「日本国憲法、今も最先端 米法学者ら、188カ国を分析」
明日の憲法記念日を前に、新聞・テレビのニュースでは改憲についての色々な世論調査結果が報道されている。
先日、家のポストに「9条が危ない「平和憲法を守れ」の声をもっともっと大きく」というチラシが入っていた。ポストに勝手に入るチラシは、読まないで雑紙箱に直行なのが普通だが、ちょっと読んでみた。発行元は「9条の会」。チラシに連絡先の電話番号も書いてあるので、真面目みたい・・・。
そこに、「日本国憲法は世界の宝!海外で最高の評価」という記事があり、2012年5月3日付「朝日新聞」の記事が引用されていた。日本の憲法に対する米学者の評価だというので興味が湧き、1年前の記事だが、オリジナルの記事を読んでみた。
「日本国憲法、今も最先端 米法学者ら、188カ国を分析
世界に民主化を説く米国の憲法は、急速に時代遅れになっている。一方、日本の憲法は今でも先進モデル――。米国の法学者たちが世界の国々の憲法をデータ化して分析した結果だ。日本の憲法は3日、「65歳」になるが、世界の最新版と比べても遜色がない。
■最古の米国、時代遅れに
分析したのは、ワシントン大学(米ミズーリ州)のデービッド・ロー教授と、バージニア大学のミラ・バースティーグ准教授。対象は成文化された世界のすべての憲法188カ国分。
第2次大戦後の1946年から2006年まで、各国憲法の改正や独立国の新憲法をチェックし、国民の権利とその保障の仕組みを項目ごとにデータ化。国際的な変化が年代別に分かるようにした。
それを見れば、時代とともに新しい人権の概念が生まれ、明文化された流れが読める。たとえば、女性の権利をうたった憲法は1946年は世界の35%だけだったのが06年は91%に、移動の自由も50%から88%に達した。最近では、お年寄りの権利も上昇中だ。
国別に見ると、国際情勢の断面が浮かぶ。独立後間もない18世紀に定めた世界最古の成文憲法を抱える米国は、長らく民主憲法の代表モデルとされてきた。だが、この研究の結果、特に1980年代以降、世界の流れから取り残される「孤立」傾向が確認された。
女性の権利や移動の自由のほか、教育や労働組合の権利など、今では世界の7割以上が盛る基本的な権利がいまだに明文化されていない。一方で、武装する権利という世界の2%しかない「絶滅」寸前の条文を大切に守り続けている。
米連邦最高裁判所のギンズバーグ判事は、民衆革命を昨年春に遂げたエジプトを訪ねた際、地元テレビでこう語った。「今から憲法を創設する時、私なら米国の憲法は参考にしない」。憲法の番人である最高裁判事自らが時代遅れを認めた発言として注目された。
米国に代わって最先端の規範として頻繁に引用されるのは、82年に権利章典を定めたカナダや、ドイツ、南アフリカ、インド。政治や人権の変化に伴い改廃を加えてきた国々だ。憲法の世界でも、米国の一極支配から、多極化へ移っている現実がうかがえる。
■不朽の先進性、実践次第
一方、日本。すぐに思い浮かぶ特徴は戦力の不保持と戦争の放棄をうたった9条だが、シカゴ大学のトム・ギンズバーグ教授によると、一部でも似た条文をもった国は、ドイツのほか、コスタリカ、クウェート、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ハンガリーなどけっこう例がある。
世界から見ると、日本の最大の特徴は、改正されず手つかずで生き続けた長さだ。同教授によると、現存する憲法の中では「最高齢」だ。歴史的に見ても、19~20世紀前半のイタリアとウルグアイに次いで史上3番目だという。 だからといって内容が古びているわけではない。むしろ逆で、世界でいま主流になった人権の上位19項目までをすべて満たす先進ぶり。人気項目を網羅的に備えた標準モデルとしては、カナダさえも上回る。バースティーグ氏は「65年も前に画期的な人権の先取りをした、とてもユニークな憲法といえる」と話す。
ただ、憲法がその内容を現実の政治にどれほど反映しているかは別の問題だ。同氏らの分析では、皮肉なことに、独裁で知られるアフリカなどの一部の国々も、国際人権規約などと同様の文言を盛り込んでいるケースが増えている。
「同じ条文であっても、どう実践するかは国ごとに違う。世界の憲法は時代とともに均一化の方向に動いているが、人権と民主化のばらつきは今も大きい」。確かに日本でも、女性の権利は65年前から保障されてはいても、実際の社会進出はほかの先進国と比べて鈍い。逆に9条をめぐっては、いわゆる「解釈改憲」を重ねることで、自衛隊の創設拡大や海外派遣などの政策を積み上げてきた。
日本では、米国の「押しつけ」憲法を捨てて、自主憲法をつくるべきだという議論もある。それについてロー氏は「奇妙なことだ」と語る。「日本の憲法が変わらずにきた最大の理由は、国民の自主的な支持が強固だったから。経済発展と平和の維持に貢献してきた成功モデル。それをあえて変更する政争の道を選ばなかったのは、日本人の賢明さではないでしょうか」(ワシントン=立野純二)」(2012年5月3日付「朝日新聞」より)
この評価は、日本人の“思い込み”の評価ではないので、客観的に読むことが出来る。
それにしても、さっきのNHKニュース(2013/05/02 午後7時のニュース)での憲法に関する世論調査の結果には、少々驚いた。「今の憲法を改正する必要があると思うか尋ねたところ、「改正する必要があると思う」が42%、「改正する必要はないと思う」は16%、「どちらともいえない」が39%でした。」(ここより) 一方、今朝の朝日新聞の郵送世論調査では「今の憲法を「変える必要がある」という改憲派は54%で、「変える必要はない」という護憲派の37%より多かった。」という。
実は、どうせ国民投票になっても、改憲は否決されるだろう、と思っていた。 しかし、この調査結果を見ると、どうもそうでは無いらしい。
話は戻るが、“9条の会”と聞いて、前に記事を書いたことがあった・・・と思い出した。もう6年も前になるが「「日本国憲法」を読んだ」(ここ)という記事で、「**市民九条の会」のチラシについて書いていた。
今日の世論調査の結果を見ると、このチラシのように、今の改憲の議論について、国民の認識をもっと深める活動が必要なのかも知れない。
今朝の朝日新聞の記事で、浦部法穂・神戸大名誉教授は「9条を変えることに賛成という人は「自衛隊が自分を守ってくれる」というひとごととして捉える意識が強く、自分が戦地に行く、銃弾の矢面に立つという感覚がないからだろう。」とコメントしていたが、この見方が正しいような気がするのだが・・・。
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コメント
アベノミクスなるものがうまくいっているという印象を世間に与えているので、参院選で安倍晋三は改憲に積極的に出て来そうですね。
私自身は、彼が騒ぐまで、押しつけられたのがいやなら変えてもイイか? ぐらいな気持ちでしたが、今は「安倍晋三にはいじらすな」と思ってます。
答弁を聞いていると彼には彼の思い(込み)があるらしく、そこから角度を変えてみると言うことが出来ていないように思います。(具体的にどこがどうとまではここに書けませんが)。それで憲法が変わってから、彼もそんなに深くかんがていなかった部分が、「変えた以上こうなる」式になりそうで、でもそんなことには自民党は無頓着(あるいは誰かの思うつぼで)、いやです。
【エムズの片割れより】
そうなんですが、世論調査の結果をどう見たら良いのでしょう・・・ね。
投稿: Tamakist | 2013年5月 3日 (金) 16:45