「変えられるもの、変えられないもの」~「ビッグイシュー」の記事より
今朝は初めて「ビッグイシュー」を買ってしまった。「ビッグイシュー」は、前にも書いたが(ここ)ホームレス支援の雑誌。駅前でホームレスの人が売っている。
よくカミさんが買ってくるが、自分で買ったのは初めて・・・。ま、どうってことないけど・・・。
先日カミさんが買ってきた「ビッグイシュー」の「私の分岐点」にこんな記事があった。
「変えられるもの、変えられないもの。どうにもならない時は、それを受け入れ楽しむ
写真家 桃井和馬
僕のターニングポイントは、21歳の時、帆船で世界の海を旅したことだと思います。ロンドンから西インド諸島のバハマまで、世界各国の若者たちとの航海。乗員30人中、日本人は2人だけ。船の中はまさに“ミニ地球”という感じでした。
昔の帆船ですからとにかく揺れがひどい。激しい船酔いで死ぬかと思いました。最初は恐怖心もあるから余計、船酔いしやすいんですね。苦しくて気が狂いそうになったけど、船の上だから、怨嗟の声を発してもどうにもならない。不思議なことに、その状況を受け入れ、自然に身を任せてみたら、船酔い地獄から抜け出すことができたんです。
世の中には変えられるものと、どうあがいても変えられないものがある、それを見極めることの重要性を学びました。どうにもならない時は、その状況をどう受け入れ、楽しむかを考えるほうがいい。帆船での体験は、その後、写真家として世界をめぐる際にも核となっています。
“変えられるものなのか、変えられないものなのか”を識別することは、文明社会であるほど難しい。大自然を身体で感じて生きている人ほど、それを敏感に識別できるように思います。たとえばアフリカの奥地では夜、真っ暗になりますが、泣く子どもはいません。絶対的な闇は、どうすることもできないけれど、朝がくることを身体で知っているから全く怖くないし、明るくする必要も感じない。絶対的な力を身近に感じているからこそ、人間の力で変えられるものと、変えられないものを識別し、受け入れることができるんですね。
人間がどうしても変えられないもの、あらがえないものに死があります。私は5年前、妻をくも膜下出血で亡くしました。彼女は41歳、本当に突然の死でした。私は激しく打ちのめされました。四国遍路を歩いたり、同じ苦しみを味わった人に話を聞いてもらうなどするうちに、少しずつ、穏やかな気持ちを取り戻していきましたが、それには数年を要しました。
ある時、フィリピン人の友人に「紛争地で人々の死を目撃してきた君は、これから当事者の苦しみに本当の意味で寄り添えるようになる」と言われたんです。きつい言葉ですが、その通りでした。神は人間が乗り越えられない試練を与えることはない――苦難を乗り越えた後、その苦しみの大きさだけ、他人の痛みを理解できるようになるのだということを身をもって知りました。
・・・
数年前、撮影で出かけたパタゴニア(チリ)で、斜めに大きく曲がりながら、たった一本で立っている木に出合いました。常に強風が吹き続ける風の大地で、周囲にあった木はすべて倒され、吹き飛ばされてしまった。でも一本だけ残ったその木は、強風にあらがわず、流されず、立ち続けたんですね。僕はこの木のように生き抜きたいと思う。逆風で飛ばされそうになっても、あらがわず、流されず受け入れる、そして抵抗すべき時は、ヘラヘラ笑いながら喧嘩を売っていきたいんです(笑)。「神よ、私に変えねばならないものを変える勇気を、変えることのできないものを受け入れる冷静さを、そして、それらを識別する知恵を与えてください(※)」(飯島裕子)」(「ビックイシュー」208号 2013年2月1日号より)
最後の「神よ、私に・・・」については、前に当blogでも取り上げた「平安の祈り」(ここ)。
この、「変えられるもの、変えられないもの。どうにもならない時は、それを受け入れ楽しむ」というスタンスは、たぶん誰でも頭では分かっていること。
しかし、我々が現実にそれらに遭遇したとき、果たしてそのように悟った気持ちになれるものかどうか・・・。
それと、「神は人間が乗り越えられない試練を与えることはない」という言葉をどう捉える?
そう言えば最近、カミさんがそれと同じようなことを言う・・・。何について言ったか忘れたが、でもそう考えると、何か気が楽になる。
平均寿命まで、あと十数年・・・。この歳になると、もう病気以外の試練は、そうそう無いだろう・・・と信じたいもの。
我々もいつまで生きるか知らないが、せめてそれまでは、肩を怒らせないで過ごしたいもの・・・。
話がそれるが、明日3月6日から、一票の格差についての高裁判決が続く。さてさてこの一票の格差問題。政府・国会は「変えられないもの」と高をくくって無為無策を続けているが、司法が「変えられるもの」と判断するかどうか・・・。
まあ結果は分かっているが、じっくりと見届けましょう。
それと皆さん、出来れば駅で見かけたら「ビックイシュー」@300円也を買いましょうね。売り場は上の写真をクリック・・・。
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コメント
ラインホールド・ニーバーの祈りの言葉
局面に立たされた時、少し前にすすめてくれるような気がします。
桃井和馬氏が書かれた本
「妻と最期の十日間」 集英社新書
医療現場の対応も含めて、深く心打たれる本でした。
【エムズの片割れより】
ありがとうございます。機会があったら読んでみます。
投稿: 風雅 | 2013年3月 6日 (水) 13:33