「「痴漢報道」―JR西日本の重役はなぜ死ななければならなかったのか」
実はウチのカミさんは、痴漢事件に関して、非常に敏感である。前にも書いたが(ここ)、それは前に駅のホームで、大きな声で痴漢を“摘発”している、素人とは思えない女性を目撃してからだという・・・
「週刊現代」(2013年1月26日号)に「「痴漢報道」―JR西日本の重役はなぜ死ななければならなかったのか~「警察発表」だけで報じる新聞・テレビ」という記事があり(ここ)、自分も読んでみた。なるほど・・・
「「この人、痴漢です!」女性にそう訴えられた瞬間、男は地位も名誉も財産もすべて失う。その「罰の重さ」と比して、新聞やテレビはあまりに気楽に「逮捕」を報じていないか。冤罪かもしれないのに。
「やってへん、やってへん」
最初に断っておくが、痴漢が卑劣で許されざる行為であることは、いまさら言うまでもない。
だがもし、痴漢で逮捕された男性が、恥辱に耐えかねて最終的に自死を選んだとすれば、それを「死んで当然」と断罪するのは後味の悪さが残る。
さらに、万が一それが冤罪だったとするならば、取り返しのつかない悲劇と言うしかないだろう。
公園の便所で命を断ったJR西日本の重役。その寂しすぎる最期を思うと、痴漢という行為の「罪と罰」のバランスについて、改めて考えさせられる。
'12年12月21日、午前7時28分。JR西日本執行役員の男性A氏(56歳)は、JR阪和線の駅から普通電車の先頭車両に乗り込んだ。同じ駅から電車に乗ったのはA氏と女子高校生(17歳)、男性会社員(24歳)の3人だった。
車内はすし詰めというほどではないが座席は埋まっており、ドア付近に3人が立ったまま扉が閉まる。女子高生の右側に会社員、左後方にA氏が立ち、電車は動き出した。
同7時30分。電車が天王寺駅に到着する寸前、女子高生は右隣の男性会社員の左ヒジを突き、小声でこう訴えた。
「後ろの人、痴漢です。捕まえてください!」
直後、電車は天王寺駅9番ホームにすべり込む。扉が開いた瞬間、A氏は外に飛び出して猛然とダッシュした。女子高生の訴えを受けた男性会社員が走って後を追う。・・・
会社員に別の男子大学生も加勢し、A氏を挟み込むように引っ立てた。
「やってへん、やってへん」A氏は2度、繰り返した。
会社員が駅員を呼び、A氏は事務所に連行される。駅員はA氏が自分の会社の重役とは露知らず、110番通報した。
間もなく鉄道警察官2名と天王寺署員2名が現場に駆けつけ、迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕。A氏の身柄はパトカーで天王寺署に移送された――。
確認されている客観的事実は、以上である。ここから先、警察の取り調べは密室で行われ、その内容は容易に知りようがない。
ところが翌22日のテレビ各局は、A氏の過去の映像を使用して顔と実名をさらした上で、A氏の痴漢容疑を報道した。
さらに翌日の朝刊各紙も、顔写真は使用しないまでも同じく実名で、A氏の逮捕を報じている。「JR西役員JRで痴漢」と極太文字で見出しを掲載するスポーツ新聞もあった。
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23日夕方、容疑を否認したまま釈放され、二日ぶりに自宅に戻ったA氏は、それらの報道状況を初めて知ることになる。テレビで自分の顔まで公開されていることに、絶望したことは想像に難くない。・・・・・・
JR西日本は逮捕の一報を受けて、「事実であれば誠に遺憾。詳しい状況を確認の上、厳正に対処する」とコメントしている。「事実であれば」と断っておきながらも、最初から犯罪者扱いをしていることが、文面から読み取れる。
大切なのは、この「事実かどうか」の部分だ。A氏は「背中かお尻に右腕が当たったかもしれないが、痴漢はしていない」と否認を貫いたまま、みずからの人生を閉ざした。本人からはもう、シロかクロか確認することはできない。
痴漢事件に詳しい清水勉弁護士が言う。「痴漢事件というものは、我々法律家から見ると不条理な点があります。もともとが刑法犯ではなく『条例違反』で、その条例は『相手を不快にさせる行為』が問題だとしている。きわめて瞹昧なんです。被害者が『不快だ』と訴えたら、そこに嘘があるはずがないという前提に立っている。刑法犯の場合は、逮捕する際にもっと厳密な客観的証拠が求められます。
