木) 19:46

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