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2013年2月25日 (月)

AMラジオのデジタル化~FMサイマル放送へ?

マッノさんから、コメントでデジタルラジオについての貴重な情報を頂いた(ここ)。
先日、読売新聞に3段見出しで載った記事である。曰く・・・

ラジオ デジタル化困難~全国規模AM難聴 FM化で解消
 難聴解消や高音質を目指して検討されてきたラジオのデジタル化が、民放局の足並みがそろわず、全国規模での実施が困難になったことが22日わかった。
 高層ビル化や電子機器の影響により、都市部での難聴問題を抱えるAM(中波)局が、負担の大きいデジタル化よりもFM放送の開始により問題を解消する案が浮上しているためで、すでに在京AM局のほか、地方でもFMの検討を始めた局が出てきている。総務省は同日、「放送ネットワークの強靱(きょうじん)化に関する検討会」を設置し、今後、具体案を話し合う見通しだ。
 ラジオ業界は、難聴対策に有効などとしてデジタルラジオの開始を検討してきたが、実施には新しい端末の普及に加え、総額1200億円の設備投資が必要。深刻なラジオ離れの影響で、苦しい経営が続く民放局の中には難色を示す局が多く、NHKも消極的だ。
 ただ、中波は、遮蔽物や電子機器の影響を受け、都市部では受信しづらいケースがあり、防災上の観点からAM局の難聴解消は必要だ。この点では、FM波の方が有利と言われている。また以前は、1局1波の保有しか認めていなかった総務省令が2011年、1局4波まで保有できるよう改正された。さらに老朽化した送信所を更新する場合、FMの方が安価という利点もあり、AM局が同内容のFM放送を並行して行う道筋が現実味を帯びている。
 総務省の検討会は、災害に強い中波ラジオを目指すもので、これらの動きを踏まえ、FM放送の活用などが提案されるとみられる。初会合は27日に行われ、期間は約半年をめどにする。
 一方、デジタルラジオに関しては、エフエム東京など積極的な民放局もあるため、一部の局の間で引き続き議論される。」(2013年2月23日付「読売新聞」p38より)

昔あったPCMデジタルラジオ「ミュージックバード」への望郷の念か、自分はデジタルラジオの動向がどうも気になる。もちろん目的は高音質。

しかしこの記事で、初めて“AM(中波)放送のFM放送とのサイマル放送の可能性”を知った。そして思わずひざを叩いた・・・。
中波放送のデジタル化の目的は「難聴解消や高音質」だという。自分は、中波のデジタル化は、地デジと同じように色々な情報を一緒に流すのも目的の一つ、と思っていた。でも、その多重化さえ諦めれば、確かにFM放送とのサイマル放送は「難聴解消や高音質」のベストの選択肢。

もしそうなったとき、アンテナはどうするんだろう? 東京地区は、当然スカイツリーから、と期待したいが・・・。
ところで、スカイツリーのFM放送アンテナは、どのような仕組みなのだろう? 現在のNHK東京FM(82.5MHz)とJ-WAVE(81.3MHz)とは、送信アンテナは別なのだろうか?
もし別ならば、増える局は別に設置する必要があるし、同じアンテナで済むならば(多分ムリだろうけど)、送信機だけの問題になる。これは投資額が少なくて済む。それでNHKラジオ第一と第二の音質が現在のFM放送と同じ高音質になる・・・。まるで夢のようだ・・・。

NHKラジオ深夜便などの、中波とFMとのサイマル放送を聞いていると、民放などの中波専門局が、なぜスタジオの設備を立派にしているのだろう・・・、と思っていた。つまり、中波だけの放送局なら、聞く人は所詮ノイズだらけ。幾らスタジオが高音質でも、それを体験出来るチャンスは全く無い。つまり局の設備は、まったくの過剰品質。それをradikoがスタートしたときに、皆が実感したものだ。(今はradikoがあるので、ノイズのないスタジオ音源のメリットは、ある程度享受出来ているが・・・)
つまり、放送がFM化することによって、初めて中波専門局は、自社のスタジオの高音質設備を活用出来る。悪口を言うと、開局以来半世紀、デジタル処理のスタジオの音源を、“SPレコード”に録音して、視聴者に届けていたようなもの・・・。その過剰設備がFM化でやっとその実力を発揮できるようになる、という意味合いも持っている。
まあFM東京が反対しているもの分かる。せっかくのFM専門局という看板が褪せてしまうので・・・。でもここは大局的に見て欲しいもの。

