「倒れた人の救命 心肺蘇生の実技を授業で」
先日の朝日新聞「記者有論」に、心臓蘇生についてのこんな記事があった。
「記者有論~倒れた人の救命 心肺蘇生の実技を授業で
四登敬(さいたま総局)
目の前で突然、家族が倒れたとする。体はけいれんし、呼びかけに応じない。あごをしゃくって息をするような動作はあるが、不自然だ。
こんな時、とっさに心停止を疑い、次の行動に移れるだろうか。周囲の人に119番通報と自動体外式除細動器(AED)の手配を頼み、胸骨圧迫を始めなくてはならない。突然の心停止は、一刻も早く心肺蘇生処置を始めた方が、救命率が上がるからだ。
14.0%と8.8%。
2010年に、心臓に何らかの原因がある心停止で倒れ、消防に救急搬送された人の1カ月後の生存率を総務省消防庁がまとめた。前者は、倒れた場面に居合わせた一般の人が胸骨圧迫やAEDで心肺蘇生をした人(49.8%、1万1195人)、後者はしていない人(50.2%、1万1268人)だ。
胸を圧迫すれば、全身に血液を巡らすことができる。1分間に100回のリズムが理想だ。AEDは、細かく震えて血液を送り出せない心臓に電気ショックを与え、正常な状態に戻す機能がある。
居合わせる人は、医師ら医療従事者とは限らない。救急車の通報から到着までの時間は、全国平均で約8分。「救急隊が来るまでそっとしておいたほうがいいのでは」などと、迷っている余裕はない。
さいたま市は今年度から、市立の全中学校で心肺蘇生の実技を1年生から必修にした。同市立小学校で昨年9月に起きた事故がきっかけだ。6年生の桐田明日香さん(当時11)が、駅伝の練習中に突然倒れた。救急隊が到着した時は心肺停止に陥っていたが、誰も気づかなかった。胸骨圧迫はされず、学校のAEDも使われなかった。
胸骨圧迫とAEDで救える可能性があった命が、失われた。この教訓から実技授業は始まった。生徒は知識と技能を身につけ、教諭は教えられるレベルを保つことが求められる。学校の安全度を高める狙いだが、生徒が命を考えるきっかけにもなる。毎年、約1万人の生徒が新たに実技を経験し、家庭や地域への広がりも期待されている。
救えない命もあるだろう。しかし、倒れた人の半数以上は依然、居合わせた人から心肺蘇生を受けていない。家族や友人、街で見かけた人が倒れた時、心肺蘇生をできる人が増えれば、救われる命も増える。倒れた人の胸を押す勇気につながるさいたま市の取り組みが、全国に広がることを期待したい。 」(2012/11/17付「朝日新聞」より)
このさいたま市も取り組みは、非常に良いと思う。あらゆる場所でAEDを見かける。しかし、自分がそのAEDを使って誰かを助けるか?と考えると、多くの人は、およそ他人事では? つまり「“誰かが”あれを使って“誰かを”助ける・・・」。
会社の避難訓練では、よく消火器の取り扱いを社員が順番でやってみる。つまり、誰でも一度はホンモノの消火器から消火剤が噴射するのを体験しておくのだ。すると、イザと言うときにその体験が役に立つ。消火器を使う事が怖くないので、直ぐに消火器を扱える。
AEDや蘇生術も同じ。一度でも胸骨圧迫や口移しの人工呼吸を体験していると、これもイザと言うときに生きる。物怖(お)じしないで済む。
カミさんに言わせると、着衣水泳も同じだという。今の学校で教えているかどうか知らないが、一度でも着衣のまま水の中に入った経験があると、これもイザと言うときに慌てなくて済む。
もっともこれは、自分のように、裸でも泳げない人には意味が無いが・・・
ともあれ、大人は別として、子どもたちには、これらはぜひ体験させておきたいもの。これからの長い人生で、それが生きるチャンスがあるかも知れないので・・・
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