「日本の輸出相手 米国が最大に~OECDなど、付加価値基準の新統計」
先日の日経新聞に、面白い記事があった。日本の最大の輸出先は、実は米国だった・・・という話。曰く・・・
「日本の輸出相手 米国が最大に~OECDなど、付加価値基準の新統計
経済協力開発機構(OECD)と世界貿易機関(WTO)は16日、付加価値の流れを追う新しい貿易統計を公表した。これによると、日本の輸出先は米国が最大となり、輸出総額に基づいた従来の統計で最大だった中国を上回った。対米の貿易黒字は従来の6割増となり、日本経済における米国市場の重要性が一段と鮮明になった。
新たな「付加価値貿易」の統計は、複数国に生産拠点が分散する国際分業の浸透を踏まえ、通商関係の全体像を把握するのが目的だ。例えば、日本から中国に60ドル相当の部品を輸出し、中国で完成させて100ドル(40ドル分の価値増加)で最終消費地の米国に渡った場合、日本が60ドル、中国が40ドルそれぞれ米国に輸出したと計算する。従来の統計では日本が中国に60ドル輪出し、中国が米国に100ドル輸出したと計上される。
日本企業は部品などの半製品やサービスを中国などアジア新興国に輸出する。これらを使って組み立てられた最終製品がアジアから欧米に輸出され、最終的に消費されることが多い。新統計ではどの国で生み出された付加価値が、どの国で最終消費されたかが分かるようになる。 2009年の実績を付加価値に基づいて計算すると日本の最大の輸出国は米国で、全体の19%を占めた。従来統計では中国が24%で首位だったが、付加価値でみると2位の15%に下がり、逆転した。韓国は3位で変わらないものの、シェアは9%から4%に落ちる。
貿易黒字は中韓向けはほとんどなくなり、対米国では360億ドルと6割も増えた。中韓への中間財輸出が米国の最終消費に行き着いていることを示している。
従来の統計では、中国など最終財を輸出する国の国際競争力が過大に評価される面があったが、付加価値に基づいた統計ではこうした傾向が是正される。新統計が浸透すれば貿易収支の構図が塗り替わり、各国の対外政策も大きな影響を受ける可能性がある。 (パリ=竹内康雄)」(2013/01/17付「日経新聞」p5より)(写真は2013/01/19付「日経新聞」p17より)
この議論は、まさに“そりゃそうだ”という話で、今更・・・という感じもする。しかし統計上は、この付加価値という数字の把握が難しいのかも知れない。例えば、ある部品が中国に輸出されたとき、何%が国内向け製品に使用され、何%が米国向け製品に使用されたかは、中国で生産された製品の構成部品を分析しないと分からないのでは??
それにしても、この視点はまっとうな議論だ。日本での売上でも、商社が売上日本一・・・と喧伝されないのと同じ。
しかしこの当然すぎる評価は、なぜマスコミで報道が少ないのだろう・・・、と思っていたら、今朝の日経「大機小機」で、まったく同じ話が載っていた。
ほとんど内容は同じだが、念のために読んでおこう。
「貿易に付加価値という物差し
スマートフォンのIPone(アイフォーン)は中国で生産され、米国に出荷される。ところが部品をみると、韓国、台湾、ドイツそして日本などでつくられる。
しかも製品化に際して、ソフトウエアやサービスなどが上乗せされる。その際に販売元の米アップルは多くの付加価値を上げている。売り上げと企業活動が生み出した価値(付加価値)は異なるのである。‐
国境をまたぐ貿易取引を測るうえで、この点は重要な意味を持つ。通常の貿易取引額は輸出入の売り上げを単純集計した数字である。だが企業経営の上ではもうけが肝心なのだから、付加価値をベースにした輸出入をはじいた方が、ビジネスの実感に沿うはずである。
そんな考えに基づいて、経済協力開発機構(OECD)と世界貿易機関(WTO)が、輸出されるモノやサービスを原産国の付加価値に還元してみた。2009年時点の試算をみると、実に興味深い姿が浮かび上がる。
付加価値で測った日本の輸出額は、米国向けが19%と中国向けの15%を上回る。適常の輸出統計では対中が24%、対米は22%。「中国の方が米国より重要な貿易相手国」などという向きがあるが、いかにも浅薄な議論であり、付加価値という物差しを当てると対米輸出の大切さが分かる。
貿易収支でみると、米国の重要性がさらに際立つ。通常の貿易収支の黒字額は、対米224億ドル、対中145億ドル、対韓86億ドル。これが付加価値ベースとなると、対米黒字が358億ドルと6割も増えるのを尻目に、対中は21億ドル、対韓は4億ドルの黒字に縮んでしまう。
これは中韓向け輸出には部品など中間財が多く、最終消費地が米国であることを映している。日本企業としては国内から米国へ直接輸出するのが望ましいものの、生産コストが高いのでそうは問屋が卸してくれない。
そこで主に中国に生産拠点を移し、企業グループ内に付加価値を囲い込もうとしてきたのだが、ここに来て重大な変化が生じた。中国における人件費の高騰である。
このままでは、かの国の従業員の取り分か増え、日本企業の分は減る。国内回帰が難しければ、対応策は生産拠点を中国以外のアジアに移すか、最終消費地の米国に持って行くかである。もうけの上がらぬ投資先の見直しは必至だ。(和悦)」(2013/01/23付「日経新聞」p17「大機小機」より)
話は飛ぶが、GSユアサのボーイング787のバッテリー事故は大変な事態。製品は、何があっても燃えてはダメ。メーカーは、周りがどんなに悪くても(周りに原因があったとしても)、自社の製品から火を出したらオシマイ・・・。
昔、新入社員の時に、誰かから言われた。絶対に社内でしてはいけないことは、殺人と火災。これは別に会社に限らず、世の中の常識。
それが空の上、となると、昔のパソコンのバッテリー焼損事故などとは重要度のケタが違う。バッテリーメーカーも、時間との戦いで大変だろうが、技術立国日本の威信に賭けても、早期の原因究明を祈ろう。
日本は部品レベルではまだまだ超一流なので、自信を持って・・・!
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