一方、どう考えても、デジタルラジオが普及するとは思えない。それでなくても聞く人が減っているラジオ。カーラジオを別にすると、音は最悪だが、中波は今やパソコンで聞くのが当たり前の時代。デジタルラジオも、PCM放送なら、自分のような高音質追求派は買うだろうが、一般の人がそのためだけのデジタルラジオを買うとは思えない。まあ、スマホの付属機能として付いていれば、やっと聞こうかな・・・という程度。しかしFMラジオなら車のカーステレオで幾らでも聞け、機械を普及させる必要は無い。

何とも、NHKラジオ第一やニッポン放送や文化放送が、高音質のFMステレオで流れてくる日が待ち遠しい。

(2013/02/28追)
朝日新聞の記事。AM局の移行先は、FM放送のV-Low帯(90-108MHz)だという。すると、既存のラジオ(76-80MHz)で、V-Low帯(90-108MHz)まで受信できるラジオのシェアはどの位あるのだろう? カーラジオでは??
その普及率によっては、デジタルラジオと同様に、金の掛かる送信設備とは別に受信できるFMラジオの普及がネックとなるかも・・・(少なくても、自分の持っている昔のバリコン式FMチューナーでは受信できない。残念!)

AM局、FM化検討 ラジオのデジタル化に
文化放送、TBSラジオ、ニッポン放送などのAMラジオ局が、FMラジオへの移行を検討していることが27日、わかった。高層ビルが電波を遮るなどして聞こえにくいことなどから、AMの経営環境は悪化している。聞きにくさの解消を低コストで実現し、生き残りを目指す。災害時に強いラジオを重要視する政府もFM化を後押しする方針だ。
 関係者によると、在京局のほか、関西や地方にも移行を検討しているAM局がある。早ければ数年後の移行を目指す。FMになれば周波数は変わるが、障害物の少ない高い場所から電波を送れるため、聞こえやすく音質も良い。当面はAMも残し、FMと同じ放送を流す見通し。AM局の半数は2020年度までに老朽化した送信所の更新時期を迎え、設備投資額を抑えられるFM移行を目指す局は増える可能性もある。
 FM移行に伴い活用を考えているのは、テレビのデジタル化で空いた「V-Low」と呼ばれる電波帯。これまでラジオ業界は、ここを使ったデジタル化を検討してきた。東日本大震災でラジオが見直され、多様な情報を届けられるデジタルラジオを立ち上げ、災害対策に役立てる構想だ。
 だが、最大1200億円ともいわれる設備投資が負担となって足並みがそろわず、日本民間放送連盟のラジオ委員会では28日にも、業界一丸となってのデジタル化を断念する提案が出る見通し。
 デジタル化が困難になり、政府も27日に放送ネットワークの「強靱化」を目指す検討会を立ち上げ、FM移行を支援して災害対策に役立てる方針。ただ、既存のFM局の反発や、独自にデジタル移行を目指すラジオ局もあり、今後の行方は不透明だ。
 ラジオ局が変革を急ぐ背景には、厳しさを増す経営環境がある。(佐藤美鈴、田玉恵美)」(
2013/02/28付「朝日新聞」p38より)

“元BCLファン”さんから頂いた総務省の検討会に関する情報(ここ)。
V-Low政策を見直しへ 総務省が検討会
 総務省は、アナログ放送終了後の空き帯域であるV-Low帯(90-108MHz)について、「放送ネットワークの強靭化に関する検討会(仮称)」(以下、検討会)を開催し、6月までに方向性をとりまとめる方針だ。現在、同帯域はマルチメディア放送に割り当てられているが、サービス実現のめどが立っていない。検討会では同帯域をAM局のFM移行に充てる案を検討するなど現政策を見直す。東北3県のアナログ放送が終了し完全デジタル化が完遂して1年。V-Low問題が決着に向け動き出す。
 検討会は、AMラジオの重要性と課題を踏まえたうえで、災害時の情報提供の手段を確保するために放送ネットワークの強靭(きょうじん)化策を検討することを目的としている。
 構成員は学識経験者、放送事業者、自治体関係者など10人ほど。送信設備の防災対策、ラジオの難聴対策、災害情報の高速化、臨時災害放送局の迅速な開設などを検討項目としている。会合は27日に第1回を実施。以後月1回のペースで開き、6月に中間とりまとめをする予定だ。
 検討会では、1-3ch(90-108MHz)を「AMからFMへの移転」に充て、マルチメディア放送を希望する社には、既にmmbiが「NOTTV」を展開し、インフラが整っているV-High帯(205-222MHz)に参入してもらう案が検討される見通しだ。前者はAMラジオの救済、後者は自己責任によるデジタル化という考え方である。
 AMラジオは、都市部や日本海側で難聴問題が生じ、送信所の建て替えで経営難に陥る局も多いと予想されたことから、打開策の一つとしてV-Lowマルチメディア放送への移行案が出ていた。しかし議論は決め手がないまま停滞が続いていた。今回、総務省は検討会の設置により、一気に決着させる考えのようだ。(つづき・詳細は映像新聞 2013年2月25日号1、3面)」(
ここより)

