遷宮とは?~伊勢神宮・出雲大社・下鴨神社
20年ごとに神社を建て替えて、神さまが引っ越す伊勢神宮の遷宮は有名だが、他の神社でも行われているらしい。
半年ほど前にカミさんと京都に行ったが(ここ)、その時に上賀茂神社で聞いた遷宮の費用が、にわかに信じがたく、聞いた金額がホントウかどうか、ずっと気になっていた。建て替えには500億円、屋根の檜皮葺(ひわだぶき)の交換などの補修工事でも20億円かかるという話だ。それがどうもホントウの話らしいのである・・・。
先日、伊勢神宮・出雲大社・下鴨神社の遷宮に関した記事が朝日新聞にあり、興味深く読んだ。
「(文化の扉)はじめての遷宮
改築に伴う祭儀、今年は出雲・伊勢
今年は出雲大社と伊勢神宮で。2年後には上賀茂(かみがも)神社や下鴨神社でも。各地の神社で「遷宮(せんぐう)」が相次ぐが、規模や進め方はそれぞれ違う。そもそも「遷宮」ってなに?
遷宮とは、本殿や正殿(しょうでん)を建て替えたり修繕したりして新たにし、おまつりしている神(祭神)を遷(うつ)す一連の祭儀を指す。「遷座」と呼ばれることもある。
実は遷宮は、毎年どこかの神社で行われている。
文化庁によると、全国には8万以上の神社がある。そのほとんどが木造で、何年か経つと傷んでしまう。だから、全国を見渡すと修繕のない年はなく、遷宮も毎年のように行われるというわけだ。
神社によっては、年を定め(式年〈しきねん〉)、建て替えや修繕を繰り返す。これが「式年遷宮」で、古い神社が大規模に行うことが多い。がぜん、注目度は高くなる。
*
「遷宮」の進め方は様々だ。
20年に一度の伊勢神宮(三重県伊勢市)の式年遷宮は、歴史、規模ともに群を抜く。今回で62回目を数え、内宮(ないくう)と外宮(げくう)を中心に8年前から祭儀が続く。 内宮と外宮には、正殿を建てる予定地として同じ広さの御敷地(みしきち)が東西にあり、20年ごとにそっくり建て替えてきた。さらに、伝統工芸の技を駆使して弓矢や衣など700種類以上の神宝装束(しんぽうしょうぞく)を新たにつくって奉納。こうして新しくなった正殿に祭神を遷す「遷御(せんぎょ)の儀(ぎ)」で最高潮を迎える。
おおむね60年に一度、本殿の大規模な修繕を繰り返すのが出雲大社(島根県出雲市)だ。修繕前に祭神を拝殿に遷し、修繕を終えた本殿に再び返す進め方は「修造(しゅうぞう)遷宮」と呼ばれる。本殿は国宝のため取り壊しできない点が、伊勢神宮とは決定的に違う。
21年に一度の式年遷宮を2年後に迎える上賀茂神社(京都市北区)の本殿も国宝。出雲大社のような手順を検討している。
やはり21年に一度の式年遷宮を続ける下鴨神社(京都市左京区)は、伊勢神宮と出雲大社の折衷型だ。国宝の本殿のそばに小さな仮の本殿を建ててから祭神を遷し、修繕後に祭神を戻す。その後に仮の本殿だけが解体される。
*
下鴨神社の新木直人宮司によると、同神社の式年遷宮の間隔が21年と定まったのは、幕末の1863(文久3)年。孝明天皇の勅に基づいている。出雲大社では、1744(延享元)年に今の本殿が建てられ、1809(文化6)年に修繕されたことから、ほぼ60年に一度の修造遷宮が定着した。
伊勢神宮の式年遷宮は、927(延長5)年にできた律令の施行細則「延喜式(えんぎしき)」に、こう書かれている。20年に一度、正殿を造り替え遷宮し、経費として税を充てなさい――と。なぜ20年なのか?
古代の食糧備蓄制度と結びつけて考えるのが、伊勢神宮禰宜(ねぎ)で式年遷宮の博物館「せんぐう館」館長の小堀邦夫さんだ。穀倉で保管される米や麦などを当時は税と呼び、税の中でも蒸した米を干した保存食「糒(ほしい)」の貯蔵期間が最も長い20年間だった点に注目する。
「穀物の備蓄を前提に社会計画を立て、糒を貯蔵した20年を目安に式年遷宮という国家の事業を定めたのではないか」というのが小堀館長の見方だ。(森本俊司)」(2013/06/24付「朝日新聞」p31より)
我が家は築25年を迎えるが、まだまだ現役。それを20年で建て替えるのは、技術の継承にちょうどよい。と聞いていた。確かに、20年だと、宮大工が30歳頃に若くして携わり、50歳頃に棟梁として携われば技術の継承は確実。少し短い気もするが・・・
伊勢神宮のHPを覗いてみると、「平成5年の第61回式年遷宮の経費は327億円でしたが、伝統技術の継承にかかる経費増などを踏まえ、今回は約570億円の予定で進められております。」(ここ)とある。
なるほど・・・。上賀茂神社で聞いた500億円というのは、聞き間違いでは無かったようだ・・・
改めて、上賀茂神社のHP(ここ)を覗くと、こうある。
「第42回式年遷宮並に平成の御造修事業内容及び費用内訳
【第1期事業】平成20年4月~平成28年3月
国宝・重要文化財建造物桧皮屋根葺替実施 10億円
式年遷宮祭事斉行 4500万円
未指定建造物桧皮屋根葺替実施 2億500万円
奉祝神振行事実施 2000万円
【第一期事業費合計 13億1500万円】(計算合わないが・・・)
【第二期事業】平成28年4月~平成31年3月
勅使殿・社務所他管理棟整備実施 8億円
重要文化財古文書修理実施 3500万円
山林他境内他整備実施【一・二期継続】 4000万円
【第二期事業費合計 8億7500万円】
事業費総額 23億円也(諸経費1億1000万円含む)
準備金・補助金等 13億円
奉賛募金依頼額 10億円也(第一期 7億円、第二期 3億円)」
いやはや、飛んでもないお金が掛かるようだ。それを募金で募る・・・
そう言えば、奈良・東大寺の大仏は、いわゆる国民のボランティアで建てたという話があるが、これも現代のお金に換算すると4657億円かかったという試算もある(ここ)。とにかく、後世に残るものは高い。普通の住宅とは、材質からして桁違い・・・
2年ほど前に岩国の錦帯橋に行った時(ここ)、バスガイドさんから、錦帯橋の架け替えのため、入橋料を積み立てている、と聞いた。必要とする費用を逆算して(?)入橋料を決めているとか・・・!? 確かに、2001~2004年の架け替えでは、26億円の費用がかかり、補助金3億円以外の23億円は、1966年(昭和41年)からの入橋料の積み立てと寄付金でまかなった、とある・・・。(ここより)
どんな文化財も、その維持には大変なお金が掛かるもの。京都に行ったときは、入場料の高さに閉口したが、まあ建て替え、維持費の浄財と考えれば、仕方がないのかも・・・ネ。
| 0
コメント