別の見方をすれば、痴漢は捜査機関にとって非常に『やりやすい』犯罪だと言えます。被害者の『不快だ』という訴えがあれば、いくらでも犯罪者をつくることができるのですから」・・・・・
A氏は女子高生に「この人痴漢です」と指摘され、電車のドアが開いた瞬間一目散に逃げ出している。この行動について、前出の司僚はこう推測する。
「我々鉄道マンは、痴漢の疑いをかけられた時点で、逮捕を逃れることが不可能に近いことを熟知しています。被害者や周囲の人に取り押さえられ、駅事務所に連行された時点で、もうおしまい。どんなに抗弁しようと身柄は警察に引き渡されます。Aさんが実際に触ったかどうかはわかりませんが、ダッシュで逃げたのは、Aさんの脳裏に『逮捕』の二文字が浮かんだからだと思います」。
痴漢の疑いをかけられた人間は、事実かどうかにかかわらず、逮捕される。
ここにまず第一の恐ろしさがあるわけだが、本人の人生により深刻な影響を及ぼす第二の恐怖が、間もなく訪れる。報道である。
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報道の難しさに加えて、忘れてはならないのが、被害を訴えた女子高生の置かれた状況だ。天王寺署の捜査関係者が語る。
「被疑者が自殺したと一報が入った段階で、すぐに署員が連絡を入れた。報道で知るより、こちらから事情を説明したほうがいいと考えたからだ。
まず電話で母親に伝え、直後に署員が自宅を訪問した。母親の話では、自殺の知らせを聞いて被害者は号泣したそうだ。被害者ケアを担当する警察官が直接、本人と面談したときも目が真っ赤で、うつむき加減で話を聞いていた。
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彼女は警察の取り調べに対し、こう証言したという。
「(A氏の顔を見て)痴漢のオジサンやとすぐにわかりました。高校1年と2年のときに3~4回、お尻を触られたことがあります。触り方はいつも同じで、電車を降りる寸前にお尻を触って逃げるんです。その後はオジサンを見かけると離れるようにしていたから被害に遭ってなかったけど、あの日は確認が遅れ、後ろに付かれてしまった。もし触ってきたら隣の男の人に助けを求めようと決めていました。
なぜ顔を覚えているかというと、高1で初めてオジサンに触られた日が、私の16歳の誕生日だったからです。記念の日にショックなことがあり、あの顔は忘れたくても忘れることができませんでした」
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自死を選んだ重役。その重荷を一生背負っていく女子高生。彼らのことを思うと、警察発表を機械的に垂れ流す報道各社の姿勢が、あまりに軽く思える。A氏が逮捕直前に口走った「やってへん」という言葉が、誰かに信じてもらえることも、もはやない。」(「週刊現代」(2013年1月26日号p58より~原文PDFはここ)
「疑わしきは罰せず」、という刑事裁判の原則が適用されない痴漢事件。
これを読むと、我々オジサンは、予防策を考えるしかないことが分かる。極端な言い方だが、どんなに事実が曖昧でも、(特に)日本の女子高生は、(結果として)どんな地位の男をも破滅させる「権力」を持っているので・・・・
もしこの事案が、たぶんA氏の遺書にも書いてあっただろう、冤罪だと仮定すると・・・
オジサンは、A氏のように名指しで女子高生にキラわれたら最後・・・。物理的に女子高生から距離を置くしかない。
・A氏は女子高生に嫌われていることに気付かず、女子高生に「後ろに付かれてしまった。もし触ってきたら隣の男の人に助けを求めようと決めていました。」と、あらかじめ、女子高生が見えない後ろから、何らかの接触があった時点で、痴漢されたもの、と“決められて”いたらしい。その女子高生に嫌われていることに、事前に気付いていれば、自分が乗る車両を変える、などの手段があったのでは?
