「混合診療」にまつわる三つの誤解を解く
“自由診療を頼むと、保険がきく治療まで保険がきかなくなり、全体が自由診療になってしまう。よって、日本の医療制度は怪しからん!!・・・”、と思っていたが、そこには色々な事情があるらしい。
先日の朝日新聞に、その解説が載っていた。
「(早川幸子さんのお金のミカタ)「混合診療」にまつわる三つの誤解を解く~理解したい保健診療の意味
安倍内閣は6月14日、規制改革に関する「骨太の方針2013」など三つの方針を閣議決定した。医療分野では健康保険がきかない「先進医療」を拡大することなどが打ち出されており、気の早いメディアは「混合診療の全面解禁に道筋?」などと報じている。
混合診療が規制されていることはおかしいと誤解している人は多いが、全面解禁されると、費用面でも安全面でも不安なことも出てくる。そこで、今回は、混合診療にまつわる三つの誤解を解いておきたい。
<誤解(1) 日本の医療制度は融通がきかず硬直的だ!>
健康保険を使って治療を受ける場合、国が認めた「保険診療」と、保険がきかない「自由診療」を同時に行う「混合診療」は原則、禁止される。ただし、がんや難病を患っていて他に治療法のない患者などには、健康保険が適用されない治療でも試したいという人はいる。
こうした患者の選択肢を増やす目的でつくられたのが「先進医療」で、厚生労働大臣が特別に認めた自由診療については保険診療との併用を認めている。先進医療には健康保険が適用されないので全額自己負担になるが、それと同時に受けた、保険がきく検査や治療は通常通り3割負担(70歳未満)で済む。
このように、すでに混合診療は部分的に認められているのだが、正しく理解されず、「日本の医療制度は硬直的だ」といった批判を生んでいる。
<誤解(2) 自由診療の方がよい治療を受けられる!>
健康保険が適用される治療は「標準治療」とも呼ばれ、科学的根拠に基づいて現時点で利用できる最良のものだ。
医療は病気やケガを治すのが目的だが、その行為は少なからず身体にダメージを与える。そのため、新しい薬や医療技術は厳しい臨床検査を経て、安全性と有効性が確認されて初めて医療現場で使われるようになる。そして、実績が積み重ねられて評価が定まったところで健康保険が適用される。健康保険が適用されるかどうかは医療の安全を守る役割も果たしている。
一方、自由診療には、研究の最終段階まで来ていて、将来的に健康保険の適用を受けられる可能性が高いものもあれば、臨床試験で安全性や有効性が担保されておらず、効果がはっきりしないものもある。健康被害が起きても責任の所在があいまいで、医療費も全額自己負担だ。
混合診療が全面解禁されると評価の定まらない薬や医療技術が広く使われる恐れがあり、医療の安全が揺らぎかねない。
<誤解(3) 混合診療を全面解禁した方が国民負担は軽くなる!>
先進医療が、特例的に混合医療として認められるのは、それが、いずれは保険適用になる可能性が高いからだ。保険外の費用を患者が全額負担するのは、保険承認されるまでのいわば経過的な措置であり、いずれは、だれもが少ない負担で受けられるようになるのが目標だ。
ところが、混合診療が全面解禁されると、「健康保険が適用される治療はここまで」とあらかじめ線引きされてしまう懸念がある。必要性が高く、高価でも売れる薬などを開発した場合、企業は手間のかかる保険適用をめざさず、自由に価格を決められる自由診療で売っていくことも想定される。健康保険の適用範囲は狭まり、お金がないと受けられない医療が増えてしまう。
患者が望めば、先進医療の枠組みで、健康保険適用前でも使用できる薬や治療は増えている。こうした実態を十分理解しないまま、ビジネスチャンス到来とばかりに、混合診療の全面解禁を煽(あお)る風潮に乗ってしまえば、医療費の増加に苦しむことになりかねない。何がメリットか、自分の頭で考えたい。
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フリーライター。1968年生まれ。身近なお金の話題を中心に執筆し、ダイヤモンド・オンラインに「医療費の裏ワザと落とし穴」を連載中。「日本の医療を守る市民の会」発起人。」(2013/07/06付「朝日新聞」b9より)
ひとつの事実も、見る視点によって、その姿を色々に変える。とは自分の持論。
この混合診療についても、「必要性が高く、高価でも売れる薬などを開発した場合、企業は手間のかかる保険適用をめざさず、自由に価格を決められる自由診療で売っていくことも想定される。」と言われてしまうと、なるほど、そうだろうな・・と思う。
まあこの論も、“だから現在の混合診療が良い・・・”とまでは思わないが、別の視点から物事を眺めるのは良いこと。
しかし、自分と違った意見の持ち主との話は、結構疲れるものだが、それも人間の幅。どんな意見にも耳を傾けられる“度量”が欲しいもの・・・
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