総務省の報道資料は下記。
「「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」の開催
                      平成25年2月22日  総務省
 総務省は、今後とも放送が災害情報等を国民に適切に提供できるよう、放送ネットワークの強靱化策等について検討することを目的として「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」を開催します。
1 背景・目的
 東日本大震災において、放送は災害情報の提供をはじめとして国民が安心・安全に生活する上で大きな役割を果たしました。特に、ラジオは災害時における有用性が強く認識されましたが、同時に、低地・水辺に立地する中波(AMラジオ)送信所の防災対策の必要性が明らかになりました。
 また、放送がその役割を発揮するためには国民にあまねく届くことが必要ですが、電子機器等の普及や建築構造の変化がAMラジオの新たな難聴要因になっています。施設の老朽化や広告市場の縮小等の環境変化も生じています。
 こうした状況を踏まえ、今後とも放送が災害情報等を国民に適切に提供できるよう、放送ネットワークの強靱化策等について検討することを目的として、「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」を開催します。
2 主な検討事項
(1)送信設備の防災対策
(2)難聴対策
(3)災害情報の提供の高度化・迅速化
(4)その他関連する諸課題
3 構成員
 別紙のとおりです。
4 開催期間
 平成25年2月27日(水)に第1回会合を行い、おおむね半年を目途として開催する予定です。
」(ここより)

(2013/03/13追)
ニッポン放送、FM活用検討 AMの難聴対策
 AMラジオ局がFMラジオへの移行を検討していることについて、ニッポン放送の村山創太郎社長は12日の定例会見で、都心で広がるAMの聞きにくさを解消するためにFMの活用を検討していることを明らかにした。FM活用の考えを正式に表明した局は初めて。
 東京タワーなどに送信所を設置し、AMが届きにくい都心部で、放送をFMに切り替えて流すなどの方法を検討している。FM放送では周波数は変わるが、番組内容は変わらない。従来のAM放送も同時に続けていくという。一方で、ラジオ業界で検討されてきた一斉デジタル化への参加を断念する方針も明らかにした。
 村山社長は「難聴や都市雑音という近年の大きな課題を解消すべく、FM放送の活用をこれからの選択肢の中で最も比重を置いた形で検討していきたい」と話した。」(
2013/03/13付「朝日新聞」P37ここより)

(2013/03/15追)
「デジタルラジオ」FM東京、13年度開始 放送前倒し
 エフエム東京は14日、2013年度内に高音質が特徴のV-Lowマルチメディア放送(デジタルラジオ)の本放送を始める方針を明らかにした。日本民間放送連盟が加盟社全体として開始を目指していた14年度より1年前倒しする。音声以外にも画像や文字を流せる特長を生かして新たなビジネスチャンスを探る。
 一方でエフエム富士(甲府市)など参入を断念する局も出ており、デジタル放送を聴取できる地域や時期にばらつきが出そうだ。
 エフエム東京は28日から電通やホンダ、放送局など約60社を集めてデジタルラジオのビジネスモデルを検討する「マルチメディア放送ビジネスフォーラム」の活動を始める。車載端末や電子看板に広告や災害情報を流すといった事業を想定。昨年から福岡で実施している実証実験と合わせて検証を進め、14年3月までの本放送開始を目指して総務省に電波の割り当てを要請する。
 運営形態については関連業界から出資を募ってアンテナなどの設備運営を担う新会社を作る計画。放送局は放送エリアの人口に応じて設備のレンタル料を支払う仕組みで、参入時の初期費用を500万円以下に抑える。
 民放連によると参入を断念するのは民放連加盟99社のうちFMを中心とする10社程度になる見込み。ラジオ広告費が減少する中、新たな設備投資負担に耐えられないという理由が大半だ。
 民放連は14日にラジオ各社で構成する委員会を開き、デジタルラジオへの参入は各社の判断に任せることで一致した。各局の意向が割れていることから業界全体での参入は断念する。」(
2013/03/15付「日経新聞」P13より)