・ウチのカミさんが言うように、高校時代のいわゆる思春期の女性は、非常に心が不安定であり、神経が過敏なのだという。よって、男にとっては些細なことでも、女子高生にとっては不快に感じる、ということを良く認識する。オジサンが近寄るだけでも、女子高生は不快なのだ・・・
・ 通勤電車は、多くの人が、毎日同じ時刻発の電車の同じ場所に乗る。よって毎朝顔を合わせる女子高生に痴漢すると、次の朝も会ってしまう。その事を良く自覚する。しかも、今回のように、2年も前から同じ女子高生に、電車に乗った直後の“2分間”に痴漢をしてはいけない。(←どうしてもクロとは思えない・・・)
・もちろん一般的な予防策、つまりどんな満員電車でも、せめて神経過敏な女子高生からは離れて乗り、そして出来る限り、両手をつり革に、の対策は当然(ここ)。
そしてもし疑われたら・・・
・ A氏のように、ダッシュしないとしても、とにかく現場から堂々と離れて、現行犯逮捕を避ける(ここ)。
・ それが出来なかった場合は、相手から何百万円を要求されたとしても、示談金を言う通りに払い、告訴されることを避ける。
・ A氏のような著名人の場合は、自動的に実名と顔写真が報道されるので、女子高生に名指しで嫌われた時点で人生を諦める!?
それにしても、誰もが不条理だと分かっている日本のこんな仕組みを、抜本的に改善する方法は無いものだろうか?
・ こんな不条理な条例を、何とか改訂しようとする政治家が居ないか、探す。
・ 居ないとすると、JRに対して「一番前の車両が女性専用になっているが、一番後ろの車両を男性専用として欲しい」と陳情する。(誰か署名活動を始めてくれたら、自分もサインするけど・・・・・・)
・ 世論に、この不条理な条例の改定を訴える。NHKスペシャルででも、痴漢冤罪事件を取り上げてくれると良いのだが、NHKも報道機関のひとつなので無理だろうな・・・
(関連記事)
痴漢冤罪から身を守る「理論武装」
痴漢冤罪~最高裁の逆転無罪判決に思う
映画「それでもボクはやってない」を観て
<参考>(~ここより)
「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」
(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物において、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。
二 人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着を見、又は撮影すること。
三 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。
四 みだりに、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態にある人の姿態を撮影すること。
五 前各号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさえるような卑わいな言動をすること。
(罰則)
第十六条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
二 第六条の規定に違反した者
2 常習として前項の違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
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コメント
刑事事件は、検察側が犯罪行為があったことを立証しなければ、無罪になる。
しかし、痴漢事件に限っては、被告側が痴漢行為がなかったことを立証しなければ、有罪になる。
痴漢行為がなかったことを立証するのは難しいので、痴漢冤罪が多発する。
【エムズの片割れより】
何の落ち度もない人が、一方的に「無い事の立証」を負わされてしまう、この理不尽・・・。国外でも痴漢事件はあると思うのですが、どのような扱いになっているのでしょうね・・・
映画「それでもボクはやってない」を外国で上映したら、笑い声が聞こえたとか・・・
投稿: 名無し | 2013年1月27日 (日) 23:38
15〜18歳の年齢の女性は神経過敏なのですか? 初めて聞きました。
触覚や視覚に障害が出るのか、それとも現実にないことをあると思い込む妄想でしょうか。妄想の場合統合失調症や薬物の影響が考えられますが女子高生は全員そのどちらかに当てはまり卒業するころ急に治るのでしょうか。
男子高校生も十分神経過敏だと思いますけどね。
犯人の顔をちゃんと覚えているのだからこの女子高生の認知機能に問題はないと思えます。それとも記憶の中の像も妄想ですか?
投稿: とむとむ | 2020年7月19日 (日) 01:37