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2013年5月23日 (木)

健保~「需要増に応じ負担見直せ」!?

このところ、健保の財政について気になっている。先日、「麻生氏の「通院なし70歳以上に10万円」案は理にかなっている」?」(ここ)という記事で、「それぞれの年代の“金額×人口”の絶対額のグラフの方が分かり易かったかも知れない」と書いたら、先日の日経新聞で、それと似たグラフを見付けた。
我々シルバー族には耳の痛い話だが、この話に少し耳を傾けてみよう。

経済教室 需要増に応じ負担見直せ
    小塩隆士(一橋大学教授)
・・・・
 日本の医療は世界に誇るべき「国民皆保険」の仕組みだが、高齢化の進展の下で、現行制度のまま持続できるか、極めて不透明な状況になっている。
 からだの具合が悪くなって医療機関の世話になる確率は、高齢になるほど高くなる。そのため、医療保険は保険料負担と給付を通じて現役層から高齢層に所得を移転する。現役層は、自分の疾病リスクをカバーする以上の保険料を支払うことになり、保険料は税としての側面を強く持つことになる。組合健康保険や協会けんぽなど現役層の医療保険の収支構造を見ても、保険料収入の4割以上が高齢者医療のために拠出されている。このような現役層の負担への依存が過度に高まると、経済のゆがみが大きくなり、医療費の財源調達が難しくなる。この構造は、年金や介護などと基本的に同じである。
 ところが、医療経済学の分野では、高齢化を医療費増大の要因と考えることに否定的な見方もある。例えば「生涯にかかる医療費のかなりの部分は、死亡直前に使われる。しかし、人間は一度しか死なない。だから、高齢化で平均寿命が延びても、医療費を支払うタイミングがずれるだけで、1人当たりの医療費は大きく変化しない」という説がある。また、医療費増大の大部分は医療技術の高度化で説明でき、高齢化の寄与は限定的だという主張も根強い。
 医療費全体の動向を説明する上でこうした見方がどこまで妥当かは、実際に統計を見て判断するしかない。厚生労働省「国民医療費」(2010年度)によると、介護保険が導入された2000年度から10年間で、国民医療費は30.1兆円から37.4兆円へと7.3兆円増えている。ここで各年齢階級の1人当たり医療費が2000年度で固定されていたと仮定すると、10年度は2000年度から4.5兆円増の34.6兆円になっていたはずだと試算される。つまり、この10年間の国民医療費の増加のうち6割強は高齢化で説明できることになる。
 医療費増大に関するこうした要因分解の手法は、対象期間の選び方で結果が左右される。経済がここ数年のようなデフレ局面にあれば、医療単価があまり上昇しないので、高齢化要因による寄与率は高めになりやすい。しかし、そうした点を考慮しても、右の試算結果は、高齢化が医療費を増大する重要な要因であることを十分示唆している。
 将来についてはどうか。医療費全体の規模の増大そのものは、実は大きな問題ではない。医療サービスの充実をどこまで望むかという国民の判断も重要だし、医療サービスの拡大は経済成長に寄与するかもしれない。ここで注目したいのは、医療費の年齢別構成の変化である。
 そこで、各年齢階級の1人当たり医療費を10年度の値で固定し、高齢化による人口構成の変化だけで、高齢者向けの医療費の比重が今後どう変化するかを試算してみる。将来人口は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(12年1月推計)の数値を用いる。
130523kenpo  試算結果を図に示した。後期高齢者(75歳以上)の医療費が国民医療費全体に占める比率は、10年度の33.3%から50年度には54.7%へと上昇し、半分を超える。高齢者の範囲を65歳以上に広げると、比率は同期間に55.4%から73.9%へと上昇する。
 以上は、大まかな試算にすぎない。しかし、医療費のほぼ4分の3が年金受給者向けになる将来が視野に入って来たという状況を、私たちはもっと認識しておいたほうがよい。医療費の年齢構成がここまで高齢層に偏ると、現役層が支払った保険料や税で高齢層の医療給付の大半を調達する、という現行制度の維持はますます難しくなる。ここに介護保険も加わるので、状況はさらに深刻となる。
 こう考えると、医療保険改革は高齢者医療の見直しに触れざるを得ない。その改革の方向はいたって単純かつ明快である。つまり、高齢者向けの医療給付のうち、高齢者の負担分を全体としてできるだけ増やし、給付と負担の不均衡の是正を目指すべきだ、ということになる。後期高齢者医療制度の創設は、いろいろ問題点はあるものの、この方向に向かう第一歩だった。