(2015/01/14追)
AMラジオ、FMでも 今秋(2015年)から冬、在京3社が補完放送
 TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送の在京AMラジオ3社は13日、FMでAMと同じ放送を流す「FM補完放送」を、今年の秋から冬にかけて始めることを明らかにした。東京スカイツリーの共同アンテナからFM波を流す。
 この日会見したニッポン放送の村山創太郎社長によると、(2015年)8月に工事を終え、9月に試験放送を実施。その後、本免許の交付を受け、本放送を開始する予定という。気候の影響で工事の時期がずれる可能性がある。3局はこれまで、放送開始時期を今春以降としていた。
 FM放送が始まると、鉄筋マンションなどAM波が届きにくい「難聴取地域」でも聞こえやすくなる。地震など大災害で放送設備が被害を受けた場合に備える「災害対策」の面もある。周波数はTBSが90.5、文化放送91.6、ニッポン放送93.0メガヘルツ。東京23区と埼玉県、千葉県、神奈川県の主要都市および周辺で聴くことができる。」(
2015/01/14付「朝日新聞」p29より

(関連記事)
関東広域・民放AMラジオ3社が、15年春よりスカイツリーからFM同時放送開始 
日経のデジタルラジオの記事2つ(設備投資)・・・
デジタルラジオ~民放とNHK、協議本格化
「デジタルラジオ、130社が名乗り 13年実用化へ」

130225usagi <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

あと、電池の持ちというのもあるそうですよ。
実際、ワンセグは結構早くなくなりますからね。
ワンセグが聞けるラジオでも、やはりワンセグが一番短いですから。
災害などでは長時間流すことができるほうがいいですので、
この点ではワンセグよかFMのほうになりますか。

問題は新規割り当ての周波数です。
現状のFMの帯域(76~90MHz)はいっぱいいっぱいな状態ですから、V-Low(90~108MHz)になってくるでしょう。
そうすると、その帯域を受信できるラジオが必要となってきます。
BCLラジオはともかく、現在、市販されているホームラジオやポケットラジオは対応していないのがほとんどでしょう。

【エムズの片割れより】
FMの帯域がいっぱいですか・・・。それほど局が並んでいるようにも思えませんでしたが・・・。

投稿: マッノ | 2013年2月26日 (火) 01:38

>FMの帯域がいっぱいですか・・・。それほど局が並んでいるようにも思えませんでしたが・・・。
一番はコミュニティFMもそれなりに占めているというところでしょうか。
これでいっぱいになっている状況です。

投稿: マッノ | 2013年2月27日 (水) 23:49

V-Low政策を見直しへ 総務省が検討会
・・・
 検討会では、1-3ch(90-108MHz)を「AMからFMへの移転」に充て、マルチメディア放送を希望する社には、
既にmmbiが「NOTTV」を展開し、インフラが整っているV-High帯(205-222MHz)に参入してもらう案が検討される見通しだ。
前者はAMラジオの救済、後者は自己責任によるデジタル化という考え方である。
http://www.eizoshimbun.com/broadcast/2085/2085bc1.htm

デジタル放送は、NOTTV(現在20セグメントの空き帯域あり)を有効活用するらしいですよ。

【エムズの片割れより】
貴重な情報をありがとうございました。

投稿: 元BCLファン | 2013年2月28日 (木) 04:15

85から上はほとんんどガラガラです都内は
この辺に落とし所があると思います。

なお、スカイツリーに在京AM局のアンテナは
充分つけられます。空きは十分あります。
このことを想定していると思います

詳しくは言えませんが。

【エムズの片割れより】
アナログの1chと3chが無くなったので、85~90MHzは今後使えますよね。そのなってくれると嬉しいのですが・・・

投稿: 名無し | 2013年2月28日 (木) 10:11

アナログテレビ1chがあった地域は、混信防止でFM85~90MHzは
テレビ優先で使えなかった。

数年後は、76~108MHzの広帯域になるので、周波数不足で申請が却下されていた
東京のコミュニティFMも大量開局するのではないでしょうか。

【エムズの片割れより】
FM放送も様変わりかな??でも自分のFMチューナーは90MHz止まり。残念!

投稿: 元BCLファン | 2013年2月28日 (木) 10:43

http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20140827_663924.html
こういうラジオも出るようです。
ただし、書いてあるとおり、自治体で購入ということになるようです。

投稿: マッノ | 2014年8月28日 (木) 14:39

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