 ここまで給付の年齢構成が変化すると「国民皆保険」の意味も次第に変質してくる。そもそも、現行の医療保険でも保険給付の4割は公費(税)に依存している。それでも現行制度が国民皆保険だという説明を私たちが受け入れているのは、なぜか。現役層が加入し保険料を支払う医療保険(健保・共済・国保)が制度の中核にあって、公費(税)投入はあくまでも保険料収入では不足する分を埋め合わせるためのものであり、高齢者医療は現役層の医療保険に付随物として上乗せされている、というイメージが私たちの頭の中にあるからだろう。
 そのイメージはすでに実態からかけ離れつつある。今では医療費の半分以上が年金受給層に向かっている。現役層が支払う保険料は税としての性格をかなり持っている。医療保険の非保険的な性格は今後さらに高まる。それでも国民皆保険という全員加入型の仕組みを維持しようとするのなら、医療保険を支える「主役」を現役層から高齢層に移すべきである。人口構成の高齢化が進み、高齢層の厚みが大幅に増すわけだから、これは自然な方向である。
 もちろん、疾病リスクの性格上、現役層が高齢層を支援するという医療保険の財政構造そのものを大きく変えることはできない。しかし、医療保険の持続性を高めるためには、少なくとも高齢層に現役層と同じような仕組みを適用し、勤労所得であれ、年金所得であれ、所得に余裕のある人には年齢と関係なく多くの負担を求め、そうでない人は負担を少なめにする仕組みを目指すべきである。
 その仕組みへの移行は、それほど難しくない。厚生労働省「所得再分配調査」(08年)によると、雇用者所得や財産所得などに年金所得を加えた総所得(税・保険料控除前)の平均年額は、世帯主の年齢が65~69歳の世帯で458万円、70~74歳では429万円である。子育て費用がかかる30~34歳の世帯の477万円に準ずる水準になっている。
 高齢層は現役層より所得格差が大きいが、だからこそ負担を所得に連動させる必要がある。高齢者だから一律に支援の対象とする、という仕組みは理念的にも実態的にも是認しにくくなっている。医療を成長産業とするためにも、負担のあり方の見直しを避けて通ることはできない。(おしお・たかし 60年生まれ。東京大教養卒、大阪大博士。専門は公共経済学)」(
2013/05/17付「日経新聞」p25より)

前回(ここ)の医療費のグラフも凄まじいが、このグラフも凄まじい。75歳以上の人の医療費が全体の半分を占めるようになる、という予測。

「生涯にかかる医療費のかなりの部分は、死亡直前に使われる。しかし、人間は一度しか死なない。だから、高齢化で平均寿命が延びても、医療費を支払うタイミングがずれるだけで、1人当たりの医療費は大きく変化しない」という説は初めて聞いた。
なるほど・・・、と思う。

しかし最近、カミさんが膝関節症で整形外科に通っているが、朝の患者の混み方は尋常ではないという。しかし昼前になるとスッと人がいなくなる・・・。つまり老化であちこちが痛いシルバー族は、先を競って朝一番に医院に行くことが日常化しているらしい。
確かに、各地の診療所の朝は、シルバー族が溢れていることは事実。つまり、死の直前でなくても、やはり高齢者は日常的に金が掛かっているように感じる。

医療費問題について考えるとき、不幸にも事故で若くして死ぬ人を除くと、ほとんどの人が「老病死」について、同じような道をたどる。つまりは、誰も同じ。・・・という事は、健康保険ではなく「健康税」として、全て税金化することも現実解かも知れない。

こんなグラフを見て、自分もなるべく医療費を使わないようにしないといけないな・・・と思いつつ、自分も例外ではなく、慢性**で毎月医者に通っているシルバー族の一人なのである。体は、なかなか理屈通りには行かない・・・。ああ高齢者・・・!!

(関連記事)
「麻生氏の「通院なし70歳以上に10万円」案は理にかなっている」? 

130523warikan <付録>「ボケて(bokete)」より

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